Archive for the ‘役に立つ!!心理学コラム’ Category

2月の心理学コラム(担当:佐々木隆之)

2021/2/26 >> 役に立つ!!心理学コラム

音楽の聴き方 その2

前回(昨年9月)のコラムでは,初めて聞く音楽と繰り返し聞く音楽で,認知処理に大きな違いがあることを書きました.今回はその続きとして,知っている曲を,ライブなどで生演奏の形で聞くときの聴き方を紹介します.そこでは,また違うプロセスが働いています.人間は機械ではないので,元の音源とまったく同じように演奏することはできません.リズムに微妙な違いが生じたり,表現の仕方が変化したりします.また,それを意図的に行うこともあります.ライブの楽しみの一つは,その日の演奏がいつもとどのように違うかを期待するところにあります.
同じような違いは,映画と舞台の間にもあります.映画は期待通りに進行しますが,舞台演劇は日々いろいろな違いが生じています.どちらにも魅力がありますが,楽しみ方には認知処理という点でも相違があるのです.心理学では,そのようなことも研究のテーマとなります.
今年度は,新型コロナに大きく振り回された1年でしたが,もうすぐ終了,卒業式が近づいてきました.いろいろな制限の中で努力を重ね,卒業論文を仕上げた4年生には心から賞賛の拍手を送りたいと思います.それぞれの進路での活躍を祈ります.

4年生の力作 卒業論文

1月の心理学コラム:ビデオ通話はどのくらい本当の自分を映しているの?(担当:森康浩)

2021/1/22 >> 役に立つ!!心理学コラム

対面でのかかわりを持つ機会が減ってきている昨今ですが、その代わりにビデオ通話でコミュニケーションをとる機会がとても増えていると思います。

授業やセミナー、会議もビデオ通話で行われたりしますが、ビデオ通話でのコミュニケーションにはどのような特徴があるのでしょうか?

ビデオ通話では、胸から上の2次元の情報が映し出されます。
人はその人から得られる外在的な情報をもとに内面的なことを推測して
印象を形成します。
つまり、ビデオ通話ではすべての情報があるわけではなく、欠損した情報からその人はどんな人なのかを推測します。

今年の実践ゼミでは、ビデオ通話でしかかかわりのなかった1年生同士がそれぞれの身長や好きな色、血液型、出生順を推測して回答するということを行いました。
その結果、どの項目に関してもあまり正しく回答できていないということがわかりました。
つまり、本当の自分とは異なる印象を相手に持たれてしまっているということになります。

また、今年の卒論では、ビデオ通話の映り方によってはどのような印象になるかを調べました。うなずきや身振り手振りといったノンバーバルコミュニケーションに関連したことや映っている画角による影響を検討しました。その結果、うなずきが多いほどポジティブな印象であること、身振り手振りが大きいと乱雑という評価をする一方で、親しみやすく、積極的で、元気と評価されることも分かりました。
映り方の画角については、画面に顔が寄って近いと元気、外交的と評価されて、遠いとおとなしそう、頼りないと評価されるようでした。

どういう風に見せたいかを考えて、映り方を気にするのも重要かもしれません。

ビデオ通話を題材にいろいろなことを調べてみましたが、ほかにも心理学とかかわる面白いことがあるので、検討を重ねていこうと思います。

12月の心理学コラム:オンライン募金(担当:友野隆成)

2020/12/15 >> 役に立つ!!心理学コラム

前回のコラムでは,オンライン学会の話を取り上げましたが,今回もオンライン関連の話です。

私が担当する実践セミナーの授業では,例年大学祭で東日本大震災の義援金募集活動を実際に行いながらデータ収集をしておりましたが,今年は新型コロナウイルス禍の影響でそれもままならない状況となっていました。そこで,受講生の皆さんとどうするか検討した結果,今回は「オンライン募金」に挑戦することに決定しました(ちなみに,「オンライン募金」を行うことを決めたのも,Zoomを用いた「オンライン授業」でのやり取りの中ででした。今年は多方面でオンライン色の強い1年となりました)。

