Archive for the ‘役に立つ!!心理学コラム’ Category

12月の心理学コラム:都市伝説の話(担当:大橋智樹)

2019/12/30 >> 役に立つ!!心理学コラム

一部の心理学者の間で伝えられる“都市伝説”があります。それは,「心理学者は自分に足りないところを研究対象とする」というもの。交渉下手な交渉心理学者とか,社会性のない社会心理学者とか,記憶に自信がない記憶心理学者とかetc.です。
私の専門はヒューマンエラー(人間のミス)です。そして,私はとてもミスの多い人間ですので,さしずめ「ミスの多いミス心理学者」と言えるでしょう。最初から意識して自分のミスを研究しようと思ったわけではありませんが,私には当てはまるようです。
学生さんにもよく話す逸話があります。まだ一人暮らしをしていた時,回覧板をアパートの隣の家に届けなければならないことがありました。忘れないようにしようと,玄関前の内開きのドアに立てかけて寝たのです。どかさなければ出かけられないので,忘れないだろうと思ったわけです。
しかし,次の日,私は見事に回覧板をどかし,玄関を開けて外に出ていました。でも鍵をかけた瞬間に,あっ!と気づいたのです。苦笑いをしながら鍵を開け,回覧板を小脇に挟んで,,,次に回覧板の存在に気づいたのは,職場に着いた時でした。助手席にちょこんと座っている回覧板を見つけて思わず笑ってしまいました。
人間はそういうことをする生き物なんです。だから心理学はやめられません。

11月の心理学コラム:科学に対する関心の男女差?その秘密?(担当:木野和代)

2019/11/12 >> 役に立つ!!心理学コラム

今年は1年次必修科目「心理学実践セミナー」で、1年生たちとジェンダー・ステレオタイプをテーマに研究してきました。現在、10日後に迫った「ココロサイコロ2019」での発表に向けて資料を作成しているところです。ちょうど河北新報のサタデーコラムWITH Ms.の執筆担当月だったので、このテーマに関する心理学の研究、子どものおもちゃ選びの実験を紹介しました(11月23日掲載予定)。これは私が生まれた頃の研究でしたが、ここでは学生たちが生まれた頃の研究を紹介します。
その研究は、子ども博物館の様々な展示の前でなされた8歳以下の子どもと親の会話を観察したものです。どんな会話や行動があったかをカウントしていくと、親からの科学的な考え方の説明の割合(特に因果関係)が、子どもの性別によって違っていました。女の子よりも男の子に対しての方が約3倍多かったのです。そしてこうした説明は子どもからの質問に答えて行われたというわけではありませんでした。この研究で特に注目されたのは、このような傾向が1歳から3歳までの子どもたちに対しても見られたことです。つまり、幼稚園や学校で学ぶ前から、男の子の方に対しての方が科学に関する関心を引き出すような働きかけが家庭でなされているのです。
このような固定観念に基づく親の行動が、古くからいくつもの研究によって明らかにされてきましたが、今の社会ではどのようでしょうか?

ココロサイコロでの発表ポスター(1枚目)

引用文献:
Crowley, K., Callanan, M. A., Tenenbaum, H. R., & Allen, E. (2001). Parents explain more often to boys than to girls during shared scientific thinking. Psychological Science,12, 258-261.

10月の心理学コラム:日本パーソナリティ心理学会(担当:友野隆成)

2019/10/10 >> 役に立つ!!心理学コラム

8月28日・29日の2日間,武蔵野美術大学で開催された日本パーソナリティ心理学会第28回大会に参加してきました。大会準備委員長が大学院時代の同期ということもあり,今回は準備委員として大会運営のお手伝いをしながらの参加となりました。

主な役割としては,大会本部に詰めて,不測の事態に対応するというものでした。前日の準備から初日の午前中にかけては,準備が不十分で確認が取れていない事項へのフォローをしたり,受付で参加者の手続きに関する対応をしたりするなど,バタバタする時間帯もありました。しかし,幸いなことに,会期中にそれ以上大きなトラブルもなく無事全行程を終了させることができました。自分の発表の時以外に他の発表の話をほとんど聴くことができませんでしたが,まずはお役目を終えてホッと一息でした。

