11月の心理学コラム:展覧会『メタル』に行ってきました(担当:宮下達哉)
2025/11/15 >> 今月の心理行動科学科
先日,展覧会『メタル』というものに行ってきました。「金属の属性を考察する」という展覧会だそうです(入場無料!)。そこでは,鉄や鉛といった金属で作られた作品や,金属をモチーフにした絵が展示されていました。
それらの1つに,「なんだこれ?」という作品がありました(写真)。近づいて見ようとすると,スタッフの方に「あまり近づきすぎないように注意してください」といわれました。なんでも,砂鉄が強力な磁石によって形づくられたもので,振動や風で崩れてしまう繊細な作品とのことでした。
正直,パッと見て,私はこの砂鉄の作品の良さに気づくことができませんでした。しかし,別の来場者の方が「この作品は■■が美しく,△△に良さがあるんだよ」とお連れの方に話していらっしゃるのが聞こえました。芸術に精通されている方だそうです。それを聞いて私は,段々とこの砂鉄の作品が良く思えてきました。
上記のような私の体験に似たことは,すでに実験的に検討されています。Lauringら(2016)の実験では,実験参加者は「芸術の専門家から高い評価を受けている」という情報を付与された絵画を呈示された時,その絵画を高く評価することが示されています(※1)。Lauringら(2016)が扱った実験刺激は絵画でしたが,ひょっとするとオブジェのような芸術作品にも似たようなことが言えるのかもしれませんね。
※1 Lauring, J. O., Pelowski, M., Forster, M., Gondan, M., Ptito, M., & Kupers, R. (2016). Well, if They Like it…Effects of social group’ ratings and price information on the appreciation of arts, Psychology of Aesthetics, Creativity, and the Arts, 10, 1-16.



