Archive for the ‘役に立つ!!心理学コラム’ Category

11月の心理学コラム「温かい飲み物の効果」(担当:木野和代)

2017/11/19 >> 役に立つ!!心理学コラム

急に寒くなりました。仙台でも本日初雪を観測! 温かい飲み物がうれしいですね。

私は自動販売機で温かい飲み物を買うと、とりあえずカイロ代わりに握ってあたたまります。
皆さんは、どうでしょうか?

ところで、この温かい飲み物、自分の手や体を温める以外に、意外な効果を持っているようです。何でしょうか?? WilliamsとBargh(2008)の研究結果を見てみましょう。

Williamsらは、温かいコーヒーを渡された場合と、冷たいコーヒーを渡された場合で、渡した人物への印象評価が異なるのかを調べました。その結果、温かいコーヒーを渡された場合に、その人物を「あたたかい」と評価しやすかったことを報告しています。そして、このような評価は無意識のうちなされているというのです。

これは「身体化認知 (embodied cognition)」といわれる現象の一つで、私たちの身体感覚が認知情報処理にも影響することを示しています。

ちなみに、WilliamsとBargh(2008)は、さらにもう一つ実験結果を報告しています。温かいという身体感覚が、人物評価のみならず、他者への行動についても、あたたかい方向に影響するというものです。しかし、その後のLynottら(2014)の報告では、このような効果はないとされています。さて、私たちの身体感覚は、どこまで、どのように私たちの日々の認知・行動に影響するのでしょうか? 研究してみませんか?

学内の売店のドリンクケース:「あったか~い」のがそろってます


引用文献:
Williams, L. E., & Bargh, J. A. (2008). Experiencing physicalwarmth promotes interpersonal warmth. Science, vol.322, pp.606-607.
Lynott, D. et al. (2014). Replication of ‘‘Experiencing Physical Warmth Promotes Interpersonal Warmth’’ by Williams and Bargh (2008). Social Psychology, vol.45, pp.216-222.

10月の心理学コラム 「偶然の重なり」 (担当:友野隆成)

2017/10/13 >> 役に立つ!!心理学コラム

今年の2月に「あいまいさへの非寛容と精神的健康の心理学」というタイトルの本を出版しました。10年以上前に提出した博士論文が元になっている本ですので,今さら感は否めないのですが,友人の研究者から勧められて首尾よく出版までこぎつけることができました。

拙著の出版と前後して,私の大学・大学院時代の恩師が他界しました。残念ながら直接謹呈することはできませんでしたが,このタイミングで出版されたというのも,もっと頑張れという恩師からのメッセージなのかもしれません。

また,9月20~22日に久留米で開催された日本心理学会に参加してきたのですが,出版社のブースで拙著が売られていました。それだけなら特に驚くような話ではないのですが,たまたま同時期に出版していた友人の研究者(前出の出版を勧めてくれた友人とは違う人です。実は,私含め3人とも同い年です。)の本と隣同士で配置されていたのです。

さらに,お世話になっている出版社の方とそのことで立ち話している時に,目の前で偶然拙著をお買い求めいただく方がいらして,思わず自分が著者であることをその方に伝えてしまいました。ゼミ生であいまいさ耐性に興味がある学生さんがおられるそうで,指導のためにお買いになられたとのことでした。よく売れているようなテキストならいざ知らず,拙著はニッチな領域のマイナーなテーマを扱った専門書ですので,かなりレアな体験でした。

以上,普段は科学的な思考だとか客観性だとか言っておりますが,1冊の本の出版にまつわる様々な偶然が重なると,それもまたリアルであると実感した出来事の数々でした。

話は変わりますが,例年どおり今年も本学大学祭において,義援金募集活動をおこないます。10月14日(土)・15日(日)の両日とも,本学講義館4階C401・C402近くのスペースで,10時~16時の間にブースを設置します。また,募金箱を持った学生たちが学内を練り歩きます。多くの皆様にご協力をいただけましたら,幸いです。そして,集まった募金額や具体的な寄付先などにつきましては,11月23日(木・祝)に仙台駅近くのAER2階アトリウムで開催されます「ココロサイコロ2017」で公表予定です。詳細が決まりましたら,大学ホームページなどでお知らせいたしますので,こちらも是非ご来場ください!

