本専攻では、日本語・日本文学・日本文化学・日本語教育という各分野での高度な広い研究・教育を提供できる特長を活かして、専門的に活躍できる人間の育成を目指しています。ことば・文学・文化の研究に取り組む学生を求めています。
日本の文化について国内外に発信できる専門家を育成します
現代は、フェイクニュースということばに象徴されるように、既存の価値体系が崩れ、情報の海の中に放り出されているような時代です。そのような状況下では、主体的に生きていく力が改めて求められます。それは、日々更新される情報を追いかけるのではなく、人間の活動の根底にある言葉に思索の錨を降ろすことで得られるものです。現象に流されない本質的な思考力が、真に生きる力、社会に多様な活躍の場を作る力を拓きます。
日本語と日本文学を巡る歴史と学問は、人がその時代の中でどのように意思を通わせ自分を形成し、新たな表現や観念を生み出し、創造的な世界を作っていったかを教えてくれます。日本語と日本文学を通して得る生の豊かさを伝え、発信することで、世界の見え方が変わってくる。それは、この社会の人々の生きやすさを手助けすることでもあります。
本専攻では、そうした役割を担うために、日本古典文学、日本近代文学、日本語学、日本文化学、日本語教育の各分野について、演習と特殊講義の科目を設置しています。各分野で活躍する研究者による個別的な指導を中心に据え、各分野との連携を図りつつ、一人一人の院生のテーマに添って、丁寧な個別指導を行っています。
研究指導の他、院生の課程修了後のことを考えて、国語教師を目指す学生には教職センターと連携して中学校・高等学校での非常勤講師として、日本語教師を目指す学生には日本語学校での非常勤講師として働けるようにサポートしています。なお、仙台市は2018年度採用選考から「名簿登載猶予」という制度を始めました。これは仙台市の教員採用試験に合格後、大学院の課程を修了し専修免許を取得するまで、猶予されるというものです。つまり、採用予定の身分を保障された上で研究を深め、より専門的な専修免許を取得できるという制度です。因みに宮城県では2015年度からこの制度がスタートしています。
このように、日本語・日本文学・日本文化学・日本語教育それぞれの分野について、高度な広い研究・教育を提供できる環境の下で、専門的な知識と教養によって明日の社会の良き担い手となる人間の養成を目指しています。
【アドミッションポリシー】
本専攻は、次のような能力、意欲、目的意識などをもつ者を広く受け入れる。
1.能力
各専攻の専門領域についての基礎的な知識および能力を有する者。
日本語学、日本文学、日本文化学または日本語教育学について、基礎的な知識および研究能力を有する者。
2.意欲
各専攻の専門領域について強い関心を持ち、広範な人文科学的諸領域との総合的・有機的連関のなかで捉える視点と能力を身につけようとする者。
日本語学、日本文学、日本文化学または日本語教育学について強い関心を持ち、幅広い視野と専門的な知識を修得しようとする者。
3.以下のような目的意識を持つ者。
①各専攻の専門分野に関する高度な専門知識を修得し、広範な人文科学的諸領域との総合的・有機的連関のなかで捉える視点を養うことを目指している。
②各専攻の専門領域において、広範な人文科学的諸領域との総合的・有機的連関のなかで捉える視点と高度な専門知識を有する専門職として、知見を発揮することを目指している。
③各専攻の専門領域に関する研究課題について、学術的に価値のある知見に到達し、それをもって社会に貢献することを目指している。
・日本語学、日本文学、日本文化学または日本語教育学において、幅広い視野と専門的な知識を修得し、社会に向けて発信、表現することを目指している。
・日本語学、日本文学、日本文化学または日本語教育学に関する専門的な研究課題について、学術的に価値のある知見に到達し、斯学に貢献することを目指している。
・日本語学、日本文学、日本文化学または日本語教育学における専門的職業人として、高度な語学・文学・文化的知識に基づいて社会に貢献することを目指している。
【ディプロマポリシー】
人文科学研究科の定める期間在学し、研究科が教育と研究の理念や目的に沿って設定した授業科目を履修して修了に必要な単位数以上を修得した者、かつ、研究指導を受けて修士論文を作成し、論文審査及び最終試験によって以下の学修成果が確認できた者に修士の学位を授与する。
1.各専攻の専門分野に関して、他の人文諸科学との関連性において有機的に捉えつつ、固有の意義を認識・表現・発信できる者。
2.各専攻の専門的な研究課題について、先行研究の成果の上に自分のテーマを設定・発展させ、斯学に貢献すると認められる者。
