Archive for the ‘役に立つ!!心理学コラム’ Category

7月のコラム:学内業務と自己複雑性(担当:友野隆成)

2023/7/12 >> 役に立つ!!心理学コラム

昨年度のコラム で,私が学科長になった旨を書きました。しかし,元々の任期は1年であったため,昨年度末でお役御免となり,今年度から新たに大学院の研究科長となりました。その他,新たなお役目を今年度は複数お引き受けすることになりました。慣れないことも多々ありますが,日々勉強です。

ところで,心理学には自己複雑性(Linville, 1985)という概念があります。この概念の厳密な定義は,文字通り複雑です。ざっくり言いますと,①「自分のことを表わす特徴にいくつの側面があるか」と,②「それらの側面が互いに分化しているか」で,自己複雑性の高さが表わされます。ちなみに,自己複雑性が高い人は心身ともに健康であることも示されています(Linville, 1987)。

大学の業務に限定された話になってしまいますが,今年度の私に当てはめてみますと,①に関しては昨年度に比べてお役目の数が増えている(e.g. 研究科長,○○委員会座長,△△委員会委員,××委員会委員,その他諸々)一方で,②に関しては主観的にはあまり分化していないように思います(中身は違えども学内業務という共通点がありますので…)。よって,このコラムを執筆している時点での私の自己複雑性は,高くもなく低くもなくというところでしょうか。年度末までには各側面の分化度を高めて,自己複雑性を少しでも高くしたいものです。

文献
Linville, P. W. (1985). Self-complexity and affective extremity: Don’t put all of your eggs in one cognitive basket. Social Cognition, 3, 94-120.
Linville, P. W. (1987). Self-complexity as a cognitive buffer against stress-related illness and depression. Journal of Personality and Social Psychology, 52, 663-676.

 

今年度の私の自己概念イメージ(学内業務のみ)

6月の心理学コラム:食べることの心理学(担当:千葉陽子)

2023/6/27 >> 役に立つ!!心理学コラム

食べることが好きです。小学生の頃、給食で余ったヨーグルトのじゃんけん争奪戦で1週間勝ち続けたのは私です。

さて、皆さんは共食と孤食、個食という言葉をご存知ですか?私を例にすると、たとえ塾や部活動で遅く帰宅しても、必ずそばに誰かがいて会話しながら食事をする環境を両親が与えてくれていました(共食)。自分だけ家族とは別の食べ物を食べること(個食)は到底許されず、当時は窮屈さを感じていたものです。独り暮らしを始めた頃は、アパートで一人(孤食)でご飯を食べなければならず、全然味がしないもんだと戸惑ったものです。現在は、共食、孤食それぞれの良さを知り、美味しいという感覚に違いはなくなりました。共食は「何を食べるかよりも誰と食べるか」が大事と思いつつも、でもやっぱり根が食いしん坊なのでせっせと美味しそうなお店を探し、提案しています。

従来の研究では、孤食よりも共食時の方が美味しさの評価が高いといわれています。食べ物自体への評価というより、共食者との会話といった相互性の程度が重要ということが明らかになっています。また、摂食量については、共食により増加し、孤食よりも栄養摂取面において望ましい食事になるという結果が示されています1)。確かに、色んな料理をオーダーして皆でシェアできるのが、共食の醍醐味ですね。

スマホを見ながら食事をしていませんか?ながら食べは唾液や消化酵素の分泌がされにくく、健康への悪影響が懸念されています。お腹も心も満たされる食事をしたいものです。

写真は、最近食べたかき氷(マサラチャイ、瀬戸内レモンミルク、あんず麦茶しるこ)です。

1) 山中祥子・長谷川智子・坂井信之(2016). だれかと食べるとたくさん食べる?だれかと食べるとおいしい? 行動科学, 54(2) 101-109.

 

5月の心理学コラム:仙台あるある、早く知りたい(担当:瀧澤 純)

2023/5/10 >> 役に立つ!!心理学コラム

瀧澤純です。この4月に赴任した認知心理学の教員です。私はこの3月までは秋田市に住んでいました。今回は宮城県と秋田県の方言について気づいたことを書きます。

まず、同意する意味で使う「んだ」や、「そうそう」とあいづちをうつ「(ん)だから」は、仙台でも秋田でも共通して耳にします。一方で、「んだっちゃ」は仙台では耳にしますが、秋田では聞かないです。東北の方言にもバリエーションがあるわけですね。

方言のイメージを調査した研究はいくつかあるのですが、宮城県と秋田県は「東北地方」ということで一つのグループにされがちです。回答者自身が話す方言についてのイメージ評価から、東北弁は東京弁と比べて感情が豊かだと評価されるものの、知的に高いとは評価されないことがわかっています。でもこれは1980年代の研究ですので、現代では結果が変わるかもしれません。

