Archive for the ‘役に立つ!!心理学コラム’ Category
12月の心理コラム:他職種から多職種協働による犯罪被害者等支援(担当:浅野晴哉)
2024/12/5 >> 役に立つ!!心理学コラム
毎年、11月25日から12月1日までは犯罪被害者週間です。私は犯罪心理学ゼミ生5人と11月25日仙台駅において宮城県警察主催の犯罪被害者等支援広報啓発に参加いたしました。他に参加した団体は、(公社)みやぎ被害者支援センター、宮城県、仙台市、蔵王町、登米市、女川町であり、産官学の協働により県民に犯罪被害者等の実情を理解していただき、支援が促進されるようお声を掛け、リーフレットなどを手交しました。また、同駅ステンドグラス前では、交通事故などで家族を失った御遺族が中心となり亡くなられた方の等身大のオブジェを展示する「生命のメッセージ展」が開催され、一層犯罪被害者等支援の気運が高まりました。同展を開催された方ともお話ができ、とても有意義な時間を共有でき、さらに学生が広報啓発に一翼を担う機会をいただき、宮城県警察を始めとする関係機関の方々に感謝申し上げます。これらについては本学社会連携課HP及び河北新報11月26日朝刊に掲載されております。
同広報啓発には宮城県鉄道警察隊木村隊長も参加なされました。同木村隊長は私が県警在職中に困難を抱えた際には適切かつ明確に歩む道を導いてくださった上司です。隊長の信条は「不平・不満は弱者の論理」です。この言葉のとおりどのような仕事に対しても真摯に取り組まれ、その姿勢から多くを学ばせていただいたおかげで、現場においては警察官と心理職という他職種協働が実現できました。さらに、今回は広報啓発を協働でき、同活動終了後に隊長の御厚意により、隊長室で学生と共に歓談しました。学生にとっては現場を実際に見て体験できる貴重な経験となり、木村隊長以下隊員の皆様にこの場をお借りして感謝申し上げます。
さて、私は心理職であるため隊長を始めとする警察官との協働は、他職種協働と言えます。犯罪被害者等の視点に立つと、警察官、検察官、弁護士、地方公共団体及び民間支援団体等多くの専門家との協働、いわゆる多職種協働が必要になります。まさに今回の広報啓発活動は産官学多職種協働でした。今後とも犯罪被害者等支援における多職種協働に微力ながら尽力したいと考えております。
それでは、またこのコラムでお会いできることを楽しみにしております。
10月の心理学コラム:認知科学のススメ(担当:瀧澤純)
2024/11/15 >> 今月の心理行動科学科, 役に立つ!!心理学コラム
10月に行われた日本認知科学会第41回大会に参加しました!
認知科学とは、知覚、記憶、思考などの知的機能(=認知)を研究する学問です。認知心理学と比べると、認知科学は計算機科学や工学的アプローチの要素が強いという特色があります。
今回の大会で私が感じたのは、「認知科学は ①脳神経活動のような研究から、現場感の強い研究まで幅広い ②心理学と同じく統計的仮説検定も使うけど、結果を視覚的に伝えることを重視する ③発表中に冗談を言ったり研究の困りごとを公表したりする発表もある」ということです。
③に関して、とある発表の終盤に「この研究には、これだけの人が関わってくれました(大勢の共同研究者の顔写真が画面に表示され、会場が感動的な空気に包まれる)……でもこれらの研究ができたのもすべて私のおかげです!」という主旨の発言をした方がいて、会場は笑いに包まれていました。
研究では厳密さや成果が重要なのは当然ですが、研究者自身が感じる「おもしろさ」を大切にする姿勢や、自分の研究が途上であるという謙虚な姿勢があり、みなさん素敵でした。
今回の大会のページでは、発表の原稿を読むこともできます。認知科学を学んでみませんか。
8月の心理学コラム:映画『インサイド・ヘッド』(担当:木野和代)
2024/8/5 >> 役に立つ!!心理学コラム
8月1日にディズニー映画『インサイド・ヘッド2』が公開されましたね。
前作『インサイド・ヘッド』は11歳の少女ライリーの頭の中に5種類(5人)の感情がいて、この5人が司令部でライリーの行動を操っているという設定です。子ども向けのアニメかなと思っていたら、感情心理学の視点からも興味深い映画でした。
ライリーの頭の中にいる5人の感情は、感情心理学では基本感情にあたります。基本感情とは、文化普遍的・生得的と考えられている感情で、一般に喜び、悲しみ、怒り、恐れ、嫌悪、驚きの6種類が挙げられることが多いです。そして、各感情は環境に適応するための役割を持っていると考えられています。ネガティブな感情は厄介だなと思う方も多いと思いますが、これらにも意味があるのです。
ライリーの頭の中にいるヨロコビ、カナシミ、イカリ、ビビリ、ムカムカの5人も、彼女の頭の中でそれぞれの役割を果たしています。映画の中で、ヨロコビは、カナシミの役割を見出せずにいますが、二人でライリーの脳内を冒険するなかで、ライリーを守るには5人みんなが必要だと気づくのが見どころの一つだと思います。もう一つの見どころは、引っ越し直後のライリーが新しい環境への適応という課題に直面している状態であることではないでしょうか。だからこそこの5人の感情の役割がよく見えてくるように思います。まだご覧になっていない方は、ぜひ前作も観てみてください。
さて、今夏の続編はどうでしょう? 予告サイトをみていると、前作から少し成長したライリーの中に、新たな感情、それも自己意識がかかわるなど少し複雑な感情が登場しているようです。楽しみです!
