5月の心理学コラム(担当:大橋智樹)

2011/5/10 >> 役に立つ!!心理学コラム

大震災を経験して

あの日、私は福島県の浜通りにいました。原子力発電所の保修作業をおこなう会社の安全大会で講演をするためです。14:20に常磐線富岡駅で降り、迎えの車で会場に移動して控室に入ったところでした。講演は14:50から開始する予定でした。
そろそろ講演会場に移動しようかと思った時、震度6強の揺れが襲ってきました。長くて、激しくて、そしてひたすら長い、そんな揺れでした。富岡駅は私が降りた1時間後に津波にのまれ、次の列車は少し手前の駅でぐにゃりと折れ曲がりました。まさに九死に一生を得る、そういうタイミングでの被災でした。

その後、今日までずっと、いろんな事を考えさせられてきました。中でも、研究者として築き上げてきた考え方や生き方を、根こそぎさらわれたかのような喪失感との戦いはなかなか壮絶でした。もちろん、3ヶ月が経とうとしている今でも、それらを取り戻すには至っていません。まだまだ戦いは続きそうです。
しかし、研究者にとって最も大切なことは、物事をどれだけ多面的にとらえられるか、だ。私はそう考えていますから、つちかったものを失うつらさよりも、これを機に新たに何かが自分の中に芽生えることに期待しています。

東北の地が、いつの日にか、新たな芽吹きとともに震災からの復興を遂げますことを。大学も、学科も、そして私たち教員も、被災地域の一員としての責務を果たしていきます。

※大橋先生の個人サイトはこちら
※大橋先生の教員リレーエッセイはこちら

Leave a Reply

XHTML: You can use these tags: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>