学長メッセージ

宮城学院女子大学 学長
長谷部 弘

2025年度 入学式 学長式辞

新入生の皆さん
御入学、おめでとうございます。
皆さんの御入学を、宮城学院女子大学の教職員一同、心から御祝いし、歓迎いたします。

皆さんは、今、大学生活のスタートを切ろうとしています。胸中では「期待と不安」とが渦巻いていることでしょう。これから始まろうとしている大学生活は、誰にとっても未知の世界ですから、そんな思いは当然のことです。

大学で求められる学びには、高校までの学びと異なる、ある一つの共通した特徴があります。それは、自分を含め誰にでも納得してもらえる定まった答えというものがない、あるいは答えそのものがないかもしれない、そんな条件で進められる学びだということです。そのため、新入生の皆さんには、発想を転換していただく必要があります。必ず答えがある、という「作られた条件世界」から現実世界へのエクソダス=脱出です。

しかし、自分で答えを探し、考え、結論を探っていくためには、物事の基礎的な考え方や知識が必要となります。どんな学問分野でも、「読み書きそろばん」に相当するリテラシー(その分野の基本的な知識、能力、活用力)が求められるからです。

皆さんがもし、まだ自分でちゃんと身についていないと思う基礎的な分野があるのなら、是非、最初のうちに、自発的に、必要だと思う学習支援の授業や講座、一般教育科目などに参加して学んでみてください。恥ずかしがったり遠慮したりしてはいけません。大学という学びの場では、知らないことを恐れる必要はないのです。大学において知ったかぶりは禁物です。まず、答えのない世界で答えを発見するために必要な基礎的な力を修得してください。

大学教育が高等教育である所以は、アカデミア、すなわち学問の世界の専門家である教員が、若い皆さんへの教育を担っていくという点にあります。皆さん、どうか、大学のそれぞれの分野で、良い学び、深い学びをしてみてください。アルキメデスの言葉として有名な、あの「エウレカ(わかったぞ)!」という知的な喜びをたくさん経験してみてください。

ただし、自分の持つ知恵や知識を絶対化してはいけません。謙虚に学び続ける「知的誠実性」を身につけてくださいますように。それが答えのない世界で学んで行こうとする者に必要な基本的精神態度です。

ご存じのように、宮城学院女子大学は、140年近い歴史を持つ福音主義キリスト教のミッションスクールです。教学活動全体は、実は、建学の精神に裏付けられるという立て付けで作られ、運営されています。本学では、それを短い言葉でわかりやすく理解していただくために、「愛のある知性を!」というタグ・ラインを掲げてみました。みなさんは、これから、キャンパス生活の様々な時と場において、この言葉を見聞きしていかれることでしょう。

話は変わりますが、新約聖書に出て来る人物の中で、使徒パウロは、イエス・キリストの福音を一生懸命伝えることに生涯をささげた人として知られています。特にローマやコリントの教会の人たちに宛てた手紙の中で、罪ある私たち人間をラディカルに批判しました。彼らの多くが、非信仰者、すなわち恵みを与えて下さる神を無視し、自分の知恵を誇ってやまない人たちのまっただ中で生活していたからです。

さらに彼は、私たちの救いのために十字架の道を歩まれたイエス・キリストというお方こそが「神の知恵」そのものだ、と言い切りました。彼は、人間の知恵を徹底的に低め、イエス・キリストこそ神の知恵、真の知恵であるとして誉め讃えたのです。それは、別の見方をすれば、神の知恵をいただく時、人間の低い知恵は高められ、その真価を発揮する、ということでもあります。

「愛のある知性を!」というタグ・ラインは、そのことを語ります。

「知性」とは、パウロがいう人間の知恵のことです。驕ることなく誠実に謙虚に自分の知恵を深め、それを自分で独占して自分のためだけ用いたりせず、「他者」のため、社会や世界の平和のために用いていく。その知恵が、神様の愛と義と慈しみによって裏打ちされるとき、それが「愛のある知性」となります。

