Archive for the ‘役に立つ!!心理学コラム’ Category
10月の心理学コラム まちなみに隠された心理(担当:友野聡子)
2015/10/19 >> 役に立つ!!心理学コラム
日本のまちなみには統一感がないな、と思ったことはないでしょうか。広い庭付きの一軒家が並ぶアメリカの住宅街と比べると、日本の住宅街の統一感は低いように思います。
アメリカは流動的な国です。人々は、個人の目標を達成するために移動を好みます。とはいえ、移動した先で全く文化が異なるとストレスです。そうしたストレス軽減のために、似通った建物を作りたくなると考えられています(Oishi et al., 2012)。社会の流動性によって人々の心もまちなみも変化するというわけです。
私は、現在、そうした社会の流動性によって、まちなかの“貼り紙”に使用されやすい文言(「駐車禁止」や「立入ご遠慮ください」など)も異なるのではないか、ということを研究しています。そして、本学科1年生のうち20名の心強い学生たちが、この研究に一緒に取り組んでくれています。「まちなみ調査」と名付け、流動性の異なる2つの地域で貼り紙を記録し、各地域での特徴を分析しています。この成果は、11月23日(月・祝)に、仙台駅AER2階アトリウムで開催される研究成果発表「ココロサイコロ2015」で発表します(昨年の様子はこちら)。また、私自身も、この成果を学会で発表しています。
私の着眼点は、流動性による貼り紙の文言の違いだけだったのですが、学生たちは、色やイラストの使い方、手作り感の有無など、さまざまなところに着目し、興味深い結果を得ています。人の心がどのように貼り紙に表れてまちなみを変えるのか、迷惑な行いをする人に対してどのような場所でどのような貼り紙を使ったらよいか、といった問題解決のヒントが得られると思います。11月23日、AER2階にぜひ足をお運びください!
▲まちなみ調査班のみなさんとの1枚です(予定が合わず、数名の欠席者がいますが…)。この日は、ある地域に貸切バスで出かけ、貼り紙をひたすら記録しました。帰りのバスでは、みなさんお疲れで静かでしたね…。
引用文献
Oishi, S., Miao, F. F., Koo, M., Kisling, J., & Ratliff, K. A. (2012). Residential mobility breeds familiarity seeking. Journal of Personality and Social Psychology, 102, 149-162.
9月の心理学コラム(担当:佐々木隆之)
2015/9/7 >> 役に立つ!!心理学コラム
「技を盗め」の話
教わるのではなく盗むのが技の伝承となっていることが少なくありません.これは,教えるのがいやだったり,もったいぶったりしているかのようにとらえられることがありますが,そうとばかりは言えません.実は,コツというのは,言葉に表せないものが多いのです.例えば,自転車の乗り方をことばや文章で表すのがとても難しいということは,想像してみればすぐにわかります.
このコツというのは,心理学的には,手続き的記憶と呼ばれるものの一つです.私たちの記憶には,知識や出来事だけでなく,コツのような「やり方」の記憶も含まれているのです.
スポーツや芸術の分野で天才と呼ばれる人たちの多くは,教えるのがうまくないと言われます.最初からできてしまったので,どのようにしたらうまくいくのかということについて考えたことがないからです.天才はよい教師にはなれないのです.
夏休みが終わって秋が来ると,大学祭の季節です.今年も来場される方々に楽しんでもらえるよう,心理行動科学会の学生たちが準備に取り組んでいます(写真).10月17日(土)と18日(日)の両日ですので,ぜひご来場ください.
