Archive for the ‘役に立つ!!心理学コラム’ Category
5月の心理学コラム 「文明の利器」 (担当:友野隆成)
2015/5/15 >> 役に立つ!!心理学コラム
ゴールデンウィークに,家の掃除をしました。その際に,写真のような分厚いファイルが出てきました。これは,今から10数年前,私が学部4年生だった頃に,卒業論文執筆のために統計パッケージSASを使って分析した結果のアウトプットを綴じ込んだものです。
当時は,情報教室のパソコンから大型計算機にアクセスし,分析結果は1台しかない専用のプリンターに電話帳のような束が出力されてくる,という時代でした。私の先に分析した人たちが沢山いると,アウトプットが中々出てこなくて,イライラして待っていたものでした。
ところが,当時から更に10数年前,私の先輩が学部生だった頃には,大量のパンチカードを読み込み装置に読み込ませ,半日経って漸く結果が出力されていた,というような話を以前先輩から聞いていました。そして,その頃よりも更に昔は,因子分析を1つやるだけで何カ月もかかるとかかからないとかという,非常に気の遠くなるような話も聞いていました。それに比べたら,私が学部生だった頃に感じたイライラは,先人たちに比べたらぜいたくな悩みだったのかもしれません。
一方,今はどうでしょう。パンチカードも大型計算機も使わず,クリック一つで複雑な分析結果が普通のパソコンであっという間に出力されてきます。電話帳のような束も出てきません。無料で使える統計パッケージもあり,たかだか10数年の間だけでも格段に分析環境は良くなっています。
文明の利器は想像以上のスピードで便利になっていきますが,それに伴い見失ってしまうものもあるように思います。効率優先の昨今,大事なものを見落とさないようにしたいものだと,分厚いファイルを眺めながらふと思いました。
4月の心理学コラム 自分で作ると美味しい(担当:友野聡子)
2015/4/10 >> 役に立つ!!心理学コラム
先日、少し変わったカフェに行きました。メニューやお店の雰囲気はいたって普通、イマドキな感じです。何が変わっていたかと言うと、『手挽きコーヒー』です。それを注文すると、「どうぞお挽きください」と言われ、一人用のコーヒーミルを手渡されるのです。多くの客は、「自分で挽くのね…!」と、一瞬戸惑いますが、すぐにガリガリとミルを回し始め、コーヒー豆の香りを楽しみます。後は店員さんに抽出を任せ、出来上がったコーヒーを堪能します。
私の自宅にも、お世話になった先輩から頂いた手挽きのコーヒーミルがあります(写真左側です)。コーヒーに詳しいわけではありませんが、豆を挽く段階から手間暇かけて作ったコーヒーは格段に美味しい気がします。挽きたてのコーヒーが新鮮で美味しいということ以外にも、“自分で挽くこと”が美味しさを引き出す秘訣なのではないかと思い始めました。
調べてみると、このことはKathleen D. Vohs氏らによって実証済みでした(Vohs et al., 2013)。そのうちのある実験では、人々は、レモネードを自分で作った方が、他人が作っているところを見たときよりも、レモネードの味を風味豊かと評価しました。著者らは、一連の“儀式的行動”に関与することが、消費の楽しさに影響を与えると考察しています。
料理も、自分で作るとやたらと美味しく感じます。ただし、そのとき、夫の反応はイマイチなこともしばしばです(笑)。冒頭のカフェのように自分の幸せのためにさまざまな手作りに挑戦するのも良いでしょうが、手作りの客観的評価が低かったときには自分の過大評価を認識したほうが良いかもしれません。
引用文献
Vohs, K. D., Wang, Y., Gino, F., & Norton, M. I. (2013). Rituals Enhance Consumption. Psychological Science, 24, 1714-1721.
3月の心理学コラム(担当:佐々木隆之)
2015/3/28 >> 役に立つ!!心理学コラム
リズムの話(3)
卒業のシーズンも終わりです.宮城学院は3月20日に卒業式があり,その夜に心理行動科学科の卒業パーティが催されました.
写真はその卒業パーティの1シーンです.ノリノリのパフォーマンスを見ていると,自然に手拍子が起こります.音楽に合わせて手拍子をするときには,音楽とほぼ同じテンポで手拍子を打つことができます.ところが,音楽のようなペースメーカーがないときにみんなで手拍子をすると,大抵,だんだん速くなっていきます.速くなってきたことに気付いた人が元に戻そうと努力すればするほど,手拍子が合わなくなっていきます.
