Archive for the ‘役に立つ!!心理学コラム’ Category

2月の心理学コラム なぜ、「金メダルを取ります」って言わないの?(担当:工藤敏巳)

2014/2/27 >> 役に立つ!!心理学コラム

ソチオリンピックに出場した選手のテレビインタビューをみると、ほぼ決まって、「自分の持っている力を全部出します」とか、「練習の成果を出します」と言っています。「金メダルを取ります」コメントがあったニュースは、私が見た限りでは1件くらいでした。 

なぜ、金メダルをとりますとコメントしないのでしょうか?ちょっと、考えてみましょう。
先日、私がTwitterで羽生選手が通っていた高校のことをツイートしたら、高校生にずいぶんとリツイートされました。ツイートに「羽生選手」と入れると検索にひっかかり、多くの方に読んでもらえるのかもしれませんね。そんなツイートの1つに、以下のツイートがありました。
【伝説の競演】
・荒川静香 アイスリンク仙台→東北高→早稲田大→2006年トリノ五輪→フリー21番滑走→金メダル
・羽生結弦 アイスリンク仙台→東北高→早稲田大→2014年ソチ五輪→フリー21番滑走→金メダル
私が加えたいのは、フリー21番滑走→イナバウワー→金メダル です。
イナバウワーは柔軟性を活かした荒川静香選手の得意演技で、象徴でもあります。Webサイト(http://www.shizuka-arakawa.com)のトップページを見ると素晴らしいイナバウワーの画像が載っています。トリノオリンピックの頃に放映された「アスリートの魂」(NHK)によると、荒川選手はオリンピックでの演技よりもアイスダンスに興味を持っており、より高い競技戦績を目指すというよりは、むしろ芸術性の高いスケートに興味を持たれていたようです。
羽生選手も、実は金メダルをとった演技の中にイナバウワーを入れています。加点対象にならない演技なので、競技で金メダルを取ることだけを考えたら不要の演技と言えるのでしょうが、荒川選手への強い憧れが、彼を動かしたのかも知れません。普段の練習で行なっていること、憧れの演技をやり遂げることこそ、オリンピック出場の意味だったに違いありません。
心理学では、目標達成について課題志向性と自我志向性の2点から考えられています。新しい技術を獲得したり、以前できなかったことができるようになることを目標として、自分の能力が以前よりも伸びた時に成功を感じる場合、課題志向性が強いと言います。自我志向性が強いとは、勝負に勝つことや他者より成績がよいことを目標としている場合です。課題志向性は、有能感や内発的動機づけを高めますが、自我志向性はそれらを低下させ、競技から離脱させてしまう可能性を含んでいます。
そう考えると、「練習の成果を出します」コメントは課題志向性の現れなのかもしれませんね。ロンドンオリンピックで日本の柔道が大敗を喫したとき、テレビインタビューで「日本のみなさん、すみませんでした」と号泣しながらコメントしていた選手を記憶しています。そのとき、応援している側の思いを理解していないなと感じました。国民が期待していることは、メダルの獲得ではなく取り組んできた過程をすべて出すことであり、それを出し切ることが選手の責任なのかもしれませんね。

1月の心理学コラム 映画の話し『スティング』(担当:大橋智樹)

2014/1/10 >> 役に立つ!!心理学コラム

『スティング』はポール・ニューマンとロバート・レッドフォードという二大スターの共演するギャング映画です。アカデミー賞の脚本賞を受賞した名作です。

ギャングのボスを、騙されたと分からないように騙して大金をせしめ、さらに彼に追われている仲間を助けるというストーリーです。たしかにボスは最終的にまんまと騙されるのですが、この映画で一番騙されるのは観客です。ハラハラドキドキしたあげくに、自分も騙されて、やられたーとニヤリと笑って気持ちよく映画館を後にできる。そんな映画です。

考えてみると、騙されて喜ぶというのは変な話しですが、映画や小説以外にもそういうエンターテインメントがあります。なんだと思いますか?・・・手品です。手品師(マジシャン)は、騙せば騙すほど客に喜ばれる一方で、うまく騙せないと「金を返せ!」などと怒られる。不思議な職業ですよね。

人を騙して喜ばせる仕事をしている人は、まさに“心を読むプロ”です。だって、まず相手の心をちゃんと読めないと騙せませんし、でもそれで喜ばせるんですから、さらに相手を読まないとできません。

『スティング』もそうです。観客の心をわしづかみにして、ぐるぐる揺さぶって、最後には心地よい騙され感で満たされます。心を操られる喜びを感じられること、保証します。

 

12月の心理学コラム サンタクロースは実在するの?(担当:木野和代)

2013/12/16 >> 役に立つ!!心理学コラム

12月2日。月曜の5時間目は1年生との授業。
授業終了の合図と同時に,窓に駆け寄る1年生。
…何でしょう???

