5月の心理学コラム:映画の話し『ミッドナイトスワン』(担当:大橋智樹)

2021/5/26 >> 役に立つ!!心理学コラム

今回は、2020年の第44回日本アカデミー賞において最優秀作品賞と最優秀主演男優賞をW受賞した映画『ミッドナイトスワン』を紹介します。この映画は新宿で生きるトランスジェンダー女性(生物学的な性は男性だが自認する性は女性)と親からの虐待を受けていた親戚の女子中学生との同居生活を描く物語です。どちらも自分の居場所、生きる意味を見つけられず、社会の中に居場所がない共通点からか、お互いに通じ合うものを感じながら、徐々に心が通い合っていくが、、、この先は実際に映画を観てください。
この映画の主題はトランスジェンダーや虐待といった社会問題ですが、しかし、誰もが生きていく中で直面するであろう“生きにくさ”に重ねることができると思います。苦しみながら、もがきながら、なんとか前に進もうとし、しかし模索が結果として見つけたものを奪われたり、そんな経験があるのではないでしょうか。理解されずにもがいている人はたくさんいるのです。
この映画はそのような経験に希望の光を与えるものではありません。しかし、現実はハリウッド映画のようにバラ色のエンディングにつながるわけではない。でもそれでも生きねばならないし、その模索は続くのです。
主演の草彅剛と、女子中学生役の新人服部樹咲の演技が素晴らしい。スクリーンから伝わってくる登場人物の放つ空気に圧倒されたり、心を溶かされたり、一緒に胸が苦しくなったりします。ぜひ観てみてください。

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