3.各専攻の専門分野に関連する専門的知識人、専門的職業人として活躍する意思と能力を有する者。
①日本語学、日本文学、日本文化学または日本語教育学に関して、他の人文諸科学との関連性において有機的に捉えつつ、固有の意義を認識・表現・発信できる者。
②日本語学、日本文学、日本文化学または日本語教育学に関する専門的な研究課題について、先行研究の成果の上に自分のテーマを設定・発展させ、斯学に貢献すると認められる者。
③日本語学、日本文学、日本文化学または日本語教育学における高等学校教諭や日本語教師等の専門的知識人として、高度な語学・文学・文化的知識に基づいた探究や教育を実践し、文化の発展に貢献する能力を有する者。
【カリキュラムポリシー】
1.教育課程の編成
日本語・日本文学専攻では、ディプロマ・ポリシーに掲げる目標を達成するために、特殊講義、演習、修士論文演習からなるカリキュラムを編成する。
2.教育内容
特殊講義では、歴史的な視座と多面的な理解を深めて、当該領域の特質と文化的・学術的意義を把握する力を養う。
演習では、研究倫理を遵守しつつ、課題設定、先行研究の整理、資料収集・調査・読解・分析・考察の方法を実践的に学修する。
学術的に価値のある知見に到達することを目標に、先行研究を踏まえた研究課題の設定、資料的根拠、論理展開において説得力ある修士論文を作成する。
3.教育・学習方法
日本語・日本文学に関する専門的な知識を修得するために、専門分野に関連する科目を学修する。その場合、特殊講義と演習の両方を必ず履修し、知識と研究方法を共に深める。また、自分の専門以外の分野の講義・演習を履修し、幅広い視野を身につける。
演習において、研究対象に対する適切な方法の選択、参考文献の収集・読解、対象の調査・読解・分析・考察といった研究の基本手法を実践する。
修士論文の作成において、研究倫理を踏まえた上で、先行研究の整理と課題設定、研究方法の選択、参考文献の収集と読解、対象の調査・読解・分析・考察を適切に行いつつ、適切な根拠と整合性のある論理展開に基づいた説得力ある論文を作成する力を養う。
4.学修成果の評価
各科目の評価は、シラバス記載の基準と方法に従って行う。
修士論文の評価は、要覧に記載の審査方法および審査基準に従って総合的に評価する。
ディプロマ・ポリシーの各項目について
「日本語学、日本文学、日本文化学または日本語教育学に関する幅広い視野と専門的な知識を有している者」については、特殊講義および演習において、それぞれの分野の文化的・歴史的意義を踏まえつつ、研究対象を適切に理解・把握し、位置づけることができる。
「日本語学、日本文学、日本文化学または日本語教育学に関する専門的な研究課題について学術的に価値のある知見に到達し、斯学に貢献すると認められる者」については、修士論文において、先行研究を踏まえた上で適切な課題設定、資料収集、的確な調査分析・考察・論究を行うことができる。
「日本語学、日本文学、日本文化学または日本語教育学における専門的教養人として必要な知識、技能、意識を有している者」については、学会での発表・修士論文および修士論文発表会での発表内容などに加え、各種免許・資格の取得などによって行う。
授業科目
日本語学特殊講義Ⅰ・Ⅱ | 日本語教育学特殊講義Ⅰ・Ⅱ |
日本古典文学特殊講義Ⅰ・Ⅱ | 日本文化学特殊講義Ⅰ・Ⅱ |
日本近代文学特殊講義Ⅰ・Ⅱ | 中国文学特殊講義Ⅰ・Ⅱ |
日本語教育学演習Ⅰ・Ⅱ | 日本語学演習Ⅰ・Ⅱ |
日本古典文学演習Ⅰ・Ⅱ | 日本文化学演習Ⅰ・Ⅱ |
日本近代文学演習Ⅰ・Ⅱ | 修士論文演習Ⅰ・Ⅱ |
修士論文紹介
・『若菜集』論 ―近代詩の夜明け―
・『おくのほそ道』の研究
・中国語母語話者を対象とした日本語音声教育に関する一研究
・日本語教育における縮約形の指導に関する一考察
・『枕草子』和歌の研究 ―その性格と特色、意味について―
・宮沢賢治のオノマトペ研究 ―童話作品を中心に―
・古代日本文学にあらわれる「縁」―『日本霊異記』を中心として―
・副詞研究 ―「学校文法」副詞の扱いについて―
・『源氏物語』の韓国語訳について―「桐壺」巻を中心に―
・室生犀星の研究 ―『愛の詩集』を中心に―
・『それから』考
・玉鬘と植物 ―植物の働きから見る玉鬘十帖の意義―
・見られる光源氏 ―人物像の形成―
・宮沢賢治童話の考察 ―「なめとこ山の熊」を中心に―
・上代文学における「色」
・炭太祇の研究 古代文学における禁忌
・古代日本の「天」観念
・海外における日本語学習者のためのインタビュープロジェクトによる日本語教育―韓国大眞大学校の授業ケースから―
