Archive for the ‘役に立つ!!心理学コラム’ Category
7月の心理学コラム:『RUDY』(担当:工藤敏巳)
2019/7/30 >> 役に立つ!!心理学コラム
昨年末、本学にスポーツを通じた地域振興を図るスポーツサイエンスラボという組織ができて、地域の中学生を集めてソフトテニスの指導を行なっていることは、1月のコラムでご紹介させていただきました。老婆心ながら、私もテニスコートでラケットを振っています。子供達に努力の大切さをわかってもらおうと、「RUDY」という映画を観るように勧めてみました。一人の生徒が夏休みの宿題でその映画の感想文を書いていましたので、見てくれたんだと思います。
RUDYという主人公がアメリカンフットボールの有名大学でプレーするという幼い頃からの夢を叶える物語です。実話です。RUDYは学力が足らず何度も大学を受験しますが失敗します。大学に入学してフットボールチームに入部し他の誰よりも必死になって努力しますが、補欠から抜け出せず試合に出してもらえません。そんなRUDYをチームメイトが支え、学生の最後の大会で1プレーだけ出場を果たしたというサクセスストーリーです。
映画を見ないとちょっと話が理解できないかもしれませんが、失敗経験が連続すると、挫折感を感じてやる気が喪失し目標を見失ってしまうと心理学は説明します。ところがRUDYは違います。映画ですので脚色もあるでしょうが、こうした例外を心理学をどう説明するのでしょうか。
https://filmarks.com/movies/17111
6月の心理学コラム:映画の話『アデライン、100年目の恋』(担当:大橋智樹)
2019/6/30 >> 役に立つ!!心理学コラム
学生さんたちを見ていると一つ心配になることがあります。それは,年を取りたくないと思っている人が少なくないことです。少なくないというのは事実でないかもしれません。おそらく多くの学生さんはそう思っているでしょう。そしてこのことは,学生さんに限らず,世の中の多くの人々,どちらかといえば男性よりも女性がそう思っているように感じます。たしかに若さは魅力の一つです。年とともに良くない方向に変化するものはたくさんありますし,それを受け入れたくないという気持ちもわからなくはありません。
この映画の主人公アデラインは,29歳の時に起こった事故をきっかけに歳を取らなくなります。年を取りたくない女性にとっては夢のような話でしょう。しかし,見た目が変わらないことを不審に思ったFBIに追われたりして,名前や住所を変え続ける生活を送ることになります。恋愛をしても,成就する前に逃げてしまいます。彼女は幸せだったわけではないのです。この映画を見ればきっと年を取りたくなります。(続きは映画を見てください)
「年を取ることをネガティブにとらえないこと」。学生さんたちには繰り返し伝えています。年齢とともに失うものもあるでしょうが,代わりに別の何かを手に入れればいい。アデラインにはなれないし,仮になれたとしても幸せじゃないのだから,受け入れるのです。毎年必ずやってくる誕生日を喜べるかどうかは,考え方次第なのです。
5月の心理学コラム:皇居東御苑で学ぶ「未完」の心理学(担当:木野和代)
2019/5/9 >> 役に立つ!!心理学コラム
所用で東京へ。少し時間があったので、皇居東御苑(つまり旧江戸城)の散策に。10連休で元号が変わるとあって、雨にも関わらず人出は多い。運よくボランティアガイドさんがいらしたので、説明を聞きながら広い園内を見学して回ることに。
写真は大手門から入ってほどなくにある「同心番所」。ガイドさん曰く、みどころは家紋の入った瓦! 軒丸瓦はずらりと三巴紋が並ぶが、その上の棟瓦はやっぱり徳川家の三葉葵紋(写真左上)。他にも皇室の菊の御紋の瓦もあるそうだ。
と、ここまでなら案内板にも書いてある。しかし、そこはいつも皇居を案内しているガイドさんの真骨頂、軒丸瓦の三巴紋をよ~く見て欲しい。紋様が逆向きのものが混ざっているのがわかるだろうか?? これぞ「未完の完」! 徳川の末永い繁栄を願って「わざと」不完全な瓦にしてあるのだそうだ。
心理学の法則にも「未完」に関するものがある。「ツァイガルニク効果」といって、未完成の課題の方が完成させることができた課題よりも記憶に残りやすいというもの。完成・完遂したことはもう覚えていなくてもよいけれど、途中のことは完成させようとするために記憶に引っかかりができるのではないかというように理解されている。
こうしてみると不完全なものも深い意味がありますね。
4月の心理学コラム:サバティカルと里帰り出産と曖昧さ耐性と(担当:友野隆成)
2019/4/25 >> 役に立つ!!心理学コラム
2019年度にサバティカル(特別研修休暇)をいただくことができましたので,第二子里帰り出産立ち会いのため,年度が替わる直前から3週間ほど妻の実家に滞在してきました。
「第二子は出産予定日よりも早く生まれやすい」という話を方々から見聞きしていましたので,サバティカルを利用して予定日前のかなり早い時期から妻の実家で待機していました。しかし,待てど暮らせど生まれてくる気配はなく,そうこうしているうちにいつの間にか予定日を過ぎてしまいました。いつ生まれてくるのかがはっきりしないという,まさに私の研究テーマである「曖昧さ耐性」が鍛えられるような状況です(曖昧さ耐性については,過去に大学ホームページの「教員のリレーエッセイ」で紹介しましたので,興味を持たれた方はそちらもご覧ください)。
結局,第二子が生まれたのは予定日の2日後でした。大幅に遅れたわけでもなく,出産自体も安産で,母子ともに経過は良好でした。振り返ってみれば,想定の範囲内ではあったのですが,生まれるまでの間は,何とも言い難いモヤッとした気持ちになりました(私以上に,妻の方がモヤッとしていたかもしれませんが)。
以上,曖昧さは色々なところに潜んでいるということを再確認した3週間でした。この経験を,サバティカル中の曖昧さ耐性研究に活かしていきたいと思います。
3月の心理学コラム:周りが動いて見える!!!(担当:森康浩)
2019/3/20 >> 役に立つ!!心理学コラム
先日、春休みを利用して家族で山形にあるリナワールドに行ってきました。そこで心理学に関係する体験をしたので紹介したいと思います。
リナワールドには、「パニくるバランス」というアトラクションがあり、最後に待ち受ける動かない橋の周りに時計回りに回る筒状の壁があるという構造になっています(写真参照)。
ちょっと離れてみるとなんともないのですが、橋の上に行くと状況が一転し、橋がぐらんぐらん歪んでいるような錯覚に陥り、橋から落ちそうになります(途中まで行って渡れなくて一回引き返してしまいました・・・)。
これには、運動の知覚についての「誘導運動」が関わっています。誘導運動とは、対象には物理的運動がないのにもかかわらず運動が知覚されることを指しています。例えば、止まっている電車に乗っているときに、周りの電車が動くことによって、自分の乗っている・止まっている電車も動いているのではと錯覚してしまうことをいいます。他にも、月夜の晩に流れる雲がある場合、月が周りの動く雲によって、雲が動く方向と逆の方向に移動するように認識してしまうこともあります。日常に隠れた誘導運動を皆さんも探してみてください。