5月の心理学コラム 「文明の利器」 (担当:友野隆成)

2015/5/15 >> 役に立つ!!心理学コラム

ゴールデンウィークに,家の掃除をしました。その際に,写真のような分厚いファイルが出てきました。これは,今から10数年前,私が学部4年生だった頃に,卒業論文執筆のために統計パッケージSASを使って分析した結果のアウトプットを綴じ込んだものです。

当時は,情報教室のパソコンから大型計算機にアクセスし,分析結果は1台しかない専用のプリンターに電話帳のような束が出力されてくる,という時代でした。私の先に分析した人たちが沢山いると,アウトプットが中々出てこなくて,イライラして待っていたものでした。

ところが,当時から更に10数年前,私の先輩が学部生だった頃には,大量のパンチカードを読み込み装置に読み込ませ,半日経って漸く結果が出力されていた,というような話を以前先輩から聞いていました。そして,その頃よりも更に昔は,因子分析を1つやるだけで何カ月もかかるとかかからないとかという,非常に気の遠くなるような話も聞いていました。それに比べたら,私が学部生だった頃に感じたイライラは,先人たちに比べたらぜいたくな悩みだったのかもしれません。

一方,今はどうでしょう。パンチカードも大型計算機も使わず,クリック一つで複雑な分析結果が普通のパソコンであっという間に出力されてきます。電話帳のような束も出てきません。無料で使える統計パッケージもあり,たかだか10数年の間だけでも格段に分析環境は良くなっています。

文明の利器は想像以上のスピードで便利になっていきますが,それに伴い見失ってしまうものもあるように思います。効率優先の昨今,大事なものを見落とさないようにしたいものだと,分厚いファイルを眺めながらふと思いました。

 

Comments are closed.