6月の心理学コラム どうしたら頭がよくなりますか?(担当:木野和代)

2014/6/9 >> 役に立つ!!心理学コラム

もう10数年前のこと。ある大学での講義終了後,5人の女子学生が駆け寄ってきました。
「先生,質問があるんですけど・・・」他の4人が見守る中,一人が切り出しました。
「どうしたら頭がよくなりますか?」

まじめな学生さんのように見えます。
週に一度講義で会うだけの私に,なぜそのような質問をしてきたのか分かりませんが,かなり真剣な表情です。

さて,どう答えよう・・・。
“頭がよく”なりたいと思っていて,きっと自分なりのなんらかの努力をしてきたんじゃないかな? でも手応えがないのかな?

「“頭がいい”ってどういうこと?」私は,逆に彼女にたずねました。

“頭がいい”というのは具体的にどのような状態を求めているのか確認しようと思ったのです。
暗算が速いことかもしれませんし,記憶力がいいことかもしれません。ひょっとしたら,世渡り上手なことかもしれません。これらを総合したものということもあります。

しばらく考えた後,彼女からはこんな答えが返ってきました;「本をたくさん読めることです」。
この瞬間,私の答えもはっきりしました;「じゃあ,本を読もう!」と。
相手の表情が急に和らいだように思いました。そんな単純なことで?と思われるかもしれませんが,きっと具体的な目標ができたのでしょう。

この話,実は先日の『心理学研究法』という授業の中で紹介したエピソードです。私が彼女に返した質問は,
心理学の研究をするときには,まず考えなければならない問題なのです。目に見えない心(のはたらき)を研究するために,研究しようとしているモノが何かを説明するのです(定義)。そして,それを目に見える形に表して(行動として測定),研究データとして扱うのです。(エピソードになぞらえれば,自分が研究したい“頭のよさ”とは本をたくさん読めることだと定義し,読んだ本の量を測定する)

さて,彼女はその後元気にしているかな?

ちょうど今月のコラムの内容を決めようとしていたとき,この春卒業した4人が2ヶ月ぶりに大学を訪ねてくれました。それぞれの仕事ぶりを頼もしく思うと同時に,いろいろな職場の話を聞けて私の視野も少し広がったような。それで今月はこのトピックに決めました。様々な組織・社会のことを知る,これも“アタマガヨク”なる一歩かもしれません。・・・いずれにせよ,思いがけず楽しいひととき!つい長話してしまいました。ありがとう!

この春の卒業生たちとのゼミ風景。当時は2年生でした。

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