Archive for 11月, 2019

11月の心理学コラム:科学に対する関心の男女差?その秘密?(担当:木野和代)

2019/11/12 >> 役に立つ!!心理学コラム

今年は1年次必修科目「心理学実践セミナー」で、1年生たちとジェンダー・ステレオタイプをテーマに研究してきました。現在、10日後に迫った「ココロサイコロ2019」での発表に向けて資料を作成しているところです。ちょうど河北新報のサタデーコラムWITH Ms.の執筆担当月だったので、このテーマに関する心理学の研究、子どものおもちゃ選びの実験を紹介しました(11月23日掲載予定)。これは私が生まれた頃の研究でしたが、ここでは学生たちが生まれた頃の研究を紹介します。
その研究は、子ども博物館の様々な展示の前でなされた8歳以下の子どもと親の会話を観察したものです。どんな会話や行動があったかをカウントしていくと、親からの科学的な考え方の説明の割合(特に因果関係)が、子どもの性別によって違っていました。女の子よりも男の子に対しての方が約3倍多かったのです。そしてこうした説明は子どもからの質問に答えて行われたというわけではありませんでした。この研究で特に注目されたのは、このような傾向が1歳から3歳までの子どもたちに対しても見られたことです。つまり、幼稚園や学校で学ぶ前から、男の子の方に対しての方が科学に関する関心を引き出すような働きかけが家庭でなされているのです。
このような固定観念に基づく親の行動が、古くからいくつもの研究によって明らかにされてきましたが、今の社会ではどのようでしょうか?

ココロサイコロでの発表ポスター(1枚目)

引用文献:
Crowley, K., Callanan, M. A., Tenenbaum, H. R., & Allen, E. (2001). Parents explain more often to boys than to girls during shared scientific thinking. Psychological Science,12, 258-261.

【実践研修】「日本パーソナリティ心理学会第28回大会」参加報告

2019/11/6 >> イベント報告

2019年8月28日(水)・29日(木)に武蔵野美術大学(以後ムサビ)で開催された日本パーソナリティ心理学会第28回大会に、本学科3年生6名が参加してきましたので、大変遅くなってしまいましたがここにご報告いたします。

日本パーソナリティ心理学会は、パーソナリティ研究に関心をもつ人たちの学術的な集まりで、必ずしも心理学だけではなく、医療、社会科学、教育、福祉など近接領域の研究者や実践家にも門戸が開かれております。また、学会運営を担う各種委員会の委員に若手が多いことが特色です(私も、現在担当しているものを含めていくつかの委員をこれまでに務めさせていただきました)。今回は「都会の喧騒を抜けだし、パーソナリティ心理学会が何か挑戦するというので武蔵野の美術の学び舎の方へ」をテーマに、約120件を超える発表がなされたとのことです。

今回の学会大会は、私の大学院時代の同期が大会準備委員長を務めることもあり(その流れで当方準備委員を担当することになり)、なおかつ美術大学での心理学の学会大会開催というとてもレアな機会だからと熱く宣伝したことが功を奏し、夏休み期間中の開催であることも手伝って6名の3年生が参加希望を表明してくれました。大会参加前に、抄録の内容を中心とした事前学習をしっかりしてからムサビへ向かいました。

大会当日は、シンポジウム、講習会、ポスター発表という異なる発表形式で興味があるセッションに各々参加し、疑問点を発表者に質問するなどして、自分たちなりにそれぞれの発表のテーマについての理解を深めていたようでした。また、心理学と美術という、普段なかなか聴くことができないエキサイティングな内容の発表もあったため、授業とはまた違った刺激を受けて帰仙してきました。帰ってきてからは皆レポート執筆に悪戦苦闘していたようでしたが、最終的には総じて大会に参加したことがとてもよかったという報告をしてくれました。