因みに,今回の大会は大会準備委員長曰く「この学会が美術系大学で開催されるのは恐らく最初で最後」ということで,これまでの大会にはない美大らしい要素が色々と盛り込まれていました(具体的なことは,実践研修の参加報告の記事をご覧ください)。その要素を,ここで1点だけご紹介します。大会準備委員のメンバー紹介のチラシを作成したのですが,その際,武蔵野美術大学のスタッフさんに一人一人の似顔絵を描いていただきました。私は遠方からの参加のため,大学ホームページの写真から描いてもらったのですが,さすが美大!と思いました。絵心のない私には,到底マネできない能力だと感心しました。

以上,大会準備委員雑感でした。学会大会の“パーソナリティ”が垣間見られる,良い経験をさせていただきました。当方来年度に開催される日本健康心理学会第33回大会の準備委員も仰せつかっておりますので,今回の経験を活かしていきたいと思います。

友野の似顔絵の原画(描いていただいた武蔵野美術大学のスタッフさんに,掲載許可をいただきました。)

9月の心理学コラム:いろいろな選択肢の意味(担当:森康浩)

2019/9/25 >> 役に立つ!!心理学コラム

皆さん。ものを選択するときに何を基準に選択をしていますか。
パソコンを買おうとしているときに、以下のどの機種を選びますか?

●処理速度はあまり早くないが安価な価格帯のもの:9万円
●処理がとても早く、機能も充実しているもの:15万円
●15万円のものよりも少し機能面で優れていないが、ほとんど大差がないもの:12万円

予算が低い人は9万円のものを買うかもしれません。一番いいパソコンは買えないけど、同等の機能であればと思い、12万円が気になる人もいるかもしれません。
15万円のパソコンは高いので、あまり買う人がいませんが、もし15万円にパソコンを売らなくなるとどうなってしまうでしょう?一番高いパソコンが12万円になってしまい、比較して9万円のパソコンを選択する人が多くなると思います。どんどん視点が安い方に向いていきます。
一件、誰も手を延さなそうな商品でも、実は価格設定をあげる効果があるのです。

実はこのような商品の裏側には、「ナッジ」という意志決定の理論が隠されているのです。ナッジは、「複数の選択肢の中から、選択する人が合理的に考えて、主体的に選んでもらえるように選びやすい選択肢を用意して選択してもらう」ことを意味しています。

ものを選択しようとするときに、相対的に判断しようとする特徴が人にはあります。

日常的にものを相対的に判断していることがたくさんあるので、自分の行動を振り返ってみてください。
価格設定が高いところでは、普段は躊躇する価格のものを選択してしまっていませんか(映画館の飲み物、お祭りの食べ物などなど)?

もっと詳しく知りたい方は、オープンキャパスなどに足を運んでいただければと思います。
お待ちしています。

8月の心理学コラム (担当: 佐々木隆之)

2019/8/20 >> 役に立つ!!心理学コラム

音楽のイメージ

音楽のイメージといってもいろいろな種類があります.中でもあまり研究が行われていないのが,自発的想起イメージで,ある音楽が頭の中に繰り返し湧いてくるという現象です.誰でも経験していることなのですが,これを思いのままに作り出すことが難しいため,実験による研究ができないのです.頭の中に湧いて出てくるイメージは,聞いたことのある曲のこともあれば,断片的なメロディのこともあります.記憶システムが意識下で行っている処理が,なんらかの理由で意識にのぼってしまうために生じるものと解釈できますが,今のところ,詳細な研究はできていません.これに似た現象に回帰イメージがあります.同じメロディを繰り返し聞き続けた後で,そのメロディが勝手に頭に湧いてくる現象です.ゲームを長時間やった後,そのゲームの音楽が頭の中にこびりついて離れないということは経験したことがあるでしょう.この回帰イメージは,音楽だけでなく視覚イメージにも生じます.長時間,ゲームのテトリスで遊んだ後,ブロックが落ちてくるイメージが湧いてくることもよく知られています.回帰イメージは視聴覚間でそれほど大きな違いがないのですが,最初に紹介した自発的想起イメージは聴覚で顕著に生じるようです.
デジャヴもそうですが,明らかに心理学的な研究の対象である現象であっても,現在の心理学の研究法では扱いにくいテーマもあるのです.
もうすぐ夏休みも終わりますが,後期の授業が始まるとすぐに大学祭があります.今年は,10月19日(土)と20日(日)の2日間の予定です.心理行動科学科では,毎年「ココロミル」と題して,心理学を駆使した展示企画を行っています.大学祭の中では毎年1番の人気企画となっています.今年も学生の委員を中心に準備を進めていますので,ぜひご来場ください.

去年の大学祭の準備風景