・日本語学習者のスタイルの切り換えの習得と要因についての一考察
・日本語教育におけるオノマトペ指導について
・『永日小品』論
・室生犀星における魚のイメージ
・長期滞在型の高校留学生に対する支援と日本語教育
・『保元物語』の研究 ―半井本の「語り」における〈理〉と〈哀〉を中心として―
・高校留学生のためのカリキュラムデザイン ―アクティブ・ラーニングを意識した授業実践から―
・非漢字圏日本語学習者の書字指導に関する一考察 ―自己モニターを取り入れた文字指導の試みより―
取得可能な免許状の種類
中学校教諭専修免許状(国語)
高等学校教諭専修免許状(国語)
修了後の進路例
大学教員、高等専門学校教員、高等学校国語教諭、中学国語科教諭、司書、学芸員、大学事務職員、公務員、一般企業
修了生の声
仙台市立八軒中学校・教諭
阿部 日菜子さん
学部生の時に研究の面白さに気付き、大学院に進学したいと思うようになりました。一方で、将来は教職に就いて、自分が学んで得たものを次の世代に伝えていきたいと考えるようにもなりました。両方の夢を叶えるために、学部4年次に教員採用試験を受験し、合格。その後は名簿登載猶予の制度を利用して、大学院に進学しました。研究テーマは中世軍記物語の『保元物語』の「語り」です。「なぜ、語り手はこのように語るのか」という疑問の答えを得るために、作品と真剣に向き合った2年間は、自分の人生にとっても大事な時間だったと感じています。
大学院では、専門の他に近代文学、中国文学、日本語学についても深く学ぶことができました。宮城学院の大学院はどの授業も少人数なので、その分野の専門の先生方からじっくりと教えを授かることができます。大学院を通して得た知識は、教員になった今の自分にしっかりと息づいています。
現在は仙台市内の中学校で、学級担任や吹奏楽部の顧問をはじめとした業務に従事しています。多忙な毎日ですが、日々成長する生徒の姿に学ぶことが多く、充実感があります。生徒に「言葉って、おもしろい」と思ってもらえるような授業を目標に、これからも教員として努力を続けていきたいと思います。
下関市立大学・国際交流センター・専任講師
猪又 由華里さん
学部卒業と同時に日本語教師となり、日本語学校と高等学校で日本語を教えていました。当時はまだ高校留学生に対して日本語を教える現場は少なく、高校留学生に対する日本語教育について研究したいと思い大学院に進学しました。
大学院では日本語や日本語教育についてはもちろん、日本文学や中国文学についても学びました。日本語教師は日本語についてだけでなく、日本についての知識も問われるため、大学院で日本の文学や文化について学べるということは、日本語を教える上でとても強みになると感じます。授業は少人数で行われ、より深く内容を理解することができ、自分の研究に関しても先生方に相談しやすい環境で修士論文を執筆することができました。
現在は下関市立大学で留学生に日本語や日本文化を教えており、学部や大学院で学んだことが役に立っています。所属している国際交流センターでは、留学生と日本人学生との交流イベントを企画し、大学内の国際交流推進のための研究にも取り組んでいます。
どのような職業でも現場の課題を解決したいと思う瞬間があると思います。大学院では、研究を通して自らの課題への向き合い方を知ることができるのではないかと思います。
宮城学院女子大学および東北外語観光専門学校・日本語科・非常勤講師
志賀村 佐保さん
県外の大学を卒業後、一般企業に就職しましたが、その後、海外で働きたいと思い日本語教師を志しました。資格取得後、台湾、シンガポールなど海外で日本語教師として活動しました。その後帰国し、日本語教師養成講座の講師、日本語学校の講師として勤務していましたが、もう一度より深く学びなおし、日本語教育を追究したいと思い、大学院への進学を決めました。
大学院在学中は、修士論文のみではなく、研究報告や学会にもチャレンジさせていただき、経験と実績を積むことができ、充実した日々が過ごせました。社会人になってから大学院に進学したことで、日本語教育現場での課題や問題点を具体的に感じていたので、自分が興味を持ったテーマで研究ができ、自信が得られたと思います。知的好奇心を満たしていただき、また、研究したいことを全面的に応援していただけて、先生方には大変感謝しております。
現在は、宮城学院女子大学の非常勤講師をしております。また、引き続き日本語教師、日本語教師養成講座の講師として日本語学校にも勤務しております。日本語教育を取り巻く環境は大きく変化していますが、大学院での研究を活かし、今後も邁進していきたいと思っています。