Archive for the ‘役に立つ!!心理学コラム’ Category

4月の心理学コラム:世界的アイドル✖️ユング心理学(担当:千葉)

2021/4/12 >> 役に立つ!!心理学コラム

 こんにちは。4月から本学科の教員として着任しました千葉陽子です。どうぞよろしくお願いします。今回は自己紹介を兼ねて心理学のお話をしようと思います。仙台生まれ仙台育ちで、物心ついた時から競技をしていました。競技に自身の全てをかけて専心する中で、高い緊張場面やプレッシャー下では、「自分を隠せない」ことにある時気づきました。メンタルが弱いとか強いとかの一括りにしてしまえばそれまでですが、自分の性格や心理的課題がそういった場面で露呈するのです。「究極に追い込まれたときにその人の本質が分かる」とはよくいったものです。いろいろ思うことがあり(これについて詳しく語り始めると日が暮れそうですので…)、この世界に足を踏み入れました。大学院では「スポーツ臨床心理学」の第一人者である先生の研究室に所属し、ユング心理学を拠って立つ理論としたアスリートの心の深いところについて学びました。
 私は最近知ったのですが、2年ほど前にこの「ユング」があるジャンルで話題になりました。韓国の世界的人気アイドルBTS(防弾少年団)が、「ユング心の地図*」という本をコンセプトにしたアルバムをリリースしたのです。韓国では大きな注目を集め、本書はベストセラーランキング入りとなったようです。アルバムリリースに伴い、メンバーもユングについて学んだと聞きます。日本では絶版となっていましたが、これを機に復刊しました。アルバムの中には「シャドウ」や「ペルソナ」といったユングと関係の深い概念が散りばめられています。トップに上り詰めてスポットライトを浴びれば浴びるほど、その影は深くなっていく。そんなことをアスリートと重ねながら思い耽りました。アイドルはその時代を映す鏡といえるかと思います。その時代に生きる人たちの心を惹きつける彼らは、きっと時代の何かを象徴していると考えられます。私はARMY(BTSファンのことをこう呼ぶそうです)ではありませんが、世界的アイドルグループが本書(心の深層)をコンセプトにアルバムを作成したことに小さな感動を覚え、意味を感じずにはいられませんでした。興味を持たれた方は、PVなどをみるだけでもユングの一部を垣間見ることができますので、是非。

*マレイ・スタイン 入江良平(訳)(2019). ユング 心の地図 新装版 青土社

3月の心理学コラム:つらい経験からの成長(担当:木野和代)

2021/3/9 >> 役に立つ!!心理学コラム

東日本大震災から10年になります。トラウマなどつらい思いを抱えている方もいらっしゃるでしょう。一方で,この経験から学び・成長を感じている方もいらっしゃるかと思います。関連する心理学用語として,それぞれPTSD,PTGがあります(※)。
日本国内の論文検索サイト(Cinii Articles)で,2011年以降の論文を検索してみると,「震災」「PTSD」でヒットしたのは133件でした。「震災」「PTG」では12件でした。11倍の違いです。震災後のPTGの研究はまだまだこれからなのかもしれません。

さて,今月卒業を迎える4年生は,思いもかけぬコロナ禍で大変な思いをしたことでしょう。思い通りにならないことも多く,涙をこらえ切れなかったことが何度かあったでしょう。しかし,この1年を教員目線で振り返ると,4年生の皆さんの成長ぶりがめざましかった様な気がしています。ゼミレポートをみても,学生生活の最後の1年間をやり遂げてできるようになったことが,例年になく多く挙げられていました。それは私の目にもわかる大きな変化でした。なかなか顔を合わせないために,変化に気づくことができたということかもしれませんが,いずれにしても皆さんのこうした成長をうれしく思います。苦難に立ち向かう中で,持っている力をますます発揮するチャンスを得たのかもしれません。自らの力で達成したことを,誇りに思ってください。そして今後に大いに活かしていってください。
これからの新しい生活が,皆さんにとって幸せなものとなりますように。

復興ピアノ「ローラ」@仙台空港にて


※「PTSD」(Posttraumatic Stress Disorder)は心的外傷後ストレス障害,「PTG」(Posttraumatic Growth)は外傷後成長と訳されています。関心を持った方はさらに調べてみてください。コロナ禍の学生のPTGについては,ゼミ生が卒業研究で取り組みました。こちらからご覧下さい

2月の心理学コラム(担当:佐々木隆之)

