2月の心理学コラム:聴覚と視覚の対応関係(担当:佐々木隆之)

2020/2/6 >> 役に立つ!!心理学コラム

聴覚と視覚の対応関係

聴覚と視覚の知覚認知処理には共通する部分があります.そのため,聴覚の錯覚(錯聴)と視覚の錯覚(錯視)の間に類似性を見つけることができます.聴覚の錯覚として有名な「無限音階」は,エッシャーの作品などに見られる「無限階段」との類似で紹介されることがあります.「ルビンの杯」として知られる絵は,向かい合った横顔に見えたり,さかずきに見えたりする「多義図形」です.多義図形では,全く同じ図形を見ていても,見えるものが突然変わることがあります.聴覚でも,「なす」という言葉を繰り返し言い続けると,「なす」に聞こえたり「すな」に聞こえたりします.これが聴覚の多義パターンで,視覚の多義図形と同じ原理が働いています.
ゼミで扱う研究テーマを探すときも,視覚現象を参考にして聴覚の研究計画を立てることがあります.最近気になっているのが「不気味の谷」現象です.これは,人形を作るとき,人間に似せてリアルなものに近づけていくと,一定のリアルさになると突然不気味な印象が出現するという現象です.そこからさらにリアルさが増すと不気味さは消えてしまうというのです.一定のリアルさの範囲で評価が急激に落ち込むことから「谷」という表現が使われています.この現象は音では生じないでしょうか?合成音声を人の声に近づけると不気味に聞こえる範囲があるのでしょうか?初音ミクの声について,抑揚や強弱,テンポの揺れなどを加工していくと,不気味さが出現するでしょうか?このようなところから,研究のヒントが得られることがあります.

心理行動科学科では,毎年「Pスクエア」と題して,1年生から4年生までの学生の研究の成果を発表しています.今年は,2月16日(日)の12時から17時まで,グリーンプラザで行います.現在も発表に向けて準備作業を進めています.ぜひご来場ください.

今年も4年生は無事に卒論を提出しました.Pスクエアでは,卒論の成果も発表します.

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