9月の心理学コラム:認知が感情を左右する①(担当:木野和代)
2025/9/19 >> 役に立つ!!心理学コラム
今年の日本心理学会の学術大会は、9月5日~7日に仙台で開催されました。様々な領域の研究発表があってとても刺激的でした。今は、収集した情報を整理して、さらに調べ物をしているところです。その中で面白い論文に出会いました。
日常生活でどの程度「認知バイアス」を経験するかを測る尺度を開発した論文です(※1)。ゼミ生の卒業研究に使えるかもしれないと思って読んでみると、約200種類の認知バイアスから代表的な80個が厳選されて、分類されていました。その中には感情心理学の授業で扱う現象も含まれていて、別の切り口から捉える面白さを感じました。
その一つが「皮肉なリバウンド効果」です。これは「あることを考えないようにしようとするほど、逆にそのことを考えてしまう」というものです。感情に絡めて例をあげると、不安や心配のもとになるネガティブな考えを抑えようとすればするほど、その考えが頭に浮かび、不安から抜け出せなくなる、といった具合です。
ちなみに、この効果を提唱したWegnerらの実験(※2)では、「シロクマ」について考えないように指示されたことから、「シロクマ効果」とも呼ばれています。
では、この認知バイアスを避けるにはどうしたらよいでしょうか? 授業中に、あることを考えないようにする体験をしてもらうと、数人はうまくできたと言います。聞いてみると、別のことを積極的に考えて注意をそらしていたとのことでした。Wegnerらの論文でも注意をそらすことの有効性について議論されています。
【文献】
※1:高比良美詠子、他 (2024). 認知バイアス・アセスメント尺度80(CBA-80)の開発 立正大学心理学研究所紀要, 22, 35-59.
※2:Wegner et al. (1987). Paradoxical effects of thought suppression. JPSP, 53, 5-13.