東日本大震災の被災地では、震災前に比べて家計が苦しくなったと答える世帯は4割を超えており、およそ6割の家庭が子どもの学費を賄うことが難しいと回答しています(河北新報 2017・11・21 版)。これらの貧困の問題は、子どもの教育の機会均等、子どもの学ぶ権利を脅かすものであり、子どもの学習意欲の低下、ひいては学業成績の低下をもたらします。それらの結果が、被災地における不登校や、いじめの増加をもたらす要因となっている可能性があります。震災以降、本学の学生は津波被害が甚大であった沿岸部や、被災者の多くが移住した内陸部において学習支援を行ってきました。学習支援は、子どもの全人格的な発達を保障し、心の安全空間としての家庭の役割を強化する機能をもちます。本事業においては被災地における学習支援ニーズの現状分析を通し、そのニーズに即した学習支援プログラムを開発、実践することにより社会生活・自立生活の促進、健全育成・社会的な居場所の構築を図ります。さらに、学習支援を通した多面的支援(子育て期の親支援、地域的ケア支援)により、地域が本来持つ子どもと家族を見守りケアする機能の回復を目指します。

足立智昭 教育学部教育学科・教授(発達臨床心理学)