Archive for the ‘役に立つ!!心理学コラム’ Category
4月の心理学コラム:遊びを学びに!(担当:宮下達哉)
2025/4/15 >> 役に立つ!!心理学コラム
はじめまして。2025年4月1日より着任した宮下 達哉(みやした たつや)と申します。初登場です。担当は感性心理学です。今回のコラムでは簡単な自己紹介として,私の研究のきっかけをお話ししようと思います。
私が大学生のころ,お友達と一緒に美術館に行ったときのことです。そこである絵画を観ていた時に,私は「この絵,きれいで好きだなあ」と思ったのですが,一方の友達は「これ,あんまり良くないよ。そんなにきれいでもないし」と評価がまったく違うものでした。そのとき,なんで同じ絵画を鑑賞しているのに,こうも評価が真っ二つに分かれるのだろう?と思いました。こうした評価の違いを,何か心理学的に検討することはできないだろうか,と思ったことが私の研究のきっかけでした。
上記の美術館に行って絵を見たということは,遊びでした(正確には,卒論で煮詰まって息抜きで行った遊びです笑)。タイトルにも書かせて頂きましたが,遊びに行ったときの経験やふとした疑問を,心理学的に検討したらどうなるかという視点は重要だと思っています。思いがけないところに,心理学的な観点から検討できることがあったりします。例えば,「メイクに対する印象」とか,買い物に行って「○○商品のパッケージがカワイイと思った」とか。言い換えれば,心理行動科学科がモットーにしている「心理学は机の上だけで学べない!!」ですね。
日常のいろんなところにある感性心理学を学ぶための種を,学生の皆さんと一緒に考えたり,研究を行っていけたらなと思います。どうぞよろしくお願いします!

第20回日本感性工学会春季大会(2025.03.05)で ポスター発表をしたときの写真です
2月の心理コラム:ヒス構文 (担当:木野和代)
2025/2/14 >> 役に立つ!!心理学コラム
先月実施された大学入学共通テストの国語の問題で「ヒス構文」が登場した、とテスト終了後にSNSで話題になっていました。ヒス構文ということばは初めて聞きましたが、問題文の中の該当部分のやりとりを見る限りでは、「交流分析」における「ゲーム」にあたるのではないかと思いました。
「交流分析」は、精神科医エリック・バーンが創始した心理療法です。簡単で親しみやすいことから、精神分析の口語版ともいわれています。交流分析は、3つの欲求理論と4つの分析理論からなりますが、後者の一つが「ゲーム分析」です。「ゲーム」は簡単にいうと対人関係の中で繰り返される悪い癖のことで、会話を交わしているお互いの間に不快な感情が残るのが特徴の一つです。
代表的なゲームの例として「はい、でもゲーム」があります。これは、 相手に相談を持ちかけておきながら、相手からの提案に対し、「はい、でも」と言って反論を続けるパターンを繰り返すものです。そして、結局は、相手に無力感を抱かせることになります。このような会話を日常で見聞きした経験があるのではないでしょうか。では、ゲームに気がついたらどうしたらよいでしょうか? ゲームが行われているときは、「大人の自我状態」が働いてない状態にありますので、これを働かせることを意識したり、いつもの交流パターンを変えてみたりなどが考えられますが、詳しくは交流分析の理論について知っていただいてからがよさそうです。交流分析については、また機会があれば取り上げてみたいと思います。

毎年10月の大学祭における学科企画「ココロミル」で実施している性格診断では宮城学院式のエゴグラム(MEG)を体験していただいています。エゴグラムは交流分析の構造分析に使われるものです。
1月の心理コラム:復活!対面での募金活動(後日譚)(担当:友野隆成)
2025/1/31 >> 役に立つ!!心理学コラム
前回のコラムで,6年ぶりに対面での募金活動を復活させるという話をしました。今回は,その後日譚です。4つのチームがそれぞれ考案した企画案に基づき募金活動を行いましたが,過去に実施した熊本地震と東日本大震災の比較を参考に,2024年1月に発災した能登半島地震と東日本大震災の比較をしたチームが実施した活動にこのコラムではフォーカスしてみたいと思います。
過去の活動同様に,大学祭でそれぞれの被災地宛の募金箱を設置し,どちらにより多く募金されるかを実験しました。前回はどちらの募金箱にも寄付できるようになっていたのですが,今回は敢えてどちらか一方のみにしか寄付できないという縛りを掛けました。その結果,前回とは逆に,能登半島地震(12,484円)の方が東日本大震災(4,342円)に比べて多かったことが示されました。いよいよもって東日本大震災が風化してきているのか,それとも能登半島地震のインパクトが大きかったのか,はたまたどちらか一方にしか寄付できないという縛りの効果があるのか…色々な観点からの解釈ができそうです。今回,他のチームも斬新な企画をそれぞれ考案し,精力的に活動してくれました。また,大学祭当日も好天に恵まれたお陰で,集まった募金はトータルで過去最高額を達成しました。そして,活動の趣旨にご賛同いただき,ご寄付いただいた皆さまにこの場を借りてお礼申し上げます。本当にありがとうございました。また来年も,対面での募金活動を実施したいと考えております。