写真は,熊本城の崩れた石垣です。今回のお話と直接関係があるわけではありませんが,実はここにも偶然の重なりがあったのです。それについては,また別の機会に…。

9月の心理学コラム「VRの中で、人は・・・!!」(担当:森康浩)

2017/9/10 >> 役に立つ!!心理学コラム

9月で心理行動科学科に着任して、1年となりました。
あっという間に1年が経ちましたが、いろいろなことを経験した内容の濃い1年だったと思います。

1月の教員のコラムで工藤先生も触れていましたが、心理学の研究をするための道具として、VR(仮想現実)を使おうとする動きがあります。
皆さんの普段の姿勢はどうですか?猫背ですか?それとも、背筋はちゃんとピーンと伸びていますか?VRの中で、バットマンのアバターになると、普段猫背の人が背筋をピーンと伸ばすようになるようです。
他にも面白い研究があって、VR上でドラムをたたこうとする場面のとき、かっちりしたスーツ姿のサラリーマンと黒人でアフロでノリの良さそうな男性になった場合、後者の方が、被験者の動きがダイナミックになり、手つきもリズムカルになるそうです。
VRの中に入ると、普段とは違う人になれるようですね。

自分のゼミの卒論でもVRを使って実験をしようとしています。
今までの話は、VR上でのアバターによって自分自身に対する認識が変わるということでしたが、自分たちはVR上に授業場面を映し出し、授業に参加している他の人たちがやる気に満ち溢れているときに、やる気になるかを調べます。
どんな結果が出るかは、乞う!ご期待!!

 

8月の心理学コラム「カタカナ表記の話 その2」(担当:佐々木隆之)

2017/8/26 >> 役に立つ!!心理学コラム

カタカナ表記の話 その2

前回(2017年2月)に日本の芸能人のカタカナ表記について書きましたが、今回はその続き,子音の話です.
ジャッキー・チェンとアグネス・チャンは,どちらも名字がChanだということは前に書きましたが,チャンといえばチャン・グンソクを忘れてはいけません.チャン・グンソクをアルファベットで表記すると,Jang Keun-Sukです.どうしてJangがチャンになるかというと,子音のカテゴリ境界が言語によって違っていることによるものです.日本語の「チャ」と「ジャ」の境界とハングル(朝鮮語)の「チャ」と「ジャ」の境界はずれていて,ハングルの「ジャ」のうちの一部は日本語の「チャ」に聞こえます.グンソクの「グ」と「ク」にも同様の子音のカテゴリ境界のずれが存在します.ペ・ヨンジュン(Bae Yong-Joon)の「ペ」と「ベ」の間も同様です.「ペ」と「ベ」の境界は,英語とタイ語の間で最も大きな違いがあり,スペイン語ではその中間に境界があるという研究報告があります.
日本語の中でも,中田を「なかだ」と読ませるか「なかた」と読ませるかという違いがあります.濁音となる「なかだ」は東日本に多く,清音の「なかた」は西日本に多いそうです.西日本で朝鮮語や中国語の影響が大きかったことが影響している可能性があります.
大学ももうすぐ夏休みが終わり,後期が始まります.10月には大学祭が開催されますが,学科でも例年に増して面白い企画を考えています.ぜひご来場ください.写真は,今年度の大学祭の実行委員です.

大学祭実行委員です.

7月の心理学コラム「ポップコーン作りの話」(担当:工藤敏巳)

2017/7/30 >> 役に立つ!!心理学コラム

先日、卒論の中間発表会がありました。7月8日です。先生方の鋭い指摘に学生たちはタジタジでしたね。いい経験です.発表会の最後に教員が講評を述べる時間が設けられていて、私、結構場違いなことを言ってしまったようです。バームクーヘン作りの話をしてしまったのです。作り方、ご存知ですか?

生地をローラーに垂らして焼き上げていく工程を何度も繰り返すことで,何層にも重なった美味しいバームクーヘンが焼きあがるのです.

この映像をYouTubeで見ていた時,学生指導も結局これと同じではないかと.

教授すべき内容を完璧に伝えても100%吸収してくれるわけでもなく,吸収しきれなかった部分は,吸収できるまで何度も同じことを言い続ける.そして,学生は成長していく.4年生には「先生らしいわ」と慰めの言葉をいただきました.

 

そんな話を2年生に話したところ,ある学生が「ポップコーン作りも面白いですよ」と言うのです.フライパンを熱してもすぐにパンパン弾けるわけでもなく,ある一定の温度に達した時,フライパン中のコーンがパンパン弾ける.「努力」と「結果」もそれと同じではないかと.努力してもすぐに結果が出るわけでもなく,ある一定の臨界点に達した時,ちょうど水が0度で凍るときと同じように,いきなり成果として表れると言うのです.確かに,成果を残せない人間はすぐに成果が出ないからと言って投げ出してしまう.成果を上げる人間はしつこく努力を積み重ねる.

さらに学生はこう続けます.「先生,弾けないコーンもありますよね?」確かに弾けないコーンもありますね.花の種に水や肥料を同じように与えても,綺麗な花を咲かせる種もあるし,花をつけない種もあります.それと同じように,コーンにも「自主性」,「自発性」と言う力がないと成果を上げられないのかもしれません.

 

今回は科学と言うよりコーチングの話でした.