Archive for the ‘役に立つ!!心理学コラム’ Category

9月の心理学コラム:行動を誘発する”もの” (担当:森康浩)

2018/9/10 >> 役に立つ!!心理学コラム

皆さん。下の写真のような状況に出くわしたとしたら、どのように行動しますか?
これはエスカレーターを降りたすぐ直後に、フロアーの部分に足跡が書かれているというものです。
足跡の向きに従って歩いて行きますか?
エスカレーターを降りる際に足下に注意を向けるので視界に入りやすいですし、足跡を目でたどって、その先にあるものを見て、移動することを決めると思います。
私たちの身の回りには、いろいろな形のものやいろいろな配置のものがあります。
ここまで話してきたものには、アフォーダンスという名前がついています。
アフォーダンスとはGibson(1979)が提唱したものであり、生活環境の中に存在するものの形状や材質といった特徴から行動が誘発されることを指しています。
例えば、取っ手つきのコーヒーカップを持つ際に、多くの人が取っ手を持って飲み物を飲むと思います。誰かが「取っ手を持たなければいけないんだよ」ということを教えてくれたわけではありませんが、そのような行動を人はします。また、小さいときに横断歩道の白い部分から落ちないように渡ったことがあるともいます。これもアフォーダンスです。
皆さんの日常の中にどのくらいアフォーダンスがあるか探して見てください。

8月の心理学コラム:アジア競技大会ダイアリー(担当:工藤敏巳)

2018/9/1 >> 役に立つ!!心理学コラム

毎回、学科のエッセイを書くにあたり、何を書くか悩みます。今回は先月から開催されたアジア競技大会(ソフトテニス競技)に選手団と帯同しているので、その時々で思ったこと、感じたことについて綴ってみたいと思います。

8月24日(出発日)
宮城学院発の夕方のバスに乗車し、仙台駅に向かう。
17時30分発の新幹線で上野駅に向かう。金曜日の夕方からか、普通指定席が取れず、ちょっとリッチな気分でグリーン席。しかし、ここもほぼ満席。
堀江モンさんみたいな方がいるといけないので、いきなり後ろを振り向かず、リクライニングを倒してみる。確かに、いちいち後ろの方に確認してシートを倒す必要もないが、それに腹をたてるのもどうかと思う。
JR上野駅から京成線乗換まで少しだけ歩くので面倒くさい。雨が降っていないといいが。東京駅から成田エクスプレスに乗ろうとしても、総武線の乗り口は遠いので結局は同じだろうか。

大学を卒業してから上野駅には寄る機会がほとんどない。10年くらい前に京成線に乗車した記憶があったが、今とほとんど変わっていない印象だ。
学生時代には、40年も前には、筑波大学の宿舎に帰るにはJR常磐線で荒川沖駅下車したので、東京に行く時には必ず上野駅を経由したので、懐かしい。

日本ソフトテニス連盟が用意してくれたホテルに宿泊し、明日は8時に成田空港に集合です。ここ2、3日、ゲーム解析のコード作りを頑張っていたので眼の疲労がハンパない。明日、遅刻しないといいが。

8月25日
ジャカルタでパレンバン行き便の出発待ち。
成田空港第二ターミナルでは、アジア大会専用カウンターが設けられており、すんなり手続きが完了した。
陸上競技の短距離が始まるらしく、桐生選手に遭遇。報道陣の取材を受けていた。カヌーの選手団も同じ便で、知り合いのカヌーチームのトレーナーに「メダリストも来ているの?」と聞いたら聞こえなかったのか「?」と返答。結局ナマ羽根田選手に会えずに残念でした。競技会場が同じなので、スケジュールをチェックし見に行こうと思う。
7時間の機内で同じ姿勢を取り続けると回復が大変なので、選手たちは時々機内は立って過ごしている。コンディショニングには気を使う。

8月26日
昨晩、0時にホテル到着なのに、朝は6時出発でした。まぁいつものことです。
対戦国の練習を撮影し分析する。午後は会場から市内のスーパーマーケットまでモノレールを使って、買い出し。選手用の日本食の食材を買う。キャベツとかじゃがいもとか。何でもお好み焼きを作るらしい。グリコーゲンローディングです。下痢を起こしたら一大事なので食事には気を遣う。トレーナーが炊事をして、いろいろ献立を考えているようだ。