募金活動で実際に使用した募金箱
12月の心理コラム:他職種から多職種協働による犯罪被害者等支援(担当:浅野晴哉)
2024/12/5 >> 役に立つ!!心理学コラム
毎年、11月25日から12月1日までは犯罪被害者週間です。私は犯罪心理学ゼミ生5人と11月25日仙台駅において宮城県警察主催の犯罪被害者等支援広報啓発に参加いたしました。他に参加した団体は、(公社)みやぎ被害者支援センター、宮城県、仙台市、蔵王町、登米市、女川町であり、産官学の協働により県民に犯罪被害者等の実情を理解していただき、支援が促進されるようお声を掛け、リーフレットなどを手交しました。また、同駅ステンドグラス前では、交通事故などで家族を失った御遺族が中心となり亡くなられた方の等身大のオブジェを展示する「生命のメッセージ展」が開催され、一層犯罪被害者等支援の気運が高まりました。同展を開催された方ともお話ができ、とても有意義な時間を共有でき、さらに学生が広報啓発に一翼を担う機会をいただき、宮城県警察を始めとする関係機関の方々に感謝申し上げます。これらについては本学社会連携課HP及び河北新報11月26日朝刊に掲載されております。
同広報啓発には宮城県鉄道警察隊木村隊長も参加なされました。同木村隊長は私が県警在職中に困難を抱えた際には適切かつ明確に歩む道を導いてくださった上司です。隊長の信条は「不平・不満は弱者の論理」です。この言葉のとおりどのような仕事に対しても真摯に取り組まれ、その姿勢から多くを学ばせていただいたおかげで、現場においては警察官と心理職という他職種協働が実現できました。さらに、今回は広報啓発を協働でき、同活動終了後に隊長の御厚意により、隊長室で学生と共に歓談しました。学生にとっては現場を実際に見て体験できる貴重な経験となり、木村隊長以下隊員の皆様にこの場をお借りして感謝申し上げます。
さて、私は心理職であるため隊長を始めとする警察官との協働は、他職種協働と言えます。犯罪被害者等の視点に立つと、警察官、検察官、弁護士、地方公共団体及び民間支援団体等多くの専門家との協働、いわゆる多職種協働が必要になります。まさに今回の広報啓発活動は産官学多職種協働でした。今後とも犯罪被害者等支援における多職種協働に微力ながら尽力したいと考えております。
それでは、またこのコラムでお会いできることを楽しみにしております。
- 鉄道警察隊前にて隊長と記念撮影
- 隊長室にて隊長等と共に記念撮影
11月の心理学コラム:映画の話し『どうすればよかったか?』(担当:大橋智樹)
2024/11/10 >> 役に立つ!!心理学コラム
私はかつて精神科の単科病院の心理士として勤務していたことがあります。そこではさまざまな心の病を抱えた患者さんと出会いました。中でも、幻覚や妄想が特徴とされる統合失調症は入院期間が数十年になるようなケースも珍しくない病でした。
この映画は、統合失調症を発症した姉を、映画監督になった弟が一緒に暮らす両親とともに撮影し続けたドキュメンタリーです。
統合失調症を発症した人を目の当たりにしたことのない人にとっては、その症状の激しさにまずは驚くかもしれません。しかしこの映画の主題はそこではなく、その家族がそのこととどのように苦しみ、どのように目をつぶり、どのように折り合いをつけてきたか、その20年間の記録なのです。親子、姉弟、そして夫婦の愛と葛藤が描かれています。その折々に、タイトルである「どうすればよかったか?」を、登場人物たちに自分を重ねて“自問”し続けることになるのです。
統合失調症の人を家族にもつ人は多くはないかもしれません。しかし、人生にはさまざまな困難が立ちはだかるものです。それでも前に進まねばなりません。どうすればよかったか?は誰にでも突きつけられる問いなのです。
そんなことを突き付けられる良い映画でした。「こんな映画がありますよ。先生、好きかも?」とわざわざ連絡をくれた卒業生に感謝です。ありがとう。