Archive for the ‘役に立つ!!心理学コラム’ Category
4月の心理学コラム 教員&運転生活の始まりの中に見える心理 (担当:油尾聡子)
2013/4/15 >> 役に立つ!!心理学コラム
この4月から心理行動科学科に着任しました油尾 聡子(ゆお さとこ)と申します。出身は福井で,学部と大学院を名古屋で過ごした後にこちらに参りました。そしてそれを機に車通勤を開始しました。ゴールドペーパードライバーという華々しい経歴を引っ提げて,です。
運転を始めてみると,運転中は常に他者の心を読まなければならないことがわかりました。路上駐車中の車があれば,それを避ける車が車線変更してくるから注意しなければならない,などです。
ではそんなとき,人はどのように他者の心を推論しているのでしょうか?私たちには,他者の動きを見たときと自分が動いているときとで同じように活性化する脳の部位「ミラーニューロン」が存在します。私たちはミラーニューロンでまずは他者になりきり,シミュレーションをします。そのシミュレーション結果に基づき,他者の動きと切り離して自分の行動を選択します。つまり,私たちは脳で自動的に他者を自分に置き換え,自分を基準に物事を瞬時に判断する便利な機能を持っているわけです。
私が慣れない運転でも無事に大学に来れたのは,私も周囲の運転手も,ミラーニューロンをフル稼働させたおかげかもしれません。
3月の心理学コラム 映画の話し『シックス・センス』(担当:大橋智樹)
2013/3/10 >> 役に立つ!!心理学コラム
『シックス・センス』は、ハリウッドの大スター、ブルース・ウィリスと天才子役ハーレイ・ジョエル・オスメントの共演作で、心理学の名作です。ブルースはマルコムという児童心理学者child psychologistを演じますが、児童心理学者が登場するから心理学の名作だというわけではありません。心理学、特に、臨床心理学(あるいは精神医学)が抱える「正常とはなにか、異常とはなにか」という大きなテーマに挑んだ作品だからです。
ハーレイ演じるコールは幽霊dead peopleを見ることができ、幽霊と会話をすることができる少年です。臨床心理学的には“異常”者です。マルコムはコールを“正常”にしようと治療しますが、しかし、コールは“本当に”その能力を持っているのです。映画は、コールが幽霊を救っていく様子を描くことで、彼が“正常に”“異常”であることを証明していきます。そして、決定的な証明はマルコム自身がすることになります。おっと、ブルースと私の個人的な約束がありますので(映画を観た人なら分かります)、これ以上は言えません(^_-)-☆ 映画を観て、正常・異常の難しさについて考えてみてください。
なお、この映画の原題はThe Sixth Sense。直訳すれば六番目の感覚。すなわち、第六感。日本語でも英語でも、五感は普通の能力で、それを超える能力を第六感と表現する共通点も興味深いですね。
2月の心理学コラム(担当:佐々木隆之)
2013/2/23 >> 役に立つ!!心理学コラム
リズムの話(2)
リズムの話(1)を書いたのは大分前になりますが,そのとき,日本人は3拍子が苦手だということを書きました.古くから日本にある八分の六拍子の音楽として「阿波踊り」がありますが,その「チャンカチャンカ」というリズムはジャズなどの「スウィング」と比較されることがあります.「阿波踊り」と「スウィング」の決定的な違いは,そのアクセントの位置にあります.「阿波踊り」は拍の表,つまり「チャンカチャンカ」の「チャ」の場所にアクセントがあり,「スウィング」では拍の裏,つまり「チャンカチャンカ」の「カ」の場所にあります.スウィングとそっくりのリズムは,沖縄の音楽に見られます.「カチャーシー」の掛け声は,「イーヤサッサ」とか「アイーヤ」などですが,この「イーヤ」というのがスウィング感をだすために最適なのです.歌ってみるとわかりますが,「イ」はあごが閉じ,「ヤ」はあごが大きく開きます.そのため,自然に「ヤ」の場所にアクセントがつくので,スウィングのノリとなるのです.阿波踊りは海流に乗って琉球から伝来したという主張がありますが,このノリの違いは単なる変形の範囲を大きく超えているように思えます.阿波踊りとカチャーシーのノリの違いは,手の動きにも表れています.興味のある人は比べてみてください.
