Archive for 5月 30th, 2012

5月の心理学コラム(担当:大橋 智樹先生)

2012/5/30 >> 役に立つ!!心理学コラム

幻覚を見るのは異常ではない

最近,風邪をひきました。扁桃腺が弱いものですから,いったん風邪をひくと高熱が出てしまいます。今回も39.3℃まであがりました。
子どもの頃もそうでした。しょっちゅう喉を腫らし,高い熱を出していました。大橋少年はそんな高熱の床でおもしろいことに気づきます。夜中にふと目を覚まして見あげると,天井がぐーっとゆっくり回りながら遠ざかっていき,同時に身体が布団にぐぐーっと沈み込んでいきます。私の家の天井や布団に特別な仕掛けがあったわけはなく,これは間違いなく幻覚といえます。ずっと同じ姿勢で寝ていたりするときに起こります。
このような幻覚についての心理学的な研究は「感覚遮断実験」と呼ばれます。全身を真綿でくるみ,耳には耳栓,目は半透明のカバーで覆います。このような刺激の少ない状態で長時間いると,ほとんどの人は幻覚を見ます。人影だったり,音楽だったり…。

このような現象は,人間が刺激なしには生きられない存在であることを示す証拠だと考えられています。外から刺激を与えられないならば自分でつくり出してやる!という感じです。いわば,正常でいるために敢えてつくり出した異常状態とでもいいましょうか。
人間の心って奥が深い。こういうことを知る度に,そう思います。