Archive for the ‘役に立つ!!心理学コラム’ Category
前回7月のコラムにおいては、2025年3月に卒業した犯罪心理学ゼミ1期生の卒業研究「命の大切さを学ぶ教室~京都アニメーション事件被害者等による心情伝達~」について御紹介いたしました。なお、同講演会を宮城県警察と協働で2025年10月11日(土)に本学大学祭においても開催しましたので、HPを参照願います。
さて、今回も卒業研究に関する情報をお知らせします。内容は、闇バイトの抑止です。注目したのは、大学生のSNS上における対人関係です。理由は、若年者がSNS上でのやり取りから、面識のない加害者(リクルーター)から「特技を生かせる」などと誘われ、特殊詐欺等闇バイトに巻き込まれないようにするためです。同研究は、「閲覧のみ」、「他愛のない会話」、「個人情報の開示」及び「深刻な悩み相談」をしているSNS上の相手から、闇バイトを誘われた際の危惧感が異なるかについて調査しました。結果、「深刻な悩み相談」をしている相手から闇バイトを誘われると、他の関係性よりも、危惧感が低くなることが明らかとなりました。つまり、大学生等の若年者は、SNS上において親密な関係、すなわち絶大なる信頼を向けた相手からの誘いであるため、自ずと危惧感が減少し、ひいては加担してしまうことが推察されました。その防止策は、今までの啓発文である「遭ったことのない知人」に加えて
「SNS上で信頼している相手」
「SNS上で悩みを相談している相手」
が闇バイトの加害者であるという心理教育が急務と考えられます。
犯罪被害者等を出さないためには、あらゆる角度から闇バイトへの加担を防ぐことが、必要です。
それでは、またこのコラムでお会いできることを楽しみにしております。
上記詳細については、以下に筆者が取りまとめた論文がございますので御参照願います。
https://www.mgu.ac.jp/miyagaku_cms/wp-content/uploads/2026/02/141_P89.pdf
1月の心理学コラム:映画の話『ズートピア2』(担当:大橋智樹)
2026/1/15 >> 役に立つ!!心理学コラム
『ズートピア』は2016年に公開されたディズニー映画です。肉食動物と草食動物が仲良く暮らす街を舞台に展開されるお話は、私たち観客がもっている“偏見”をテーマとして扱った作品でした。物語終盤の大どんでん返しは、私たちの偏見を逆手に取った見事な展開で、世界中で大ヒットを記録しました。
その続編が2025年に公開された『ズートピア2』です。ヒット作の続編は一作目を超えるのが難しいと言われ、特に、観客の偏見をどんでん返しのネタとして使った『ズートピア』の続編はかなりハードルが高かったと言えるでしょう。私も実際に見るまでは、一作目を超えることはないと確信していました。偏見がテーマであると分かった以上、観客は予測をするし、その構えは作品のおもしろさを半減させるだろうと思ったからです。
しかし、その想像は良い意味で裏切られました。私たちの中にはまだまだちゃんと偏見があったし、そして、想像していたとしても気づけないこともあるということです。さらに言えば、観客が構えていてもそれでも面白い映画は創れるということかもしれません。
見抜いたつもりでいるかぎり、偏見は何度でも私たちを出し抜く。そんなメッセージを突き付けられたように感じる、素晴らしい映画です。
12月の心理学コラム:ラーメン二郎の心理学(担当:瀧澤純)
2025/12/11 >> 役に立つ!!心理学コラム
ラーメン二郎三田本店に行ってきました。二郎系、二郎インスパイア系、G系の総本山&聖地。太麺で、モヤシやキャベツがガツンと乗った、豚の香りが強い醤油ラーメンです。
「野猿街道2号店、中山店、ひばりが丘店、関内店、品川店、すべて制覇した。三田本店など敵ではない。」そう思っていました。しかし、手順やルールがわからない。さらに、並び順が入り口に近づくと、空気がピリピリ。半泣きになりながら、前に並んだ人、食べている人、厨房と、観察と模倣を続けました。スクリプト(※)が不十分でした。以下、三田本店で強化された私のスクリプトです。
※あらかじめ決められた一連の行動であり、状況を定義する知識構造(Shank, 1975)
—-
食券は買わずに列に並ぶ
入店まであと8人くらいになったらスマホをしまう
前の人が食券を買って戻ってきたら、列を出て店に入り、食券を買う。列に戻る
店員から「~番目の人!」と呼ばれたら、食券札を店員に見せる
店員から呼ばれたら座る。カウンターに食券札を置く。リュックは背負ったまま。
コールに答える。最初の人だけ「ニンニク入れますか!」、2人目以降は「はい次!」と言われるのでテンポよく返答する
ラーメンがきたら必死に食べる。リュックは背負ったまま。
店を出る
—-
写真は「小ぶたラーメン(ニンニク、アブラ)850円」です。完食。
Schank, R. C. (1975) Using Knowledge to Understand. In Theoretical Issues in Natural LanguageProcessing. (Schank, R. C. & Nash-Weber, B., eds), pp. 117-121. Tinlap Press
10月の心理学コラム:見られていることを意識させる効果について(担当:森康浩)
2025/10/20 >> 役に立つ!!心理学コラム
日常的に目のイラストが描かれたポスターを目にすることはありませんか?
