本専攻では、歴史や社会、人間活動についての認識を広げて、新たな文化創造の担い手を育成します。既存の学問の枠組みを超えた幅広い領域の履修が可能です。
人間の営みからそのあり方を理解し新たな文化を創造する人材を育成します
今日の「時代」や「社会」は錯綜をきわめ、その特質を一言で表現することは困難なほどです。その中での「人間」の営みもまた同様だといえましょう。どのような問題も、これを俎上にのせて分析しようとするとき、その歴史的、社会的な網の目を意識せざるを得ません。人々の意思や行為はそうした種々の事情が負荷されたものであることが理解できると思います。従来のカテゴリーに収めることのできない学術分野が要求されているとも言えます。本専攻では、学問的専門性と領域横断的な学際性を兼ね備えたカリキュラムにより、現代社会で求められる新たな文化を創造する人材を育成することを目指しています。
学問的専門性と領域横断的な学際性を兼ね備えたカリキュラム
このような理念から、本専攻では、伝統的な人文科学と社会科学とを前提としつつも、既存の学問の枠組みを越えて、幅広い領域の履修が可能になるよう教育課程が編成されています。具体的には、以下の通りです。
1.<人間系>の学問を通して、文化の基礎としての人間のあり方について総合的・学際的に追究します。
2.<歴史系>の学問を通して、人間文化の総合的・学際的把握を目指します。
3.<社会系>の学問を通して、人間と社会のあり方についての理論的かつ実証的な研究を深めます。
4.これらの学問領域から、各自の専門分野の専門性を深めつつ、領域横断的にも学んでいきます。
例えば、1年次の「総合セミナー」(必修科目)では、上記3つの系統の学問分野の視点から、「人間・文化」研究にアプローチします。すなわち、各自の専門分野における考え方や研究技法の習得だけではなく、「人間・文化」をテーマに扱う他の研究分野のものの見方、考え方を幅広く身につけることを目指します。これにより総合的視野に立った研究態度を確立するとともに、自らの専門分野における研究にも柔軟に応用する力をつけることができます。
【アドミッションポリシー】
本専攻は、次のような能力、意欲、目的意識などをもつ者を広く受け入れる。
1.能力
各専攻の専門領域についての基礎的な知識および能力を有する者。
人間系、歴史系、社会系の各研究分野のいずれかにおける基礎知識及び技能を修得している者。
2.意欲
各専攻の専門領域について強い関心を持ち、広範な人文科学的諸領域との総合的・有機的連関のなかで捉える視点と能力を身につけようとする者。
人間系、歴史系、社会系の各研究分野に強い関心をもち、より専門的視点から深く、また、領域横断的に考究しようとする意欲がある者。
3.以下のような目的意識を持つ者。
①各専攻の専門分野に関する高度な専門知識を修得し、広範な人文科学的諸領域との総合的・有機的連関のなかで捉える視点を養うことを目指している。
②各専攻の専門領域において、広範な人文科学的諸領域との総合的・有機的連関のなかで捉える視点と高度な専門知識を有する専門職として、知見を発揮することを目指している。
③各専攻の専門領域に関する研究課題について、学術的に価値のある知見に到達し、それをもって社会に貢献することを目指している。
・人間文化学全般に関する幅広い視野と専門的な知識を獲得し、それらを包括的な人間理解に活用することを目指している。
・人間文化学全般に関する専門的な研究課題について、学術的に価値のある知見を獲得し、公表することを目指している。
・人間文化学全般における専門的職業人として必要な知識・技能・意識を獲得し、それらを活用して社会に貢献することを目指している。
【ディプロマポリシー】
人文科学研究科の定める期間在学し、研究科が教育と研究の理念や目的に沿って設定した授業科目を履修して修了に必要な単位数以上を修得した者、かつ、研究指導を受けて修士論文を作成し、論文審査及び最終試験によって以下の学修成果が確認できた者に修士の学位を授与する。
