Archive for the ‘役に立つ!!心理学コラム’ Category

12月の心理学コラム:オンライン募金(担当:友野隆成)

2020/12/15 >> 役に立つ!!心理学コラム

前回のコラムでは,オンライン学会の話を取り上げましたが,今回もオンライン関連の話です。

私が担当する実践セミナーの授業では,例年大学祭で東日本大震災の義援金募集活動を実際に行いながらデータ収集をしておりましたが,今年は新型コロナウイルス禍の影響でそれもままならない状況となっていました。そこで,受講生の皆さんとどうするか検討した結果,今回は「オンライン募金」に挑戦することに決定しました(ちなみに,「オンライン募金」を行うことを決めたのも,Zoomを用いた「オンライン授業」でのやり取りの中ででした。今年は多方面でオンライン色の強い1年となりました)。

前期中に「オンライン授業」で今年度どのようにしていくのかを検討した結果,東日本大震災の義援金に加えて,新型コロナウイルス禍で困難な状況に立たされている医療従事者やライブハウス支援のための募金活動を,オンライン募金サイトを用いて行うことにしました(その他,学内の一角で不要になった衣服を支援物資として非対面で収集し,発展途上国などに寄付するという活動も併せて行いました)。10月下旬から約3週間のオンライン募金活動でしたが,これまで行ってきた対面での募金活動とは勝手が異なり,顔の見えない状況で中々思ったように募金を集めることができませんでした。しかし,人数は少なかったものの全国各地からたくさん寄付していただけました。

我々の活動にご賛同いただき,寄付してくださった全ての方々にこの場を借りて厚くお礼申し上げます。来年度はどうなるかわかりませんが,今回の経験を今後に繋げていきたいと考えております。

オンライン募金サイトで作成した画面

11月の心理学コラム:新型コロナウイルスCOVID-19とヒューマンエラー(担当:大橋智樹)

2020/11/27 >> 役に立つ!!心理学コラム

この1年、世界を支配したCOVID-19は、私の専門であるは産業におけるヒューマンエラーの防止ととてもよく似ています。今回は、そのお話をしましょう。
両者がよく似ているのは、「何もしなければ起こらない/かからない」という“完璧な対策がある”という点です。ヒューマンエラーは何らかの業務や作業があって初めて発生するので、現場が止まっていれば基本的には起こりません。COVID-19への感染も、一人家にじっと閉じこもって人との接触を避けていればかかりません。
でも、ヒューマンエラーを起こしたくないからと現場を止めていたら、そこには何も生まれません。もちろんお金も入ってきません。COVID-19への感染を恐れて家に閉じこもっていても同じです。人とのコミュニケーションや、現地に自分で足を運ぶことによって生まれるリモートでは得難い貴重な経験はできません。ですから、“完璧な対策”は選択肢になり得ないので、どちらも一定のリスクを受け入れながら活動していくという選択肢しか残らないのです。

実はこのような、アクセルとブレーキを同時に踏むようなことは、ヒューマンエラーや感染症以外でも起こっています。たとえば、車や列車、飛行機を利用することも一定の事故のリスクを受け入れることですし、進学や結婚といった人生の選択でも同じです。社会にも人生にも、あらゆる人間の活動にリスクはつきものなのです。
大学は、そういった問題をきちんと捉えて、後悔の少ない選択ができるようになるための力を身につける場です。文系学問に位置づけられながら理系的要素を多分にもつ心理学は、そういった力を身につけるためにうってつけな学問だと思います。ぜひ、一緒に心理学を学びましょう!