パレンバンのモノレールは出来たばかりで大勢の一般客で混雑していた。乗車客をプラットホームにあげず、改札口で待たせるシステム。確かに子供達には転落の可能性があるので、いいシステムだと思う。しかし、30分間隔だからなせる技で、山手線ではできない。
夕方、対戦国が練習しなかったので少し時間が出来た。テニスセンターの隣の会場でスポーツクライミングをやっていたので、それを視察した。これが面白い。

8月27日
ホテルで朝食。出発時間を昨日より30分遅らせたので、朝食がとれるようになった。

8月28日
本日は、シングルス。予選からQuarterFinalまで。
帰りのモノレール最終に乗り遅れ、急遽、タクシーでホテルへ。幸い、駅にアジア大会のボランティアの方がいたのでタクシーをよんでもらえたからよかったが、パレンバンでタクシーを見つけるのは至難の技だと思う。だいたいホテルの住所すら知らない。

8月29日
今朝も昨日に続いて5時半出発。シングルスの準決勝、決勝。ジングルスは最大の山場、こういう時は、監督、スタッフ、選手はいつも無口。必要最低限の会話に緊張感が漂う。午後からはミックスダブルス予選が始まる。

8月30日
毎朝、監督スタッフに飲んでもらおうとコーヒーを入れて会場に行く。今日も。
ゆっくりしてもらいたいのと、カフェインを入れて眠気を追い払うためである。しかし、もはやスタッフの疲労はピークに達しているようでカフェインなんかは効かないようだ。

Twitterを見ると、結果や映像がたくさんアップされている。確かに人より早くアップすればアクセス数が増えるのだろう。しかし、そうした情報の即時性よりも情報に付加価値を与えることの方が重要に思える。つまり、情報に関して意見や考えを述べる。その方が読んでいて興味が湧く。
また、情報に偏りがある。日本に関する情報が圧倒的に多く海外情報が少ない。

9月1日
団体戦決勝。男子は惜しくも韓国に負けてしまいましたが、女子が韓国に勝ち、金メダルを獲得しました。しかし、ホッとしている暇はありません。見つかった課題に取り組んで、前進していきたいと思います。
明日は帰国です。ホテルにバスタブがなかったので、帰国したら湯船ゆっくり浸かりたいですね。

7月の心理学コラム:楽器の話 その1 ファゴット(担当:佐々木隆之)

2018/8/2 >> 役に立つ!!心理学コラム

ファゴットは,バスーンとも呼ばれるダブルリードの木管楽器です.私の知り合いのファゴット奏者は,バスーンと呼ぶことを異様に嫌っていました.その理由を聞いた記憶はあるのですが,中身はすっかり忘れてしまいました.
ファゴットの特徴は,なんと言ってもそのとぼけた音色にあります.NHKの子供番組では,かなりの割合でファゴットによるBGMが使われています.また,サザエさんやドラえもんのようなアニメの中でも,独特の雰囲気を作るために効果的に使われています.なぜファゴットの音がとぼけて聞こえるかというと,その理由の一つとして楽器の共鳴が挙げられます.ファゴットは他の楽器に比べて,かなり人間の声に近い共鳴構造を持っていると考えられます.そのため,ファゴットの音を聞くと人間の声を連想し,意味の分からないスキャットのような印象を受けます.人の言葉をしゃべる動物に近い印象で,親近感も生じさせます.クレヨンしんちゃんでもファゴットはBGMに使われていますが,クレヨンしんちゃんの発声がファゴットに近く,とても面白く感じて好きです.
同じ二枚舌の木管楽器であるコールアングレ(イングリッシュホルン)やトランペットにハーマンミュート(ワウワウミュート)をつけた音も同様の印象ですが,ファゴットの方が人間の声の音域に近い分特徴が際立っています.機会があったら注目して聞いてみてください.
去る7月15日(日)に,東北大学でサイエンスデイという催しがあり,2人の学生と一緒に出展しました.6時間の間に,小学生の子どもと親,そして時々大学生が800人近く訪れ,錯視パターンの作成を楽しんでもらいました.休む間もなくずっと対応し続けとなり,大変疲れましたが,皆が楽しんでくれているのを実感でき,充実感も味わいました.3年生の蓮池美沙樹さん,小島南さん,ご苦労様でした.