1.各専攻の専門分野に関して、他の人文諸科学との関連性において有機的に捉えつつ、固有の意義を認識・表現・発信できる者。
2.各専攻の専門的な研究課題について、先行研究の成果の上に自分のテーマを設定・発展させ、斯学に貢献すると認められる者。
3.各専攻の専門分野に関連する専門的知識人、専門的職業人として活躍する意思と能力を有する者。
①各自の専門分野を中心とした人間文化学全般に関する幅広い視野と専門的な知識を有し、それらを包括的な人間理解に活用することができる。
②各自の専門分野を中心とした人間文化学全般に関する専門的な研究課題について、学術的に価値のある知見を獲得し、公表することができる。
③各自の専門分野を中心とした人間文化学全般における専門的職業人として必要な知識・技能・意識を有し、それらを活用して社会に貢献することができる。
【カリキュラムポリシー】
1.教育課程の編成
人間文化学専攻では、ディプロマ・ポリシーに掲げる目標を達成するために、次のようなカリキュラムを編成する。
伝統的な人文科学と社会科学とを前提としつつも、既存の学問の枠組みを越えて、幅広い領域の履修が可能になるよう、「総合セミナー」「演習」「特殊講義」「特殊研究」を開講する。
文化の基礎としての人間のあり方について総合的・学際的に追究する、「人間系」の授業科目を開講する。
人間文化の総合的・学際的把握を目指す、「歴史系」の授業科目を開講する。
人間と社会のあり方についての理論的かつ実証的な研究を深める、「社会系」の授業科目を開講する。
中学校(社会)・高等学校(地理歴史、公民)教育職員専修免許状取得に必要な授業科目を開講する。
2.教育内容
「総合セミナー」では、「人間系」「歴史系」「社会系」それぞれの専門分野のものの見方、考え方について領域横断的に学ぶ。
「演習」では、「人間系」「歴史系」「社会系」のうち主として各自の専門分野について深く学ぶ。
「特殊講義」「特殊研究」では、「人間系」「歴史系」「社会系」のさまざまな専門分野における知識・技能について幅広く学ぶ。
3.教育・学習方法
「総合セミナー」では、演習形式によって専攻所属の全教員の専門分野における知見の教授を行い、総合的視野に立った研究態度を確立するとともに、自らの専門分野における研究にも柔軟に応用する力を涵養する。
「演習」では、演習形式によって指導教員および副指導教員による各自の専門分野についてのきめ細かな指導を行い、水準の高い修士論文作成を目指す。
「特殊講義」「特殊研究」では、講義形式と演習形式を組み合わせて、「人間系」「歴史系」「社会系」のさまざまな専門的知識と技能の統合を図る。
4.学修成果の評価
各科目の評価は、シラバス記載の基準と方法に従って行う。
修士論文の評価は、専攻共通の評価基準にそれぞれの研究分野の基準を加味したルーブリックに従って行う。
幅広い視野と専門的知識の評価は、人文学会での発表・修士論文および修士論文発表会での発表などによって行う。
学術的価値のある知見の獲得・公表の評価は、学会発表・本学紀要を含む投稿論文などによって行う。
専門的職業人としての能力の評価は、人文学会での発表・修士論文および修士論文発表会での発表などに加え、各種免許・資格の取得などによって行う。
授業科目
総合セミナーⅠ・Ⅱ | 心理学特殊講義Ⅰ・Ⅱ |
社会歴史論特殊講義Ⅰ・Ⅱ | 現代社会論特殊講義Ⅰ・Ⅱ |
地域文化史論特殊講義Ⅰ・Ⅱ | 人間基礎論演習Ⅰ・Ⅱ |
歴史文化論演習Ⅰ・Ⅱ | 社会文化論演習Ⅰ・Ⅱ |
修士論文演習Ⅰ・Ⅱ | 特殊研究(社会言語学)Ⅰ・Ⅱ |
特殊研究(史料講読)Ⅰ・Ⅱ | 特殊研究(宗教学)Ⅰ・Ⅱ |
特殊研究(ヨーロッパ政治史)Ⅰ・Ⅱ |
修士論文紹介
・インドの月経に関する文化人類学的研究
・野外保育による幼児のストレス軽減効果に関する研究
・原発事故が子育て世代に与えた影響
・内発型地域振興への挑戦
・青年期女子の両親に対するイメージと精神的健康について