以下に、レポートに書いてくれた感想の一部をご紹介させていただきます。

・今回、アートとパーソナリティというテーマで創造性や美術製作を大人数で考える機会が設けられた。アートと心理学という珍しい組み合わせについて真剣に議論することができる貴重な機会だ。これは心理学という分野において新たな挑戦として捉えることができるだろう。
・パーソナリティ心理学会に参加するのは初めてであったので、様々な発表を見ることができてとても充実した2日間であった。美術大学ということで、空き時間に大学内を歩き回ったり、隣接する美術館を見学したりと、違う体験をすることもできた。
・シンポジウムで一番印象に残っていることは質疑応答のときの実験参加者に配慮してほしいという言葉である。発言者は講演を聞いて配慮が足りてないと感じたようで、私はそのことを全く考えていなかったので驚いた。前期の心理学研究法概論などで実験協力者の倫理的配慮のことは習っていたがそこまで考えたことがなく、今回のことで今後自分の意識を変えようと感じた。
・会いたい先生に会えたことや、友野先生の学校とは違う一面が見ることができたこと、宮学にはいないようなタイプの、宮学の先生とはまた違った個性的な先生に出会えることは学会の魅力に感じた。直接、先生から説明されるのはわかりやすいし、わからないことや疑問に思ったことは聞けることが学生のわかるに繋がり、そして心理学がより楽しいと思えるいい機会であった。ぜひ、興味のある学生は自分の知らない世界を見るという側面でも、怖がらず参加してほしい。
・さまざまな研究を見て、今までは思い浮かばなかったけど気になることを研究にしている人が多く、そのようにあまり重視されないけど多くの人が注目する、といった研究が一番興味を持たれるのだなと感じた。今回学んだことをもとに卒論にむけた準備に励みたいと思う。
・パーソナリティ心理学という分野が絞られた学会ではあったものの、多種多様な研究があって面白かったし、この学会に参加しなかったら出会えなかったような先生方の話を聞けて非常に勉強になった。また、発表する人は東京近辺の大学の先生や院生が多いと自分の中で勝手に思い込んでいたが、全国の大学から集まっていて貴重な経験になったと感じた。会場や規模、心理学の分野によっても学会の雰囲気はがらりと変わりそうだと感じたので、また機会があればいろんな学会に参加してみたいと感じた。

今回、初めて学会大会に参加した人も多く、また連日の猛暑でムサビ周辺もかなり暑くなっていたため、暑さと緊張で心身ともにとても疲れたのではないかと思います。しかし、それを補って余りある経験をしたことがレポートからも垣間見られました。また、私の知り合いの先生が「宮学の学生さんたちは凄い!」とお褒めの言葉をわざわざそれを言うためだけに私を呼び止めてお声がけくださいました。どうやら、その先生のポスター発表を聴きにいった人たちがとても熱心に話を聴き、拙いながらも一生懸命質問した姿に心を打たれたようです。私もとても誇らしく、今回参加した皆さんをとても心強く思います。これらの経験を、今後の学修に繋げていただくことを期待しております。

最後に、今までの大会にはなかったような、今回の大会で盛り込まれた美大らしい要素を少しご紹介したいと思います。まず、プログラムやチラシ、参加証など大会に関する発行物が手作り感溢れるスタイリッシュなデザインでした。特に、参加証は1つ1つ美術工芸で使うような紐を結わいて参加者の先生方に配布していました。また、ポスター発表時には通常使用されるようなパネルではなくイーゼルスタンド(絵を描くときにキャンバスをのせる台。恥ずかしながら、今回この名称を初めて知りました)にポスターを貼り付けての発表となりました。これらのことから、普段美術心のない私でも、美的な世界に少し足を踏み入れたような感覚になりました。

以上、学会大会に参加すると、いつもの授業では経験できない貴重な体験ができることがお分かりになったかと思います。また、同じ学会でも主催校が変わればまた違った雰囲気の大会になりますので、各大会の個性を比較してみるのも面白いかもしれません。今後も色々な学会大会が開催されますので、在学生の皆さんは是非積極的に足を運んでみてください!

(友野隆成記)