前期中に「オンライン授業」で今年度どのようにしていくのかを検討した結果,東日本大震災の義援金に加えて,新型コロナウイルス禍で困難な状況に立たされている医療従事者やライブハウス支援のための募金活動を,オンライン募金サイトを用いて行うことにしました(その他,学内の一角で不要になった衣服を支援物資として非対面で収集し,発展途上国などに寄付するという活動も併せて行いました)。10月下旬から約3週間のオンライン募金活動でしたが,これまで行ってきた対面での募金活動とは勝手が異なり,顔の見えない状況で中々思ったように募金を集めることができませんでした。しかし,人数は少なかったものの全国各地からたくさん寄付していただけました。

我々の活動にご賛同いただき,寄付してくださった全ての方々にこの場を借りて厚くお礼申し上げます。来年度はどうなるかわかりませんが,今回の経験を今後に繋げていきたいと考えております。

オンライン募金サイトで作成した画面

11月の心理学コラム:新型コロナウイルスCOVID-19とヒューマンエラー(担当:大橋智樹)

2020/11/27 >> 役に立つ!!心理学コラム

この1年、世界を支配したCOVID-19は、私の専門であるは産業におけるヒューマンエラーの防止ととてもよく似ています。今回は、そのお話をしましょう。
両者がよく似ているのは、「何もしなければ起こらない/かからない」という“完璧な対策がある”という点です。ヒューマンエラーは何らかの業務や作業があって初めて発生するので、現場が止まっていれば基本的には起こりません。COVID-19への感染も、一人家にじっと閉じこもって人との接触を避けていればかかりません。
でも、ヒューマンエラーを起こしたくないからと現場を止めていたら、そこには何も生まれません。もちろんお金も入ってきません。COVID-19への感染を恐れて家に閉じこもっていても同じです。人とのコミュニケーションや、現地に自分で足を運ぶことによって生まれるリモートでは得難い貴重な経験はできません。ですから、“完璧な対策”は選択肢になり得ないので、どちらも一定のリスクを受け入れながら活動していくという選択肢しか残らないのです。

実はこのような、アクセルとブレーキを同時に踏むようなことは、ヒューマンエラーや感染症以外でも起こっています。たとえば、車や列車、飛行機を利用することも一定の事故のリスクを受け入れることですし、進学や結婚といった人生の選択でも同じです。社会にも人生にも、あらゆる人間の活動にリスクはつきものなのです。
大学は、そういった問題をきちんと捉えて、後悔の少ない選択ができるようになるための力を身につける場です。文系学問に位置づけられながら理系的要素を多分にもつ心理学は、そういった力を身につけるためにうってつけな学問だと思います。ぜひ、一緒に心理学を学びましょう!

10月の心理学コラム:理論と経験のミスマッチから学問は進む!?(担当:木野和代)

2020/10/10 >> 役に立つ!!心理学コラム

以前とりあげた「認知的不協和理論」では,「人気のタピオカのお店で長時間行列に並ぶことになったけれど,待った甲斐あって美味しくて満足だった,また行きたい」ということが起こります。しかし,理論ではうまく説明できないケースがあるようです。

濱(1991)は,経験に照らし合わせてみると,その商品の品質が劣悪だったときは満足(しようと)しないのではないか,という考えから,それを確かめる実験を行いました。それは,大学祭の模擬店(たこ焼きの屋台)でのフィールド実験でした。
コスト(待ち時間が長いか短いかの2パターン)と商品の品質(食材などの質が高いか低いかの2パターン)を組み合わせた4つの条件を設定し,条件間でお客さんのおいしさの評価を比較したのです。
結果はというと,高コスト(長時間待ち)の場合には,低品質のたこ焼きが提供されるとおいしさの評価が低くなる傾向にありました。つまり,経験からの予測どおり,品質の低い商品に対しては認知的不協和理論が適用できないことが示されたというわけです。

学科実習室の各種学会論文集コーナー

これは,日本心理学会の研究大会で報告された研究で,以前ゼミの学生さんが,学科の実習室にある資料から見つけて,授業で紹介してくれたものです。授業では,学んだ心理学の理論を,身の回りの様々な出来事にあてはめて考えてみてもらいます。皆さんも座学で理論を学んだら,経験と照らし合わせて検討してみてください。面白い研究に発展することがあるかもしれませんよ。

文献:濱 保久 (1991). 待てば待つほど美味しくなるのか?―大学祭模擬店における認知的不協和理論の検証― 日本心理学会第55回大会発表論文集, p.680.