・PTSD/抑うつ傾向と自己開示との関連の検討―東日本大震災から4年半時点での被災大学生を対象として―
・青年期における自閉症スペクトラム傾向と自尊感情について
・何故ハトシェプストは長期にわたって統治することが出来たのか
・新聞記事テキストマイニングに基づく災害・防災観の分析
・幼児期の子育て支援事業の多様性とその比較~未就園児親子支援事業の実践を通して~
・学校資料の歴史史料化に関する基礎的考察
・「卑屈さ」と自己卑下呈示、精神的健康の関連について
・「甘え」と特性罪悪感がPTSR/PTSDに与える影響について
・近世期蝦夷地における煎海鼠の生産・交易・統制
・一つのことに熱中する心理
・凹凸反転の見えについて
・浮世絵の風景表現
・情緒刺激がバウム描画に与える影響
・劣等感とその克服について
・山形県温海町方言の言語地理学的研究
・心理実験と心理検査の関連性の検討
取得可能な免許状の種類
中学校教諭専修免許状(社会)
高等学校教諭専修免許状(地理・歴史)
高等学校教諭専修免許状(公民)
修了後の進路例
博物館・学芸員、公文書館・アーキビスト、教育委員会市史編纂室・事務職、障害児福祉サービス施設・心理職、保育士、大学・教務職員、一般企業・システムエンジニア、など
修了生の声
人間文化学修士
八重柏 明葉さん
私は国際文化学科を卒業後、学部研究生を経て人間文化学専攻に進学しました。大学院では八木祐子ゼミに所属し、先行研究や修士1年生の時にインドで行った月経における意識や行動に関するアンケート調査をもとに、月経観の変化について文化人類学的な観点から研究をおこないました。インドでのフィルドワークの経験は大変さもありましたが、現地で実際に調査をおこない、人々の声をきくことができて、研究の面白さを実感しました。
大学院在学中は、ちょうどコロナ禍にあたり、研究をどう進めていこうかと悩みましたが、八木先生をはじめとして、様々な先生方や先輩方、また研究に協力してくださった方々の助けで、修士論文を書き上げ、無事に修了することができました。この経験から、人と人との縁の大切さを痛感いたしました。
大学院を修了後、医薬品関係の職場に勤務しました。仕事をしていくなかで、私が自信をもって働けるようになったのは、私が一緒に働く方々との繋がりを大事にしたことで、職場の人との信頼関係を築くことができたからだと思います。
社会人として働いていくうえで、コミュニケーションは大事ですが、人との繋がりを大切にすることがより必要になってきます。このように、大学院での学びや培った経験は、人間性の成長にもつながり、社会人になった今でも活かすことができています。
私は現在、新しい道に進むために転職活動を進めています。大学院で経験してきたことを忘れずに、今後も成長していきたいと思います。
仙台市博物館
学芸員
小田嶋 なつみ
さん
人間文化学科を卒業後、人間文化学専攻に進学しました。
大学院では平安から鎌倉時代の絵巻について研究しました。修士論文は、≪吉備大臣入唐絵巻≫という絵巻について、日本美術史と日本古代史、両分野での研究成果を活かした考察を行いました。
現在勤務している仙台市博物館では、学芸員として展覧会の企画運営をはじめ、資料の管理収集から調査研究など、様々な業務を行っています。学芸員は「ひと」の文化を扱う仕事のため、歴史や文化に対する豊富な知識が必要です。そしてそれ以上に、豊かな人間性が何より大切だと思っています。
私の場合これらの素養は、大学から大学院時代に養ったような気がします。熱意を持って一心に取り組んだ研究や調査の経験、その先に見えた新しい景色。当時の体験の一つひとつが、今の私を形づくる基本の核になっています。
追い求める気持ちさえあれば、いつまででも新しい世界を見ることができます!どうぞ探究心を強く持ち、たくさんのことに挑戦していってください。皆さんの今後に大いに期待します。
(写真:仙台市博物館の特別展「いつだって猫展」の連携シンポジウムを本学で開催した際に、学芸員としてご講話いただきました)