ちなみに、秋田には方言以外にも独特な文化があります。コンビニで食品を買うと(お願いしていないのに)お手拭きがついてくるとか、修学旅行中の児童生徒を応援するテレビCMが流れるとか。仙台の文化も知っていきたいです。

運転席から見た秋田市の夕日(筆者撮影)

 

4月の心理学コラム:春といえば「知る」「気づく」「つながる」(担当:浅野晴哉)

2023/4/26 >> 役に立つ!!心理学コラム

はじめまして。私は、本年4月1日に犯罪心理学担当として着任しました浅野と申します。もちろん、本サイトの登場は初めてになりますので、簡単に自己紹介をします。

私は、本年3月までは宮城県警察、それ以前は児童相談所や中学校において心理臨床をしておりました。今回は、その経験から「春」に関連する心理的反応と対応について紹介します。

春といえば、寒さ厳しい冬が終わり、活動的になる一方、入学、人事異動等環境の変化から対人関係においてストレスを抱える季節です。ゴールデンウィークを過ぎたあたりから、いつの間にか体調不良に悩まされ、学校や会社において疲弊し、時には、家から出ることも難しくなる方もおられます。これは、一般に、五月病と言われる反応かもしれません。そのような場合は医療機関や心理職に相談するのが最善ですが、ここでは、心理臨床家としての対処方法を提案します。

1つ目は、「知る」ことです。最近、新入生と対話していると、新しい環境に適応するため疲弊している様子が見受けられます。時には気分の落ち込み、集中力の低下、食事や睡眠の乱れなどの反応が現れることもあります。つまり、春という時期は、誰もがこれらの反応が現れやすい時期であるということを知識として「知る」ことが大切です。

2つ目は、「気づく」ことです。この時期の心理的反応について知ることで、「やる気が出ない」「何となく疲れる」など自分の心理的反応について「気づく」ことが可能になります。その結果、セルフチェックとして生活習慣の見直し、休養、趣味や落ち着ける時間の確保など自分自身をケアすることができることから、「気づく」ことが大切です。

3つ目は、「つながる」ことです。家族、友人、先生などに話し「つながる」ことで、孤立感の防止や環境要因への配慮を受けることも可能になります。加えて、専門の医師や心理職、身体に不調が現れた際にはかかりつけ医に通院することも「つながる」ことです。ココロのみならず自分自身全体をケアするためにも「人」と「つながる」ことが大切です。

さて、皆さんへのメッセージとして「知る」「気づく」「つながる」について紹介しました。私自身を振り返りますと、今の私に一番必要なテーマであったと「気づき」ましたので、このコラムをとおして皆さんと末永く「つながる」ことといたします。今後ともよろしくお願い申し上げます。

3月の心理学コラム:スポーツにおける色の効果(担当:千葉陽子)

2023/3/30 >> 役に立つ!!心理学コラム

2022年度は、仙台育英甲子園優勝、FIFAワールドカップ、WBCと画面越しに心を震わせる機会がたくさんありました。WBCのメキシコ戦での超劇的サヨナラ勝利の場面を何度も動画で再生しては、元気をもらっている今日この頃です。2023年は、9月からラグビーのワールドカップが始まるとのことで、今からワクワクしています。

さて、今回はスポーツにおける色の効果についてお話ししたいと思います。スポーツ界では色彩心理学の知見に基づいた意図的な色の活用がなされています。まず、日本代表クラスのユニフォームには、メッセージが込められていることが多いです。サッカー日本代表のユニフォームは年々デザインが変わっても青を基調としています。この理由について日本サッカー協会は「日本の国土を象徴する海と空の青と一般的に考えられていますが、実際は後付けの理由で、なぜ青なのかという文献は残っておらず不明です」と述べています。青は、冷静や落ち着きを象徴しているとも推測されます。集中力を乱すことなく強豪国と戦うという点では、敵色なのかもしれません。また、ダーラム大学(2005)の調査では、ユニフォームの色と勝敗との関係を調べています。アテネオリンピックで実施された3つの競技のユニフォームの色と勝敗の関係を検討した結果、55%の確率で赤の勝率が高いことがわかりました。その他にも、GKのユニフォームが赤の場合、セーブ率が最も高くなるという研究(Greenlees, 2010)もあります。つまり、赤色のユニフォームは、闘争心を高める一方で緊張状態を誘発する側面を持つため、相手に無言のプレッシャーを与えており、スポーツのユニフォームにおいて敵色である可能性が高いということです。

皆さんが部活動で着用していたユニフォームは何色でしたか?赤の方が多いでしょうか。その理由について探ってみると、部活動の歴史・文化・浪漫を垣間みることができるかもしれません。

最近観た映画「THE FIRST SLAM DUNK」湘北高校の強さの秘訣はユニフォームにあり!?