Archive for the ‘役に立つ!!心理学コラム’ Category
7月の心理学コラム 「現場部」始動!(担当:大橋智樹)
2014/9/20 >> 役に立つ!!心理学コラム, 現場部
心理行動科学科のモットーは、「心理学は、机の上では学べない」です。これは、心理学を学ぶ際には、学問と社会とのつながりを意識しながら学ぶことが大事だと考えている現れです。
心理行動科学科には、そのための実践的なカリキュラムがたくさんあります。2年次以降に開講される「心理行動実践研修」という授業もその一つで、心理学と社会をつなげる学びを応援しています。「現場部」は心理行動実践研修の一環として企画されました。
もともとは、現4年生のKMさんたちが、「先生~、どっか工場とか見学に行くサークルとか作っちゃダメですか~?」と言ってきたことがきっかけでした。 それを実現したのが「現場部」です。工場に限らず、とにかく「現場」を見て、そこから心理学的な学びを導こうという企画です。
1回目は、女子少年院と少年鑑別所を見学しました。非行少年たちの心に寄り添って、社会復帰後にまた再び非行や犯罪の道に踏み入れることなく、まっとうに生活していくため手助けをするための施設です。単に悪いことをした若者を懲らしめるのではなく、それぞれの事情に配慮した丁寧な対応に、学生たちは驚いていました。
2回目は、マリンピア松島水族館に行きました。来年5月10日に閉館を予定しているこの水族館で、水族館経営の特徴や、東日本大震災をどう乗り越えたか、お客さんの安全を守るために何をしているか、などの話を伺いました。仙台港に新たにオープンする仙台水族館(仮称)の展示と飼育に、松島水族館の方たちが関わっていくことを聞いて、新しい水族館への期待も膨らみました。
「百聞は一見にしかず」と言います。教員の役割は、“百聞”の機会をどれだけ多く作れるかだと私は考えています。これからも多くの現場を学生さんたちと一緒に訪れたいと思います。
6月の心理学コラム どうしたら頭がよくなりますか?(担当:木野和代)
2014/6/9 >> 役に立つ!!心理学コラム
もう10数年前のこと。ある大学での講義終了後,5人の女子学生が駆け寄ってきました。
「先生,質問があるんですけど・・・」他の4人が見守る中,一人が切り出しました。
「どうしたら頭がよくなりますか?」
まじめな学生さんのように見えます。
週に一度講義で会うだけの私に,なぜそのような質問をしてきたのか分かりませんが,かなり真剣な表情です。
さて,どう答えよう・・・。
“頭がよく”なりたいと思っていて,きっと自分なりのなんらかの努力をしてきたんじゃないかな? でも手応えがないのかな?
「“頭がいい”ってどういうこと?」私は,逆に彼女にたずねました。
“頭がいい”というのは具体的にどのような状態を求めているのか確認しようと思ったのです。
暗算が速いことかもしれませんし,記憶力がいいことかもしれません。ひょっとしたら,世渡り上手なことかもしれません。これらを総合したものということもあります。
しばらく考えた後,彼女からはこんな答えが返ってきました;「本をたくさん読めることです」。
この瞬間,私の答えもはっきりしました;「じゃあ,本を読もう!」と。
相手の表情が急に和らいだように思いました。そんな単純なことで?と思われるかもしれませんが,きっと具体的な目標ができたのでしょう。
この話,実は先日の『心理学研究法』という授業の中で紹介したエピソードです。私が彼女に返した質問は,
心理学の研究をするときには,まず考えなければならない問題なのです。目に見えない心(のはたらき)を研究するために,研究しようとしているモノが何かを説明するのです(定義)。そして,それを目に見える形に表して(行動として測定),研究データとして扱うのです。(エピソードになぞらえれば,自分が研究したい“頭のよさ”とは本をたくさん読めることだと定義し,読んだ本の量を測定する)
さて,彼女はその後元気にしているかな?
ちょうど今月のコラムの内容を決めようとしていたとき,この春卒業した4人が2ヶ月ぶりに大学を訪ねてくれました。それぞれの仕事ぶりを頼もしく思うと同時に,いろいろな職場の話を聞けて私の視野も少し広がったような。それで今月はこのトピックに決めました。様々な組織・社会のことを知る,これも“アタマガヨク”なる一歩かもしれません。・・・いずれにせよ,思いがけず楽しいひととき!つい長話してしまいました。ありがとう!
5月の心理学コラム 「なんとかする」と「なんとかなる」(担当:友野隆成)
2014/5/15 >> 役に立つ!!心理学コラム
ゴールデンウィークに,所用で京都へ行ってきました。移動中に少し時間がありましたので,たまたま通りがかった町屋を改装したギャラリーにふらっと立ち寄ってみました(京都には,改装してギャラリーやカフェや宿泊施設などになっている町屋が結構あります)。そこには,さまざまなフレーズと一緒に描かれた猫の絵が展示してありました。その中に,次のような絵がありました。
この絵に書かれている「なんとかなる」というフレーズ,実はここで初めてみたものではありません。私が大学院生だった頃,先輩や後輩と一緒に兵庫の城崎温泉に行った帰りに立ち寄った皿そば屋で思わず買ってしまったお皿にも,同じフレーズが書いてあったのです(以下の写真参照)。
因みに,私が博士論文を執筆していて煮詰まった際,提出期限までに完成させることができるのか不安になった時にこの皿を見て,「なんとかなる」と自分に言い聞かせながら執筆を進めました。その結果,本当になんとかなりました(結局完成したのは,提出期限当日の朝でしたが…)!