写真は,本文とは全く関係ありませんが,学生たちと作ってみた錯視パターンです.一番上の左から2番目の「I」と一番下の右から2番目の「I」を比べてみると,上の方が明るく見えますが,実は全く同じ色です.
1月の心理学コラム(担当:工藤敏巳)
2013/1/30 >> 役に立つ!!心理学コラム
今年もよろしくお願いいたします。
悩んでいる人に接していると、「時間が解決してくれるよ」とか「時が経てば忘れるよ」と慰めの言葉をかけたくなります。これをグラフで表すと横軸が時間軸、縦軸が悩み(程度や重要度)にでもなるのでしょうか。数式だと、yt= f(t,e)と表すことができます。tが時間、eは事態、f(t,e)は人のパーソナリティや価値観、ytはt時点の悩みとなります。「時が経てば忘れるよ」というのは右下がりのグラフで「時間が経てば、その悩みは自然に消失するよ」ってことでしょうか。
実際のところ、ある時点において本人にとっては重要な悩みであったかも知れないが、取り巻く環境が変わったり自身の価値観や考え方が変わったりしたことにより悩みが問題視されなくなってしまったことを言い表しているのだと思います。逆に悩みが増幅することがあるかもしれません。価値観や考え方が変わる、いわゆる自己成長に伴って悩みが悩みでなくなったり悩みが大きくなったりもする、悩んで成長していきます。数式で表すと f(t+1,e) = a * f(t,e) となるのでしょうか。
こうした表現方法を工学系の領域ではリターンマップと呼んでいます。近年、心理学でもこうした手法(ダイナミカルシステムアプローチ)を用いて研究が進めらるようになってきました。
面白そうなので、私が関わっている競技のゲーム分析で挑戦してみました。競技場の俯瞰図に相手が打球・投げた・蹴ったボールの落下位置を時系列的に表現し相手チームの戦術分析を行なうことはどの競技でも日常的に行なっています。しかし、こうした表現方法では直感的に理解しにくく右往左往しておりましたが、リターンマップで表現すると、実に今まで見えなかったものがよく見えてきます。
12月の心理学コラム-学生と教員の協働による実践的心理学研究(担当:友野隆成)
2012/12/11 >> 役に立つ!!心理学コラム
ココロサイコロの話が続いて恐縮ですが、宜しくお付き合いください。今年度私が担当した班では、昨年度に引き続き義援金を寄付する心理について、簡便な実験や調査を実施して検証しました。今回は、(1)義援金募集活動者の衣装の違いで募金額が変わるのか、(2)被災前の写真と被災後の写真を提示した場合、どちらの条件の募金額が多いのか、(3)パペットを用いた場合と普通の募金箱を用いた場合、また、透明の募金箱と不透明な募金箱ではそれぞれどちらの条件の募金額が多いのかについて、大学祭で実際に募金活動をしながらデータを測定しました。
これらの実験条件は、受講生の皆さんがあらかじめ3つのグループに分かれ、それぞれのグループのメンバー同士の話し合いによって考えられたものです。そこに、私の方でほんの少しだけ心理学の研究方法のエッセンスを加えてあります。よくよく考えてみると、私一人だけでは今回実施されたようなアイデアを考え付くことはできませんし、受講生の皆さんだけでも、心理学的な方法論の要素が不足してしまいます。ちなみに、心理行動科学科は今年度「学生と教員の協働による実践的心理学研究」というテーマで「教育推進研究費」という学内研究費をいただいておりますが、我々はこのテーマの趣旨に合った、まさに協働によって生み出された実践的な研究を行っていると申せましょう。
なお、直前のご案内になってしまいますが、今月15日(土)・16日(日)に、山形駅近くの霞城セントラル1階アトリウムにおきまして、「miniココロサイコロin山形」が開催されます。ここでも、昨年度に学生と教員の協働によって生み出された研究が展示されますので、是非ご来場ください!