礼拝堂のクリスマスイルミネーション点灯式の時間でした。お天気にも恵まれとっても素敵な光景でした。

学内には他にもツリーがいくつも。学内でツリー探しツアーができそうです。
全部ご紹介したいところですが今年初お目見えしたクリスマスツリーを。こちらもとっても素敵です。

ところで,皆さんはサンタクロースはいると思いますか?
サンタクロースについて,幼児がどのように理解するかを調べた面白い心理学の研究があります。
保育園児を対象に3回のインタビューを計画し,保育園でのクリスマス会直前に年に1度のペースで行われたものです。一度のデータ収集では不十分なところを補いながら,3年かかって得られた成果です!
さて,この研究報告によれば,幼児の認識は,年齢とともに「実際に見たことのあるサンタ」は本物であるという認識から「偽物」であるというものに変化していきます。しかし,実際に会ったサンタを偽物という6歳児であっても,「遠くのどこかで自分たちを見守っている本物」のサンタが「実在」すると考えているというのです。
これは,幼児にとってのサンタクロースの実在観が一元的思想から多元的思想に変化していくということを表しています。

ということで,このお話にピッタリな本をご紹介。
『サンタクロースっているんでしょうか?』
これは今から116年前,8歳の少女がニューヨークの新聞社に投書した質問に対し,新聞社の記者が社説で答えた内容が翻訳されたものです。
どんな答えだったのでしょうか??

本学,県図書館,市図書館にも収蔵されています。
ぜひ一度お手に取ってみてください。きっとあたたかな夜を過ごせますよ。

クリスマスイルミネーション点灯式。1年生が撮影してビューティ加工した写真をもらいました。絵葉書みたいですね。

エレベータホールに初お目見えの大きなツリー。

11月の心理学コラム 「持続可能な被災地支援」 (担当:友野隆成)

2013/11/13 >> 役に立つ!!心理学コラム

今年もまた,ココロサイコロの季節がやってまいりました。私が担当している班では,「持続可能な被災地支援」をスローガンとして,「義援金を寄付する心理」について2011年度から継続して検討を行っています。今年度も,大学祭で実際に義援金募集活動をしながら,簡便な実験や調査を実施しました。

 

今回のコラムでは,これまでに寄付していただいた募金額の推移から「持続可能な被災地支援」について考えてみたいと思います。2011年度は40,439円,2012年度は32,003円が集まりました。しかし,今年度は昨年度までよりさらに少ない募金額しか集まりませんでした。年度によって活動時間も活動内容も違うため,直接的な比較はできないという制約はありますが,単純な募金額の推移のみを見てみますと,年々募金額が減っていることがわかります。巷では震災が風化しつつあるという声も聞こえてきますが,我々の研究結果はそのことを裏付けるようなものとなってしまいました。このように「持続可能な被災地支援」が中々に難しいことを実感しておりますが,それにめげずに今後も引き続き「義援金を寄付する心理」を検討していきたいと思います。

 
なお,この場をお借りしまして,これまでに義援金を寄付してくださった方々に改めまして謝意を申し上げたいと思います。ご協力いただきありがとうございました。今年度の活動で集まった募金額および具体的な寄付先につきましては,今月23日(土・祝)に仙台駅近くのAER2階アトリウムで開催されます「ココロサイコロ2013」で公表予定です。また,我々の発表以外に,「視覚イリュージョン」「エスカレーターはどう乗る!?」という2つのテーマに関する研究も発表されますので,是非ご来場ください!

 

 

今年の大学祭で実施した,義援金募集活動の一シーンです。人が全くいません。それは何故でしょうか?その理由を,是非会場に確かめに来てください!

9月の心理学コラム 街中の音 (担当:佐々木隆之)

2013/11/2 >> 役に立つ!!心理学コラム

先週,オランダに行ってきました.ライデン大学の先生と20年以上一緒に研究をしているので,毎年のように行き来しています.ライデン大学は,1575年に創立の世界でも最も古い大学の一つで,日本ではシーボルトのいた大学として知られています.ライデンの植物園や博物館には,シーボルトの持ち帰った植物や標本が数多く残っています.ニホンオオカミのはく製や人魚のミイラなど,いろいろな意味で珍しいものも残されています.

ライデン市に滞在中,ホテルでひと休みしていると,外から楽しそうな音楽が聞こえてきました.なんだろうと思い,窓から通りを見てみると,五人乗りの自転車に真っ赤な服を着た人たちが乗って,それぞれが太鼓やラッパなどをもって演奏しながら走っていました.五人乗りの自転車は,縦一列にサドルが並んでいるもので,初めて見ました.五人乗り自転車も,それに乗った楽隊も,日本では見られない光景なので,写真を撮ろうと思う間もなく,音を残して視界から消えていきました.このように,光景が音と一緒に強い印象を残すことはよくあることです.

以前,オランダに住んでいた時,珍しい光景を近所で見ることがしばしばありました.初夏のある日,近所に馬の足音とざわめきが聞こえてきました.なんだろうと思って窓から見てみると,写真1のように,飾り立てた馬車が通りに止まっていました.隣人に聞いたところ,花婿が,馬車を仕立てて花嫁の家に迎えに行くところだといいます.間もなく,近所の人たちに見送られて,鈴の音,馬の足音とともに花嫁のところに向かって出発しました.

また,9月のある日,住宅地では珍しいストリートオルガンの音が聞こえてきたので,行ってみると,ご近所さんたちがオルガンの音に合わせて踊っていました(写真2).4軒先の家の奥さんの誕生日ということで,オルガンを頼んでパーティーでした.オルガンは,写真3のように,とてもきれいな装飾のものでした.

オランダの街中の珍しい音の例を紹介しましたが,どのような街もそのような音で成り立っています.日本の街中の音も,外国人が聞いたら珍しく感じるものがあるに違いありません.

(このコラムは,9月28日に投稿したものですが,手違いによってアップに失敗していたため,遅くなりましたが,再度アップしました.)