Archive for the ‘役に立つ!!心理学コラム’ Category
8月の心理学コラム:映画『インサイド・ヘッド』(担当:木野和代)
2024/8/5 >> 役に立つ!!心理学コラム
8月1日にディズニー映画『インサイド・ヘッド2』が公開されましたね。
前作『インサイド・ヘッド』は11歳の少女ライリーの頭の中に5種類(5人)の感情がいて、この5人が司令部でライリーの行動を操っているという設定です。子ども向けのアニメかなと思っていたら、感情心理学の視点からも興味深い映画でした。
ライリーの頭の中にいる5人の感情は、感情心理学では基本感情にあたります。基本感情とは、文化普遍的・生得的と考えられている感情で、一般に喜び、悲しみ、怒り、恐れ、嫌悪、驚きの6種類が挙げられることが多いです。そして、各感情は環境に適応するための役割を持っていると考えられています。ネガティブな感情は厄介だなと思う方も多いと思いますが、これらにも意味があるのです。
ライリーの頭の中にいるヨロコビ、カナシミ、イカリ、ビビリ、ムカムカの5人も、彼女の頭の中でそれぞれの役割を果たしています。映画の中で、ヨロコビは、カナシミの役割を見出せずにいますが、二人でライリーの脳内を冒険するなかで、ライリーを守るには5人みんなが必要だと気づくのが見どころの一つだと思います。もう一つの見どころは、引っ越し直後のライリーが新しい環境への適応という課題に直面している状態であることではないでしょうか。だからこそこの5人の感情の役割がよく見えてくるように思います。まだご覧になっていない方は、ぜひ前作も観てみてください。
さて、今夏の続編はどうでしょう? 予告サイトをみていると、前作から少し成長したライリーの中に、新たな感情、それも自己意識がかかわるなど少し複雑な感情が登場しているようです。楽しみです!
7月のコラム:復活!対面での募金活動(担当:友野隆成)
2024/7/19 >> 役に立つ!!心理学コラム
心理行動科学科には,1年生の必修科目に「心理学実践セミナー」という科目があります。この科目は,受講者を3つか4つの班に分け,それぞれの班で設定されたテーマについて,具体的な内容を議論し,実際にデータを取って分析し,あるいは作品を作成して,一般に向け発表するという非常にユニークなものです。
私がこれまでに担当した班では,2011年~2018年の間に,主に東日本大震災の被災地支援のための募金活動を,簡便な実験や調査ともに本学の大学祭において対面で行ってきました。その後コロナ禍でオンライン募金活動に切り替えたり,そもそも授業を担当しない年度があったりと,2018年までに実施してきた形態での募金活動は暫くやっておりませんでした。2024年になり,久々に授業を担当することになりましたので,対面での募金活動を復活させることにしました。
現在,友野班のメンバー23名で,今年1月に発災した能登半島地震の被災地支援のための募金活動を中心としてさまざまな企画を考案しております。10月12日(土)・13日(日)に開催される本学大学祭におきまして,ブースを設置して募金活動を行いますので,大学祭にお越しいただき,活動の趣旨にご賛同いただける皆さまには,ご寄付いただけましたら幸いです。
6月の心理学コラム: 潜在化しやすい犯罪被害とは(担当:浅野晴哉)
2024/6/7 >> 役に立つ!!心理学コラム
宮城学院女子大学心理行動科学科の教員になり、1年が過ぎました。ゴールデンウイークが終わり、皆様方も本格的に学業や仕事に打ち込んでいるのではないでしょうか。一方、ペースが上がらないなど何となく疲れを感じている方は、1年前のコラムにおいて五月病について触れましたので御参照いただければ幸いです。
さて、今回は私の専門である犯罪被害者等支援に関して取り上げます。去る5月23日に宮城県庁講堂で「令和6年度宮城県犯罪被害者等支援連絡協議会総会」が開催されました。本総会は全面的に改正された「宮城県犯罪被害者等支援条例」(以下「改正条例」という。)施行後、初となる会議でした。また、僭越ながら「犯罪被害者等の心理と支援~潜在化しやすい犯罪被害の検討~」と題し、私が講演させていただきました。
