昨年度「みやぎ銀鮭プロジェクト」にご支援いただいた,大塚商会ハートフル基金より助成を受けて,今年度は「閖上の食と暮らし復興支援プロジェクト」を実施することになりました。

プロジェクトの内容は,東日本大震災で被災した閖上地区の方々から,震災前の閖上地区の日常食や行事食について聞き取りを行ったり,それらの食を受け継いでいくことについて若い人たちと話し合いを行い,最終的にはそれらをまとめた冊子「閖上-四季の暮らしと食」を制作し,閖上の人々が復興後の暮らしと食を考える契機となる活動を実施します。

活動は,本学食品栄養学科で管理栄養士養成課程の学生たち22名が行います。 これからの活動にご期待ください!

第2回閖上復興支援プロジェクト報告

私たちは現在、閖上の食冊子「閖上-食と暮らし 東日本大震災を超えて遺したいもの」を作成しています。10月6日(火)に美田園第一団地を訪れ、仮設住宅のみなさん、朝市や水産業に関わる方から話を伺ってきました。

■むかしのおやつ作りを教わる―どんどん焼き
「昔」と「現代」の2種類のどんどん焼きを一緒に作りました。キャベツ、ねぎ、小麦粉、鰹節がベースの生地で、現代のものには更に魚肉ソーセージ、紅しょうが、卵、天かすが加わります。皆さんで「これはどのくらい入れる?」や「もっと入れていいっちゃ」など話し合いながら作っていて、“思い出し、作る”ことを通して、みんなで楽しんでいる様子が伺えました。 昔のどんどん焼きは、生地がもちもちとしていてシンプルな味が特徴でした。現代のどんどん焼きは、紅生姜が加わったことで味にアクセントがあり、さらに卵を使用しているため、生地がややふわっとしていて、また違った味を堪能することができました。

それに、手作りの漬物や、季節の果物、はらこ飯などをもってきてくださる方もいて、みんなでお腹いっぱいになるまで食べ、充実したひと時を過ごすことができました。「昔は、まだ生焼けの状態でも、子どもたちが早く『食べたい、食べたい』と言っていたね~」や「隣の家のどんどん焼きのにおいを嗅いで、うまそうだなあ思っていたなあ」などと昔話も盛り上がり、皆さんが楽しそうに話している姿をみて、今回のような活動も復興の一環になっていると感じました。


■現役五十集(いさば)、閖上朝市、マルタ水産の方から話を聞く

食冊子の「閖上の食の商い」ページ作成のため、現役の女子五十集の方と、閖上朝市、マルタ水産さんにお話を伺いました。 はじめに、現在も閖上で五十集をしている星ケイ子さんに直接お話を聞かせていただきました。 女子五十集とは魚を売り歩く女の行商人という意味で500年もの歴史があり、最盛期には400人もの方が五十集をしていたそうです。また、背負う籠には多い時には60kgもの魚を入れて歩いていたようです。現在唯一続けておられる星さんは、お得意さんの家に電車や自転車で新鮮な魚を届けているそうで、人との付き合いを大切にしていることがわかりました。
閖上朝市では、事務局の若山さんに伺うことができ、「朝市の復興は、生業のためだけではなく、文化や人との交流のために行っている」ということがわかりました。朝市は36年の歴史をもっており、初めは地域のものを集めて売っていたそうですが、次第に買いに来てくれる人との交流を目的として行うようになったそうです。

最後に、焼きカレイなどを扱う(有)マルタ水産の相澤さんに、赤貝の歴史や漁業に関するお話を伺いました。赤貝は戦後から獲りはじめたとのこと、昔は多く獲れていたイワシが昭和50年頃から赤貝に変わったそうです。また、閖上の砂地が赤貝を獲るのに最適であることが、赤貝がよく獲れる理由であることが分かりました。
今回様々な方にお話を伺い、閖上の人と人の繋がりの濃さが食にも表れていることを強く実感しました。

また、名取駅のウィングロードでの展示に続き、10月15日(木)から名取図書館で閖上プロジェクトの展示が始まります。今回は多くのみなさんに閖上マップを記入してもらいたいと思い、書き込み用の閖上マップも設置しています。少しでも多くの方に閖上の食に興味をもっていただき、それぞれの閖上食マップを作っていただけたら嬉しいです。
大塚商会の皆様の温かなご支援に感謝申し上げます。

美田園第一団地のみなさんとワイワイ話をしながらどんどん焼きを食べました

どんどん焼きの作り方を教わり、やや緊張しながらも頑張って作りました。

おなご五十集、現役たったお一人の星ケイ子さん 笑顔がなんともいえません。

閖上朝市の若山さんは、震災後の活動について、丁寧に話をしてくださいました。

第1回閖上復興支援プロジェクト報告

閖上復興支援プロジェクトは、宮城学院女子大学全体で活動しています。その中でも食品栄養学科の平本ゼミでは4年生2名を中心に、閖上独自の食文化・食習慣を残したいと活動しています。具体的には、閖上地区に住む中高年者に聞き取りを行い、食の歴史を伝承するとともに、若い世代がこれからの閖上を一緒に考える機会になるような冊子(媒体)を制作する予定です。また、この冊子を制作するプロセスを閖上の方々と一緒に進めていくことにより、制作プロセスそのものも復興活動とすることを目標としています。

第1回報告では、今までの活動を多くの方々に見てもらったことを記させていただきます。8月1日(土)~15日(土)名取駅のウィングロードで、閖上プロジェクトの展示を行いました。この展示では、閖上の様々なお店や施設が記入してある「閖上食マップ」、一人ひとりの食の生活がわかる「わたしの閖上“食”マップ」、閖上独自の食習慣である「おまがね」に関する情報を展示しました。
私たちはこの展示のために、名取市にある仮設住宅“美田園第一団地”の方々にご協力をいただき、何度か訪れ情報収集を行いました。

震災前は閖上に住んでいた方々から閖上の文化や習慣など、生活と食に関するお話を中心に教えていただきました。また、「閖上食マップ」作成のため、皆で地図を囲みながら利用していたお店や施設を記入したり、一人ひとりとお話をしたりすることで、その方の食の暮らしを振り返り、「わたしの閖上食マップ」を作成しました。

さらに、閖上の食文化のお話をお聞きした際、私たちは、“おまがね”という閖上独自の食習慣(食文化)に興味を持ちました。“おまがね”とは、もとは漁師から分けてもらった魚をさしており、漁師町として栄えていた閖上ならではの方言です。現在では、魚だけではなく、野菜などの食材や調理した料理をもらった場合も「おまがね」と呼ばれています。ただ、「おまがね」は食卓のおかずやその材料のことで、お菓子などは含まれていません。このように、食材や料理をもらうことは、そのお返しに食物をあげることに繋がり、“あげたり、もらったり”の習慣が、閖上地域の人と人をつなぐものであることが分かりました。

今回の名取駅の展示を多くの方に見ていただくことで、閖上の方々には震災前の暮らしを振り返る機会になってもらえたらと思います。また、閖上以外の方々にも、閖上の食について知っていただき、復興への関心をもってもらえたらと思います。 大塚商会の皆様の温かなご支援に感謝申し上げます。

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