2021/2/26 >> 役に立つ!!心理学コラム

音楽の聴き方 その2

前回(昨年9月)のコラムでは,初めて聞く音楽と繰り返し聞く音楽で,認知処理に大きな違いがあることを書きました.今回はその続きとして,知っている曲を,ライブなどで生演奏の形で聞くときの聴き方を紹介します.そこでは,また違うプロセスが働いています.人間は機械ではないので,元の音源とまったく同じように演奏することはできません.リズムに微妙な違いが生じたり,表現の仕方が変化したりします.また,それを意図的に行うこともあります.ライブの楽しみの一つは,その日の演奏がいつもとどのように違うかを期待するところにあります.
同じような違いは,映画と舞台の間にもあります.映画は期待通りに進行しますが,舞台演劇は日々いろいろな違いが生じています.どちらにも魅力がありますが,楽しみ方には認知処理という点でも相違があるのです.心理学では,そのようなことも研究のテーマとなります.
今年度は,新型コロナに大きく振り回された1年でしたが,もうすぐ終了,卒業式が近づいてきました.いろいろな制限の中で努力を重ね,卒業論文を仕上げた4年生には心から賞賛の拍手を送りたいと思います.それぞれの進路での活躍を祈ります.

4年生の力作 卒業論文

1月の心理学コラム:ビデオ通話はどのくらい本当の自分を映しているの?(担当:森康浩)

2021/1/22 >> 役に立つ!!心理学コラム

対面でのかかわりを持つ機会が減ってきている昨今ですが、その代わりにビデオ通話でコミュニケーションをとる機会がとても増えていると思います。

授業やセミナー、会議もビデオ通話で行われたりしますが、ビデオ通話でのコミュニケーションにはどのような特徴があるのでしょうか?

ビデオ通話では、胸から上の2次元の情報が映し出されます。
人はその人から得られる外在的な情報をもとに内面的なことを推測して
印象を形成します。
つまり、ビデオ通話ではすべての情報があるわけではなく、欠損した情報からその人はどんな人なのかを推測します。

今年の実践ゼミでは、ビデオ通話でしかかかわりのなかった1年生同士がそれぞれの身長や好きな色、血液型、出生順を推測して回答するということを行いました。
その結果、どの項目に関してもあまり正しく回答できていないということがわかりました。
つまり、本当の自分とは異なる印象を相手に持たれてしまっているということになります。

また、今年の卒論では、ビデオ通話の映り方によってはどのような印象になるかを調べました。うなずきや身振り手振りといったノンバーバルコミュニケーションに関連したことや映っている画角による影響を検討しました。その結果、うなずきが多いほどポジティブな印象であること、身振り手振りが大きいと乱雑という評価をする一方で、親しみやすく、積極的で、元気と評価されることも分かりました。
映り方の画角については、画面に顔が寄って近いと元気、外交的と評価されて、遠いとおとなしそう、頼りないと評価されるようでした。

どういう風に見せたいかを考えて、映り方を気にするのも重要かもしれません。

ビデオ通話を題材にいろいろなことを調べてみましたが、ほかにも心理学とかかわる面白いことがあるので、検討を重ねていこうと思います。

12月の心理学コラム:オンライン募金(担当:友野隆成)

2020/12/15 >> 役に立つ!!心理学コラム

前回のコラムでは,オンライン学会の話を取り上げましたが,今回もオンライン関連の話です。

私が担当する実践セミナーの授業では,例年大学祭で東日本大震災の義援金募集活動を実際に行いながらデータ収集をしておりましたが,今年は新型コロナウイルス禍の影響でそれもままならない状況となっていました。そこで,受講生の皆さんとどうするか検討した結果,今回は「オンライン募金」に挑戦することに決定しました(ちなみに,「オンライン募金」を行うことを決めたのも,Zoomを用いた「オンライン授業」でのやり取りの中ででした。今年は多方面でオンライン色の強い1年となりました)。

前期中に「オンライン授業」で今年度どのようにしていくのかを検討した結果,東日本大震災の義援金に加えて,新型コロナウイルス禍で困難な状況に立たされている医療従事者やライブハウス支援のための募金活動を,オンライン募金サイトを用いて行うことにしました(その他,学内の一角で不要になった衣服を支援物資として非対面で収集し,発展途上国などに寄付するという活動も併せて行いました)。10月下旬から約3週間のオンライン募金活動でしたが,これまで行ってきた対面での募金活動とは勝手が異なり,顔の見えない状況で中々思ったように募金を集めることができませんでした。しかし,人数は少なかったものの全国各地からたくさん寄付していただけました。

我々の活動にご賛同いただき,寄付してくださった全ての方々にこの場を借りて厚くお礼申し上げます。来年度はどうなるかわかりませんが,今回の経験を今後に繋げていきたいと考えております。

オンライン募金サイトで作成した画面