この「なんとかなる」という言葉,心理学では「楽観性」という概念で説明可能です。「楽観性」の高い人はそうでない人に比べて,心身ともに健康で仕事もうまくいくことなどが示されていますが,「なんとかなる」と思いながらも実際には「なんとかする」という意気込みで,目前の課題に真摯に取り組んでいるのかもしれません。先ほどの猫も,何もせずに「なんとかなる」と思ってぐうたらしているのではなく,ドリンク剤を飲んで栄養補給し,これから「なんとかする」ために鋭気を養っているのかもしれませんよ。
(実は,このコラムも中々筆が進まず,おまけに画像の挿入が中々うまくいかなかったのですが,「なんとかなる」と自分に言い聞かせてなんとかしたのはナイショです)
4月の心理学コラム 猫になりたい(担当:友野聡子)
2014/4/7 >> 役に立つ!!心理学コラム
私事ではございますが、結婚により油尾から友野に姓が変わりました。今後は友野聡子として教育・研究活動に励みます。そのあたりの心理学的な話はまた後日にできれば幸いです。
さて、以前のコラムに引き続き、今回も猫の話をします。
猫好きな方は、一度は「猫になりたい」と思った瞬間があるのではないでしょうか。かく言う私も、何度、猫になりたいと思ったかわかりません。猫になって一日中ひなたぼっこをし、寝て起きてごはんを食べてまた寝て、ときどき出かけて野に咲く花の香りをかぎ、あくせく働く人間を見て「あー猫になって良かった」と思うのです。
しかし、もしこの妄想が現実になったらどうなるでしょうか。おそらく、どこかで物足りなさを感じ、人間に戻って少しでも刺激ある生活を送りたくなるはずです。このことは、心理学の有名な実験「感覚遮断実験」からも示唆されています(詳細は大橋先生のコラムをご参照ください)。人間は刺激を求める生き物なのです。
さらに言うと、人間は他人と比較をする生き物なのです。他者との比較を「社会的比較」と言います。この写真を見てください。とあるお店で見つけた色紙です。
この色紙を見ていると、他人(&他猫、他犬etc…)と比較をすることがにゃんともなんとも滑稽に思えてしまいます。
人生の中で辛い瞬間はいくらでもあり、猫になりたいと思うことはたくさんあるでしょう。しかし、猫の生活が刺激のない生活だとすればそれは苦しいでしょうし、他人と比較して良いところをうらやむばかりで自分が成長できずにいるのはもったいないことでしょう。他人の芝の青さも認めつつ、「これだけ刺激ある生活が送れるなんて幸運だ」と、自分の芝も青く思えるようになりたいものですね。
3月の心理学コラム スノボと音楽(担当:佐々木隆之)
2014/3/24 >> 役に立つ!!心理学コラム
早いもので,ソチオリンピックが終わって1ヵ月が経ちました.仙台出身の羽生結弦君の金メダルには感動しましたし,浅田真央さんのフリーの演技にも感動以上の感銘を受けました.フィギュアスケートの場合,どのような音楽を選ぶかというのも演技に大きな影響を及ぼしています.演技の最中だけでなく,高橋大輔選手のように,使用音楽が巷の話題になることもありました.
ソチオリンピックを見ていて気になったのが,スノーボード競技です.ハープパイプで平野君と平岡君がメダルを獲り,スロープスタイルでも角野君が入賞するなど,大健闘でした.4年前のバンクーバーオリンピックを思い出すと,ハーフパイプのショーンホワイトは大音量の音楽をバックに演技をしていました.Xゲームでも,会場にはDJがいて,ヒップホップやレゲエを流しています.音楽と観衆の歓声が一緒になって盛り上がり,その雰囲気が選手を後押ししています.音楽を含めた全体の雰囲気が,新しいスポーツとしての印象を形作っています.ところが,今年のソチでは,会場の音楽はよく聞こえず,選手はイヤフォンをして演技をしていたようなのです.会場に準備されていなかったのだとしたら,選手はかなり違う雰囲気の中で演技をしなければならず,相当な影響を受けたに違いありません.どのような影響があるかは,心理学的に研究すべき対象となります.
それだけではなく,一般のボーダーがゲレンデで真似をしてイヤフォンで音楽を聞きながら滑るのは大変危険だし,大音量で聞くのはヘッドフォン難聴の原因にもなるので,真似をしないように注意してほしいものです.
ところで,先週は大学の卒業式でした.私のゼミの学生の皆さんもめでたく卒業することができました.ゼミ生の大宮木綿子さんは卒業生代表として答辞を読み,ゼミ生の小沢奈々さんは学科の代表として学位記を受け取りました.皆さんとても立派でした.社会での活躍を祈っています.