サイエンスデイ2018 その1

 

サイエンスデイ2018 その2

6月の心理学コラム「心のコントロール」(担当:大橋智樹)

2018/7/3 >> 役に立つ!!心理学コラム

サッカーのW杯,ベスト8をかけた決勝トーナメント1回戦。前半を0点に抑えた日本は,後半開始早々,立て続けに2点を取りました。見ていてとても興奮しました。これまで日本のサッカー界にはMFはいるけれどFWがいないと言われてきました。しかし,原口,乾両選手のゴールは,世界トップ選手と比較しても見劣りしないものでした。特に,乾選手は,セネガル戦でのカーブをかけて右サイドネットに突き刺したゴールに続き,今度は無回転のシュートを叩き込んだもので,日本人にもこんなことができる選手が出てきたのか!ととても驚きました。しかし,日本はこの2点を守り切ることができずに,後半アディショナルタイムが終わる寸前にカウンターから3点目を決められて万事休す。ベスト8には進めずに敗退しました。

敗因はいくつもあると思いますが,私はメンタル面の差が大きかったように感じます。代表戦で2年近く無敗を誇るベルギーは,2点を先行されても負けるとは思わなかったことでしょう。それに対し,勝てるかもしれないと思ってしまった日本代表は,追いつかれたことで気持ちが切れたように見えました。平常心を保ってプレイすることができれば,少なくとも延長戦には持ち込めたでしょう。勝機への意識,残り時間への意識,そういった複雑な「心」が負けを呼び込んだように感じます。同じくロスタイムで失点をした1993年の“ドーハの悲劇”からあまり成長していないように思います。

心のコントロールは心理学の目的の一つです。スポーツだけでなく,さまざまな場面でその必要性は高まりつつあります。そんなニーズに応えられる心理学でありたいと思います。

5月の心理学コラム:映画『ウィンストン・チャーチル』にみる英雄像(担当:木野和代)

2018/5/11 >> 役に立つ!!心理学コラム

GW中、観に行ってみた。昨年のアカデミー賞で辻氏がメイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞したことでも話題になった映画である。

映画の前に予習で、インターネットでチャーチルを調べ、イギリス文学を専門とする夫にもそのイメージを聞いてみた。冷酷な独裁者、偏屈者、戦時中に必要だった人などなど、どうもリーダーとしては歓迎したくない人物像が多かった。
ところが、今回の映画の広告を見てみると、『「嫌われ者」から「伝説のリーダー」となったチャーチルの真実の物語』とあり、日本語の副題には、「ヒトラーから世界を救った男」とある。どうやら、これまでとは違った「英雄」としてのチャーチルが描かれているようだ。

英雄といえば、先日、図書館で小此木啓吾先生の『英雄の心理学』という本を見つけて借りたところだった。様々な日本の英雄を取りあげながら、時代によって、どのように英雄像が変わっていったかを紹介している。例えば徳川家康。1930年生まれの小此木先生の少年時代、家康と言えばタヌキ親父で、英雄と呼ぶには程遠い人物だったそうだ。それが、1983年にNHK大河ドラマでとりあげられた辺りから、変わったとのこと。そこには、低成長時代の保守化心理や第二次世界大戦後の民主化など、日本社会の変化が読み取れると言う。「英雄像」も、その時代や社会を生きる人間によって修正が加えられていく、ということだ。

映画の中のチャーチルは、難局にあっても信念を貫いた英傑であると同時に、悩み、迷う、一人の人間でもあった。歴史を変えるほどの決断を迫られたとき、彼は、単身、地下鉄に乗り込み、市民の声に耳を傾ける。とても印象的なシーンだ。当のイギリス国民にどのように映ったか気になるところだが、遠い日本でこの映画を観て心打たれる私達の「英雄像」も、映し出されていることに間違いはないだろう。