先日、家族と盛岡に行ったところ、コンビニエンスストアに目のイラストと共に万引きを抑制するメッセージが掲示されていました。
このようなポスターが貼られるようになったのも、心理学の研究が発端になっています。
共用のコーヒーサーバーを使う際にミルクを使う際はお金を支払わなければならない状況で、なかなかお金を払ってもらえない状況が続きました。そのような状況を改善するために、花の画像と目の画像を掲示したところ、目の画像の方がお金を払う人が増えたという知見がもととなっています(Bateson, Nettle, & Roberts. 2006)。
このような知見をもとに、社会的に望ましい行動を促進したい場合に目のイラストが掲示されるようになりました。
しかし、このような効果がある一方で、どんな場所にでも貼れば効果があるのかというとそうではありません。自分の研究ですが、ポイ捨てが多いテーブルとベンチがある場所に目のイラストを掲示したところ、毎回剥がされるということがおきてしまいました。
人の視線を感じるとちゃんとしなければならないなと思う反面、落ち着ける場所では見られたくないなという効果が強く表われるようです。
このように、様々な場所で良い行動を引き出すためにいろいろな仕掛けが行なわれていますが、もとは心理学の知見から出ているものも多くあるので、探してみると面白いかもしれません。
Bateson, M., Nettle, D., & Roberts, G. (2006). Cues of being watched enhance cooperation in a real-world setting. Biology letters, 2(3), 412-414.
9月の心理学コラム:認知が感情を左右する①(担当:木野和代)
2025/9/19 >> 役に立つ!!心理学コラム
今年の日本心理学会の学術大会は、9月5日~7日に仙台で開催されました。様々な領域の研究発表があってとても刺激的でした。今は、収集した情報を整理して、さらに調べ物をしているところです。その中で面白い論文に出会いました。
日常生活でどの程度「認知バイアス」を経験するかを測る尺度を開発した論文です(※1)。ゼミ生の卒業研究に使えるかもしれないと思って読んでみると、約200種類の認知バイアスから代表的な80個が厳選されて、分類されていました。その中には感情心理学の授業で扱う現象も含まれていて、別の切り口から捉える面白さを感じました。
その一つが「皮肉なリバウンド効果」です。これは「あることを考えないようにしようとするほど、逆にそのことを考えてしまう」というものです。感情に絡めて例をあげると、不安や心配のもとになるネガティブな考えを抑えようとすればするほど、その考えが頭に浮かび、不安から抜け出せなくなる、といった具合です。
ちなみに、この効果を提唱したWegnerらの実験(※2)では、「シロクマ」について考えないように指示されたことから、「シロクマ効果」とも呼ばれています。
では、この認知バイアスを避けるにはどうしたらよいでしょうか? 授業中に、あることを考えないようにする体験をしてもらうと、数人はうまくできたと言います。聞いてみると、別のことを積極的に考えて注意をそらしていたとのことでした。Wegnerらの論文でも注意をそらすことの有効性について議論されています。
【文献】
※1:高比良美詠子、他 (2024). 認知バイアス・アセスメント尺度80(CBA-80)の開発 立正大学心理学研究所紀要, 22, 35-59.
※2:Wegner et al. (1987). Paradoxical effects of thought suppression. JPSP, 53, 5-13.