どうしてみんなで手拍子をするとだんだん速くなるのでしょう? これには,ネガティブ・アシンクロニー(NA: ’negative asynchrony’)という現象が関係しています.NAとは,メトロノームのような等間隔の音に,テンポを合わせて手拍子やタッピングをすると,ほんの少しだけ早めのタイミングでたたくとちょうどよいと感じるという現象です.例えば,AさんとBさんの2人が一緒に手拍子をするとき,AさんはBさんのたたくテンポより少しだけ早くたたこうとします.ところが,BさんもAさんのたたくタイミングよりも少しだけ早くたたきたいのです.そうすると,無意識のうちに,AさんとBさんは相手よりも少しだけ早くたたく競争を始めることになるのです.その結果,少しずつ少しずつ早くなっていくのです.ライブなどで大勢の人たちが手拍子をする時も同じで,全員が他の人たちよりほんの少しだけ早くたたきたいという無意識の働きによって,だんだん速くなっていくのです.
もうすぐ新たな学生たちが入学してきます.気持ちを新たに,歓迎の準備をしています.
人とPCとの接点(2)(担当:工藤敏巳)
2015/2/27 >> 役に立つ!!心理学コラム
前回は、「人とPCとの接点(1)」ということで、キーボードやマウスによる操作(詳細はhttp://www.mgu.ac.jp/~shinri/?p=2281をご覧ください)について書きました。
2回目は、未来のインターフェースについて書きます。
2007年にApple社がiPhoneを披露し、世界中の人たちを驚かせました。
画面の下を見たければ、上方向に指を動かします(スワイプ)。また、拡大する時には2本指で広げます。この操作はピンチアウトといいます。また、音声で入力する機能をついていますね。siriです。このiPhone画面を指で操作するインターフェースは、タッチパネルPCなどで採用されていて、NUI(Natural User Interface)と呼ばれています。人間にとってより自然で直感的な動作で操作可能な仕組みや方法のことです。マウスやキーボードでPCを操作する時代から、少しずつ変化しています。
最近では、人や指の動作を認識するデバイスが発売され、PCを身体の動きで操作することもできるようになってきました。こうしたデバイスがWebカメラのようにPCに組み込まれ、音声や動きでPCを操作する時代がやってくるかもしれません。
https://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=UmCcYfVXZ5w
1月の心理学コラム 映画の話し『塔の上のラプンツェル』(担当:大橋智樹)
2015/1/31 >> 役に立つ!!心理学コラム
『塔の上のラプンツェル(以下、ラプンツェル)』は、2011年に公開されたディズニーのプリンセス映画です。この映画はディズニーのプリンセス映画としてはとても異色の存在で、プリンス(王子様)の扱いが変わっているのです。
プリンセス映画ではプリンスが詳細に描写されることはほとんどありません。白雪姫なんて全体のうち2~3のシーンにしかプリンスが出てこないほどです。しかし、ラプンツェルは違います。なにせオープニングで登場するのは、この映画のプリンスであるフリン・ライダーで、その後もほとんどのシーンに登場します。彼の生い立ちも語られますし、映画の中での成長も描かれるなど、全プリンス映画の中で最も人柄が伝わってくるプリンスなのです。また、彼はプリンスなのに犯罪者なのです!オープニングでも彼はお城のティアラを盗みます。そんな犯罪者が、恋をして更生し、最後は王女ラプンツェルと結婚して物語はハッピーエンド。
ディズニーが男性の集客のためにこのような新しい取り組みをしたという話もありますが、いずれにしても異色の映画であると言えるでしょう。CGの描写も心理学的に素晴らしいのですが、これはまた別の機会に。
2月22日には、上で紹介した映画の分析も含む「ディズニーを心理学する」という現1年生の発表があります(http://web.mgu.ac.jp/pb/event/703.html?_ga=1.50782889.1268576221.1397609857)。どうぞお越し下さい。
ラプンツェルの日本での公開日は2011年3月12日。そう、東日本大震災の次の日です。あれから4年が経ちます。ラプンツェルを観るとき、震災も思い出して下さい。