MGU ジェンダー教育研究センター顧問
天童睦子


ジェンダー教育研究センターの設立によせて

2025年4月、本学は新たに「ジェンダー教育研究センター」を設立しました。建学の精神に基づき、女性学を含むジェンダー研究を推進し、教育の向上に資するとともに、ジェンダー平等社会の実現に向けた学術文化の発展に広く貢献することを目的としています。

ジェンダー(gender)とは「社会的・文化的につくられた性別」を意味し、この概念の登場によって、固定化した性役割を問い、社会における性の不均衡や不平等を照らし出す視点を得ました。今日、ジェンダーの視点はさまざまな学問領域の重要な視座として定着しています。女性、男性、マイノリティ、これまで声をあげにくかった人々を含めたすべての人にとって、ジェンダー平等社会の構築は、よりよく生きる未来をひらく基盤となるものです。

そこで本研究センターの事業では、主な4つの柱を掲げています。

  1. ジェンダー関連科目の充実と系統的教育の構築と提供
  2. ジェンダー研究の推進
  3. ジェンダーに関する専門的な研究や教育資源を地域に開き、リカレント教育、とくに女性のライフイベントに応じたジェンダー教育、女性の心身の健康に資する教育やスポーツ等を通じた実践活動の展開
  4. 行政組織や企業との連携協力体制を構築し、ジェンダー課題の解決に向けた社会貢献


女子大学としての本学の魅力は、社会や文化の奥深く潜む性差別や不均衡に気づく「ジェンダーに敏感な」視点をもつ教育が充実していることです。すでに2015年から全学的に女性学・ジェンダー関連科目が導入されました。また学部ごとに特徴をもつジェンダー科目も複数あります。今後、系統的な教育を一層充実させ、どの学部・学科の学生も、一定の条件を満たせば学べる「ジェンダー副専攻」が本格化します。学生たちには「教養・資格・ジェンダー」と、現代社会で求められる幅広く深い学びの機会が広がっています。

本研究センターを軸とする教育のもう一つの特色は、「地域に開かれた」リカレント教育(学び直し)の推進です。設立準備期間の2024年度には「ライフ・キャリア連続講座 4回」として「文化伝達とジェンダー」をテーマに卒業生・市民・学生を交えたリカレント教育プログラムが実施されました。また、キャリア支援課との協働企画「卒業生と学生をつなぐ」ワークショップでは、震災後の地域で子ども・子育て支援のリーダーとなって活躍する卒業生を招いて、学長、学生有志との語らいから市民が新たな社会課題に取り組むヒントが示されました。

今後、ライフイベントに応じた「女性と健康」の研究実践や、企業との連携事業が本格始動します。また、世代を超えて「だれでも・どこでも」参加できる学びの場、ジェンダー・カフェも始まります。どうぞご期待ください。政治、経済界、自治体、メディア、まちづくり、子育て、地域に根ざす市民活動など、ジェンダー課題につながる連携やご要望もお寄せください。

宮城学院女子大学「ジェンダー教育研究センター」は地域に、市民に、開かれたエンパワーメントの拠点として、学術文化の発展に寄与し、ジェンダー平等社会の実現に向けた地道な活動を展開していきます。

天童睦子
MGUジェンダー教育研究センター 顧問
宮城学院女子大学 名誉教授