「他者」とは、仲間のことです。神様が、私たちの仕えるべき隣人として、必要に応じてその時々に出会わせてくださる人のことです。私たちは、そんな仲間と一緒に「愛のある知性」を分かち合っていく時、この不安でリスク多き時代を、しっかりと生き抜いていくことが出来ます。自信と希望を持って、前向きに歩んでいくことが出来るのです。 

毎年のことですが、新入生のみなさんにお願いが三つあります。

1. 大学でしっかりと勉強してください。学問的・科学的な知恵を軽んじることなく習得し、しっかりとした判断力を獲得していただきたい。

2. ぜひ、一日一回、聖書を手に取って読んでください。「あなたの若い日にあなたの作り主をおぼえよ」、という言葉はまさに真理です。

3. 毎週、月曜、水曜、金曜日のお昼に行われる大学礼拝に必ず出席していただきたい。レポートがあってもなくても、出席していただきたい。

必ずや、皆さん一人ひとりをそのまま認めてくれる御言葉やメッセージ、健全な自信へと導いてくれる御言葉やメッセージに出会うことができます。それは、皆さんにとっての一生の宝となることでしょう。皆さんは、実はそのために、神様が特別に選んでくださって、この宮城学院女子大学へと入学して来られた方々なのですから‥。

保護者の皆様、本日は、御子様方と一緒にこの宮城学院の入学式へと足を運んでくださり、本当にありがとうございます。このようにして、御一緒に、お子様方の入学式をお祝いできますことを心から感謝するものです。 

本日は、ご入学、本当におめでとうございます。 
これをもって式辞とさせていただきます。 

2025年 4月 4日
宮城学院女子大学 学長
長谷部 弘


<プロフィール>
長谷部 弘(はせべ ひろし)
【出身】福島県福島市。1955年生まれ。
【学位】博士(経済学)

【略歴】
1974年福島県立福島高等学校卒業後、東北大学経済学部入学。
1978年東北大学大学院経済学研究科に進学(日本経済史専攻)。
その後東北大学経済学部助手を経て、1985年に東北大学教養部講師、1989年に助教授、そして1993年から東北大学大学院国際文化研究科助教授。
同年文部省在外研究員としてCalvin Theological Seminary & Archives (Grand Rapids, Michigan, U.S.A.)で日米交流史に関する調査研究に従事。
1999年から東北大学大学院経済学研究科教授(日本経済史担当)。
2021年定年退職。
東北大学名誉教授。

【主な学会活動】
社会経済史学会(評議員1997年4月~2013年3月・理事2013年4月~2019年3月)
日本村落研究学会(理事2003年11月~2005年10月・会長2017年11月~2019年10月)
他に比較家族史学会、市場史研究会の会員
【主な社会貢献】
仙台市史や石巻市史の調査研究委員
福島県伊達郡各自治体史の編集・執筆活動に従事
東北学院理事(2016年4月〜2019年3月)

メディア

◆情報誌「仙台経済界」連載「女子大学の人づくり」
宮城学院の女子教育 たえず原点に立ち戻りつつ」 <2024年9-10月号掲載>
宮城学院の女子教育 キリスト教の福音と女性の自立」<2024年7-8月号掲載>
福音宣教と英語・音楽」<2024年5-6月号掲載>
建学の精神と教養教育」<2024年3-4月号掲載>
プールボー女史」<2024年1-2月号掲載>
宮城学院の女子教育 その出発点」<2023年11-12月号掲載>
(※編集部の許諾を得て掲載)

◆「河北新報」
時代に対応 改革進める」<2024年1月5日掲載>
(※著作権は河北新報社に帰属します、河北新報社の許諾を得て掲載)

◆日本私立大学連盟 情報誌「大学時報」414号掲載
建学の泉」加盟校の幸福度ランキングアップ《噴水編》<2024年1月発行>
(※連盟事務局の許諾を得て掲載)

◆大学マネジメント研究会/会誌「大学マネジメント」掲載
宮城学院女子大学のめざすもの」<2023年10月号>
(※研究会事務局の許諾を得て掲載)

式辞/告辞

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