8月の心理学コラム:人とPCとの接点(3)(担当:工藤敏巳)
2015/8/8 >> 役に立つ!!心理学コラム
Windows 10が正式リリースされ、子どもたちが映し出されたCM動画も観た方もいることでしょう。パスワードを入力せず顔認証してくれるテクノロジーには興味をもってしまいますね。一卵性双生児をも見分けることができるなんて素晴らしいです(http://gigazine.net/news/20150821-windows-hello-identical-twins/)。
実は、よくPCに装備されているWebカメラで顔認証を行なってくれるのかと勘違いしておりましたが、よくよく調べてみると、RealSense 3Dカメラが搭載されていなければ認証してくれないのですね。RealSense 3Dカメラの搭載されているパソコンはまだほとんどありません。20機種もないくらいだと思います。非常に認証の精度も高く、そのスピードも速いようなので、もっともっと普及してもらいたいものです。
また、このカメラは、赤外線センサーも装備されていて、顔の識別だけでなく表情の特定や心拍数なども計測できるので、多方面に渡って活躍できるでしょう。例えば、テレビにつければ映画鑑賞時の視聴者の感情反応を取得したり、スポーツ鑑賞時の興奮度を計測するなんてことも近いうちにできるようになるでしょう。
7月の心理学コラム:映画の話し『塔の上のラプンツェル』2(担当:大橋智樹)
2015/7/6 >> 役に立つ!!心理学コラム
1月のコラムで、塔の上のラプンツェルの話をしました。その中で「CGの描写も心理学的に素晴らしいのですが、これはまた別の機会に」と書きましたが、忘れないうちにここでお伝えしておきましょう。
ディズニーの映画が人気の高い理由の一つに、私は人物の描写のリアルさがあると思っています。いや、写実的だ(写真と見まごうように描かれている)と言っているわけではありません。目の動きの描写が素晴らしいのです。
この2枚の写真を見比べて下さい。このシーンを見ただけでどのシーンか当てられたらすごいでしょうね。マキシマスというこの馬が何を見ているか、わかりますか?
そう、プリンス役のフリンを捕まえようとするマキシマスをラプンツェルがなだめているシーンです。マキシマスはラプンツェルの頭の上にのっているカメレオンのパスカルを見て、そして視線をラプンツェルに移します。それが、上の写真の左から右なんです。
写真で見てもほとんど分からないほんのわずかな動きを丁寧に描くことで、マキシマスが何をしたか、何を考えているかが、私たちに伝わってくるんですね。
目は口ほどにものを言う、と言いますが、ディズニーの映画制作スタッフはそれをよく分かっているのかも知れません。
最後に動きが見えるGIFファイルをご覧ください。ね、上から下へ視線が移っているのが分かるでしょ。
6月の心理学コラム:広告と感情の心理学(担当:木野和代)
2015/6/18 >> 役に立つ!!心理学コラム
本学科のキャリアサポートプログラム(Pナビ!)を紹介するリーフレットが完成しました!
制作スタッフに名乗りをあげたのは,就活真っ只中の4年生4人! 広告業者の方との1か月半に及ぶ協働作業でした。
制作は,方向性を決めるところから。さすがは4年生!それぞれ案を持ち寄っての企画会議は白熱!
そうこうして最終的に決まった制作イメージは「明るく,ふんわり」でした。「就活はつらくて嫌なもの」という印象にならないように,という4人に共通の思いです。
さて,この制作イメージ。実は,これまで学んできた心理学の知識が見事に応用された提案でした。
ある心理学の研究結果からは,伝えたいメッセージをしっかり吟味してもらうためには,深刻なテーマの広告の場合でも,快感情を引き起こすビジュアルを使った方が効果的ではないか,ということが提案されているのです(田中,2004)。
出来上がりは画像の通り。 ・・・どんな印象ですか?
真剣に向き合うべき卒業後の将来のことは,学生たちにとっては深刻な問題ともいえるものでしょう。これに対するサポートプログラムを,かわいらしいウサギのキャラクターが案内しています。だから内容も自ずと・・・!?
教室で学んだ心理学を社会で応用してみる「心理行動実践研修」(選択科目)の一環で取り組んだ制作プロジェクト。
参加した4人の活動ぶりには,進路選択に不安を抱える学科の後輩,そしてこれから大学進学を考える高校生の皆さんに,自分たちが受けているサポートの良さを伝えたい気持ちがあふれていました。完成品,どうぞお手に取ってみてください!