10月の心理学コラム:理論と経験のミスマッチから学問は進む!?(担当:木野和代)

2020/10/10 >> 役に立つ!!心理学コラム

以前とりあげた「認知的不協和理論」では,「人気のタピオカのお店で長時間行列に並ぶことになったけれど,待った甲斐あって美味しくて満足だった,また行きたい」ということが起こります。しかし,理論ではうまく説明できないケースがあるようです。

濱(1991)は,経験に照らし合わせてみると,その商品の品質が劣悪だったときは満足(しようと)しないのではないか,という考えから,それを確かめる実験を行いました。それは,大学祭の模擬店(たこ焼きの屋台)でのフィールド実験でした。
コスト(待ち時間が長いか短いかの2パターン)と商品の品質(食材などの質が高いか低いかの2パターン)を組み合わせた4つの条件を設定し,条件間でお客さんのおいしさの評価を比較したのです。
結果はというと,高コスト(長時間待ち)の場合には,低品質のたこ焼きが提供されるとおいしさの評価が低くなる傾向にありました。つまり,経験からの予測どおり,品質の低い商品に対しては認知的不協和理論が適用できないことが示されたというわけです。

学科実習室の各種学会論文集コーナー

これは,日本心理学会の研究大会で報告された研究で,以前ゼミの学生さんが,学科の実習室にある資料から見つけて,授業で紹介してくれたものです。授業では,学んだ心理学の理論を,身の回りの様々な出来事にあてはめて考えてみてもらいます。皆さんも座学で理論を学んだら,経験と照らし合わせて検討してみてください。面白い研究に発展することがあるかもしれませんよ。

文献:濱 保久 (1991). 待てば待つほど美味しくなるのか?―大学祭模擬店における認知的不協和理論の検証― 日本心理学会第55回大会発表論文集, p.680.

9月の心理コラム (担当: 佐々木 隆之)

2020/9/25 >> 役に立つ!!心理学コラム

音楽の聞き方
音楽を聞くといっても,初めて聞く音楽と繰り返し聞く音楽とでは,認知処理に大きな違いがあります.知っている曲を繰り返し聞くときの聞き方は,「再認」と呼ばれます.頭の中に記憶している音楽と,聞こえてくる音楽を照合するのが「再認」です.配信音源では,聞こえてくる音は常に記憶内容と同じです.音楽はいつも期待通りに進行し,期待が裏切られることはありません.一方,初めて聞く音楽は,比較する記憶が頭の中にはないので,まったく新しいものとして知覚認知の処理が行われます.そこでは,聞いている人の持っている音楽の知識や経験によって,いろいろなレベルの予測が働きます.次に何が起こるかワクワクしながら聞く人も多いでしょう.そこでは,期待通りだから面白いと感じたり,期待を超えたから面白いと感じたり,いろいろな要因が複雑に働いています.初めて聞く音楽の知覚認知処理と感じ方の関係については,わかっていないことが多く,これからいろいろな角度から研究する余地があります.
大学は半年遅れの入学式を行い,対面授業を開始しました.通常の形態に戻っただけなのに,とても新鮮な感じがします.いろいろな制約はありますが,徐々に本来の大学の姿に戻ることを願っています.

マスクの顔が並んだ授業風景

8月の心理学コラム:実はすごい文房具!! (担当: 森 康浩)

2020/8/26 >> 役に立つ!!心理学コラム

世の中にはさまざまな文房具があります。
皆さんはどのような文房具が好きで、愛用していますか。

文房具は文字を書いたり、事務作業をしたりするために用いますが、
人にお願いをするときに効果を発揮する文房具があるのです。
何だと思いますか?

それは「付箋」です
どういう風に使うか想像できますか?

付箋の効果を検証した実験があるのです。
調査に関するアンケートの依頼をする際に、①アンケートに付箋をつけてメッセージを書く、②アンケート自体に手書きのメッセージが書かれている、③アンケートだけを渡すという3つの条件を設定しました。

アンケートの返送率を測定しました。
その結果、①の条件では、75%以上の人が返送してきました(Garner, 2005)。
この背景には、「返報性」というものがあると説明されています。
返報性とは、恩を受けたら、それに報いなければならないという人の傾向です。
誰かに誕生日プレゼントをもらったら、相手の誕生日にはプレゼントあげなきゃなと思いませんか?

つまり、人にお願い事をしようとするときに、ただ単にそのものだけを渡すのではなく、渡すものに付箋をつけて、皆さんの言葉で依頼することに一言添えると相手が応じやすくなります。

試してみて下さい。