その理由は、改正条例第21条に「被害が潜在化しやすい犯罪被害者等に対する支援」が掲げられているためです。被害が潜在化しやすい犯罪被害者等とは「子ども、障がい者、高齢者、性犯罪・性暴力被害者、配偶者からの暴力による被害者等」とあります。なぜ潜在化しやすいのでしょうか。例えば、第1に示された「子ども」の性犯罪被害は、監護者、教師、支援者及び塾講師など本来子どもを性犯罪から守り、かつ、性犯罪を受けたときに子どもが支援を求める信頼すべき大人が加害者になるためです。子どもは、本来支援を受けるべき大人からの被害であるからこそ、訴える力を失います。加害者はこれらの関係性に乗じて長期かつ反復した性暴力を繰り返し「被害が潜在化」します。その子どもは長期反復性の被害により、心のみならず身体にも甚大な影響を受けるのです。
これを防ぐには、このような犯罪被害を受けている人が多いという現実を、私たち一人一人が知ることです。つまり、現実を知り、これらの問題を「見逃すことができない」という認識が芽生え、潜在化した犯罪被害者等への支援体制構築につながるのです。
どうか、このコラムが皆様にとって、犯罪被害を潜在化させないという気運を醸成するための第一歩になることを祈念いたします。
それでは、またこのコラムでお会いできることを楽しみにしております。
4月の心理学コラム:桜とサクラ(担当:瀧澤 純)
2024/4/18 >> 役に立つ!!心理学コラム
仙台では桜が咲き、散り始めています。今回はカタカナの「サクラ」、つまり仕込みの偽客について書きます。
サクラでイメージされるのは、イベントや商売事で客のふりをして盛り上げる人だと思います。一方で心理学の実験でも、「実験について知っているのに、知らないふりをしている人」をサクラと呼びます。英語でいうと、confederate(共犯者・共謀者)やcooperator(協力者)です。
私の卒業論文や修士論文は、ペアのうち一人が言葉で指示をするサクラで、もう一人の実験参加者が指示を理解するときの視線や手の動きを検討しました(瀧澤,2010)。下の画像は実験参加者の視点を簡略化したものです。電池が入った箱と、その奥にいるサクラが見えます。実験前にはサクラに「この場面では『大きい電池を下に動かして』と言ってください」などの仕込みをして、指示の言葉が一定になるようにしました。また、サクラには実験の仮説を教えないようにしたり、実験の内容を知らないふりをする練習をしたり、サクラの方も大変な思いをしながら協力してくれました。
私にとってサクラとは、出会いと別れを想像させる花であると同時に、大学生と大学院生時代の思い出がよみがえる言葉です。あなたにとってのサクラはどんなものですか。
文献
瀧澤純 (2010). 指示対象の理解における自己中心性に及ぼす学習の効果 首都大学東京・東京都立大学心理学研究,20,37-44.
2月の心理学コラム:病は気から(担当:友野隆成)
2024/2/26 >> 役に立つ!!心理学コラム
先日,何十年ぶりかで高熱を出してしまいました。これまではそれほど高い熱は出ませんでしたし,一晩寝れば元気になっていました。しかし,今回はそうはいかず,さすがにこれはおかしいと思い,病院へ行って検査してもらいました。その結果,とある流行り病に罹患しておりました(コロナでもインフルでもありませんでしたが)。
大学では,ちょうどこの時期は入試関連業務でてんやわんやする頃で,私もいくつかお役目を頂戴しておりました。しかし,流行り病の影響でそのお役目に穴をあけることになってしまったため,体だけでなく心も沈んでいってしまい,ある意味苦しい日々を過ごしました。開き直って休めば良いと思ってはおりましたが,中々そう簡単に切り替えることはできないものですね…。
健康心理学には,“心身相関”という言葉があります。心と体は密接な関係があり,互いに影響を及ぼしあっているといったような意味です。今回の場合,私が流行り病に罹ってしまった影響で,心もやられてしまいました。一方,“病は気から”という言葉があるように,もう少し気持ちを強く持っていれば,流行り病の影響もいくらか和らいだかもしれません。このような感じで,心と体の密接な関連を再確認した日々でした(私のようにならないように,皆さんもどうぞご自愛ください)。