Archive for 4月 20th, 2012
4月の心理学コラム(担当:佐々木隆之)
2012/4/20 >> 役に立つ!!心理学コラム
夢の中の音楽 (その2)
1月のコラムで,夢うつつの中で不思議な音楽を聴いた(ような気がした)という経験について書いた.
聴いたと思ったものが見つからない以上,何らかの心理的な働きによって起こった現象であると考えざるを得ない.これにはいくつかの解釈が可能である.1つ目は,すべてが夢の中のでき事だったというものである.音楽を聴きながら眠りに入ってしまい,音楽を聴くときにはいつも何か(知覚・認知的な意味で)面白いことはないかと考えながら聴いていることと関わって,夢に架空の面白い音楽が出てきたという解釈である.私が作曲家なら,「夢でインスピレーションを得た」といって新たな曲を書くかもしれない.
2つ目は,聴いていた音楽をきっかけに,私の頭の中で音楽的な空想イメージが勝手に展開し,それが,自分でも驚くほど創造的であったというものである.もしそうだとすれば,私は普段から空想の世界に入るということが少ないので,とても不思議な感じがしたのであろう.
3つ目は,睡眠と覚醒の間を行き来していたため,その切り替わりが意識の上では音楽のポーズのように聞こえたというものである.しかし,睡眠で意識のない状態が空虚時間と認識されるということを聞いたことがないし,経験したこともないので,この解釈には無理がありそうである.
4つ目は,半覚醒の状態で音楽を聴いていたため,耳に入ってきた音楽によって喚起された感情が増幅されたというものである.まどろんでいる状態で感受性が高くなることはないことではないかもしれない.誇張された感情は解釈できるが,旋律の記憶はどのように解釈しようか?
他の解釈もあるかもしれないが,いずれにしても証明のしようがない.経験したことが研究のヒントになることはよくあるが,意図的に再現できないものは研究材料にはできない.とても面白いことが起こったのに残念である.生まれて初めての面白い経験だったが,死ぬまでにもう一度経験してみたいものである.