11月の心理学コラム:映画の話し『どうすればよかったか?』(担当:大橋智樹)

2024/11/10 >> 役に立つ!!心理学コラム

私はかつて精神科の単科病院の心理士として勤務していたことがあります。そこではさまざまな心の病を抱えた患者さんと出会いました。中でも、幻覚や妄想が特徴とされる統合失調症は入院期間が数十年になるようなケースも珍しくない病でした。

この映画は、統合失調症を発症した姉を、映画監督になった弟が一緒に暮らす両親とともに撮影し続けたドキュメンタリーです。

統合失調症を発症した人を目の当たりにしたことのない人にとっては、その症状の激しさにまずは驚くかもしれません。しかしこの映画の主題はそこではなく、その家族がそのこととどのように苦しみ、どのように目をつぶり、どのように折り合いをつけてきたか、その20年間の記録なのです。親子、姉弟、そして夫婦の愛と葛藤が描かれています。その折々に、タイトルである「どうすればよかったか?」を、登場人物たちに自分を重ねて“自問”し続けることになるのです。

統合失調症の人を家族にもつ人は多くはないかもしれません。しかし、人生にはさまざまな困難が立ちはだかるものです。それでも前に進まねばなりません。どうすればよかったか?は誰にでも突きつけられる問いなのです。

そんなことを突き付けられる良い映画でした。「こんな映画がありますよ。先生、好きかも?」とわざわざ連絡をくれた卒業生に感謝です。ありがとう。

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