7月のコラム:復活!対面での募金活動(担当:友野隆成)
2024/7/19 >> 役に立つ!!心理学コラム
心理行動科学科には,1年生の必修科目に「心理学実践セミナー」という科目があります。この科目は,受講者を3つか4つの班に分け,それぞれの班で設定されたテーマについて,具体的な内容を議論し,実際にデータを取って分析し,あるいは作品を作成して,一般に向け発表するという非常にユニークなものです。
私がこれまでに担当した班では,2011年~2018年の間に,主に東日本大震災の被災地支援のための募金活動を,簡便な実験や調査ともに本学の大学祭において対面で行ってきました。その後コロナ禍でオンライン募金活動に切り替えたり,そもそも授業を担当しない年度があったりと,2018年までに実施してきた形態での募金活動は暫くやっておりませんでした。2024年になり,久々に授業を担当することになりましたので,対面での募金活動を復活させることにしました。
現在,友野班のメンバー23名で,今年1月に発災した能登半島地震の被災地支援のための募金活動を中心としてさまざまな企画を考案しております。10月12日(土)・13日(日)に開催される本学大学祭におきまして,ブースを設置して募金活動を行いますので,大学祭にお越しいただき,活動の趣旨にご賛同いただける皆さまには,ご寄付いただけましたら幸いです。
6月の心理学コラム: 潜在化しやすい犯罪被害とは(担当:浅野晴哉)
2024/6/7 >> 役に立つ!!心理学コラム
宮城学院女子大学心理行動科学科の教員になり、1年が過ぎました。ゴールデンウイークが終わり、皆様方も本格的に学業や仕事に打ち込んでいるのではないでしょうか。一方、ペースが上がらないなど何となく疲れを感じている方は、1年前のコラムにおいて五月病について触れましたので御参照いただければ幸いです。
さて、今回は私の専門である犯罪被害者等支援に関して取り上げます。去る5月23日に宮城県庁講堂で「令和6年度宮城県犯罪被害者等支援連絡協議会総会」が開催されました。本総会は全面的に改正された「宮城県犯罪被害者等支援条例」(以下「改正条例」という。)施行後、初となる会議でした。また、僭越ながら「犯罪被害者等の心理と支援~潜在化しやすい犯罪被害の検討~」と題し、私が講演させていただきました。
その理由は、改正条例第21条に「被害が潜在化しやすい犯罪被害者等に対する支援」が掲げられているためです。被害が潜在化しやすい犯罪被害者等とは「子ども、障がい者、高齢者、性犯罪・性暴力被害者、配偶者からの暴力による被害者等」とあります。なぜ潜在化しやすいのでしょうか。例えば、第1に示された「子ども」の性犯罪被害は、監護者、教師、支援者及び塾講師など本来子どもを性犯罪から守り、かつ、性犯罪を受けたときに子どもが支援を求める信頼すべき大人が加害者になるためです。子どもは、本来支援を受けるべき大人からの被害であるからこそ、訴える力を失います。加害者はこれらの関係性に乗じて長期かつ反復した性暴力を繰り返し「被害が潜在化」します。その子どもは長期反復性の被害により、心のみならず身体にも甚大な影響を受けるのです。
これを防ぐには、このような犯罪被害を受けている人が多いという現実を、私たち一人一人が知ることです。つまり、現実を知り、これらの問題を「見逃すことができない」という認識が芽生え、潜在化した犯罪被害者等への支援体制構築につながるのです。
どうか、このコラムが皆様にとって、犯罪被害を潜在化させないという気運を醸成するための第一歩になることを祈念いたします。
それでは、またこのコラムでお会いできることを楽しみにしております。