Archive for the ‘役に立つ!!心理学コラム’ Category

5月の心理学コラム:仙台あるある、早く知りたい(担当:瀧澤 純)

2023/5/10 >> 役に立つ!!心理学コラム

瀧澤純です。この4月に赴任した認知心理学の教員です。私はこの3月までは秋田市に住んでいました。今回は宮城県と秋田県の方言について気づいたことを書きます。

まず、同意する意味で使う「んだ」や、「そうそう」とあいづちをうつ「(ん)だから」は、仙台でも秋田でも共通して耳にします。一方で、「んだっちゃ」は仙台では耳にしますが、秋田では聞かないです。東北の方言にもバリエーションがあるわけですね。

方言のイメージを調査した研究はいくつかあるのですが、宮城県と秋田県は「東北地方」ということで一つのグループにされがちです。回答者自身が話す方言についてのイメージ評価から、東北弁は東京弁と比べて感情が豊かだと評価されるものの、知的に高いとは評価されないことがわかっています。でもこれは1980年代の研究ですので、現代では結果が変わるかもしれません。

ちなみに、秋田には方言以外にも独特な文化があります。コンビニで食品を買うと(お願いしていないのに)お手拭きがついてくるとか、修学旅行中の児童生徒を応援するテレビCMが流れるとか。仙台の文化も知っていきたいです。

運転席から見た秋田市の夕日(筆者撮影)

 

4月の心理学コラム:春といえば「知る」「気づく」「つながる」(担当:浅野晴哉)

2023/4/26 >> 役に立つ!!心理学コラム

はじめまして。私は、本年4月1日に犯罪心理学担当として着任しました浅野と申します。もちろん、本サイトの登場は初めてになりますので、簡単に自己紹介をします。

私は、本年3月までは宮城県警察、それ以前は児童相談所や中学校において心理臨床をしておりました。今回は、その経験から「春」に関連する心理的反応と対応について紹介します。

春といえば、寒さ厳しい冬が終わり、活動的になる一方、入学、人事異動等環境の変化から対人関係においてストレスを抱える季節です。ゴールデンウィークを過ぎたあたりから、いつの間にか体調不良に悩まされ、学校や会社において疲弊し、時には、家から出ることも難しくなる方もおられます。これは、一般に、五月病と言われる反応かもしれません。そのような場合は医療機関や心理職に相談するのが最善ですが、ここでは、心理臨床家としての対処方法を提案します。

1つ目は、「知る」ことです。最近、新入生と対話していると、新しい環境に適応するため疲弊している様子が見受けられます。時には気分の落ち込み、集中力の低下、食事や睡眠の乱れなどの反応が現れることもあります。つまり、春という時期は、誰もがこれらの反応が現れやすい時期であるということを知識として「知る」ことが大切です。

2つ目は、「気づく」ことです。この時期の心理的反応について知ることで、「やる気が出ない」「何となく疲れる」など自分の心理的反応について「気づく」ことが可能になります。その結果、セルフチェックとして生活習慣の見直し、休養、趣味や落ち着ける時間の確保など自分自身をケアすることができることから、「気づく」ことが大切です。

3つ目は、「つながる」ことです。家族、友人、先生などに話し「つながる」ことで、孤立感の防止や環境要因への配慮を受けることも可能になります。加えて、専門の医師や心理職、身体に不調が現れた際にはかかりつけ医に通院することも「つながる」ことです。ココロのみならず自分自身全体をケアするためにも「人」と「つながる」ことが大切です。

さて、皆さんへのメッセージとして「知る」「気づく」「つながる」について紹介しました。私自身を振り返りますと、今の私に一番必要なテーマであったと「気づき」ましたので、このコラムをとおして皆さんと末永く「つながる」ことといたします。今後ともよろしくお願い申し上げます。

3月の心理学コラム:スポーツにおける色の効果(担当:千葉陽子)

2023/3/30 >> 役に立つ!!心理学コラム

2022年度は、仙台育英甲子園優勝、FIFAワールドカップ、WBCと画面越しに心を震わせる機会がたくさんありました。WBCのメキシコ戦での超劇的サヨナラ勝利の場面を何度も動画で再生しては、元気をもらっている今日この頃です。2023年は、9月からラグビーのワールドカップが始まるとのことで、今からワクワクしています。

さて、今回はスポーツにおける色の効果についてお話ししたいと思います。スポーツ界では色彩心理学の知見に基づいた意図的な色の活用がなされています。まず、日本代表クラスのユニフォームには、メッセージが込められていることが多いです。サッカー日本代表のユニフォームは年々デザインが変わっても青を基調としています。この理由について日本サッカー協会は「日本の国土を象徴する海と空の青と一般的に考えられていますが、実際は後付けの理由で、なぜ青なのかという文献は残っておらず不明です」と述べています。青は、冷静や落ち着きを象徴しているとも推測されます。集中力を乱すことなく強豪国と戦うという点では、敵色なのかもしれません。また、ダーラム大学(2005)の調査では、ユニフォームの色と勝敗との関係を調べています。アテネオリンピックで実施された3つの競技のユニフォームの色と勝敗の関係を検討した結果、55%の確率で赤の勝率が高いことがわかりました。その他にも、GKのユニフォームが赤の場合、セーブ率が最も高くなるという研究(Greenlees, 2010)もあります。つまり、赤色のユニフォームは、闘争心を高める一方で緊張状態を誘発する側面を持つため、相手に無言のプレッシャーを与えており、スポーツのユニフォームにおいて敵色である可能性が高いということです。

皆さんが部活動で着用していたユニフォームは何色でしたか?赤の方が多いでしょうか。その理由について探ってみると、部活動の歴史・文化・浪漫を垣間みることができるかもしれません。

最近観た映画「THE FIRST SLAM DUNK」湘北高校の強さの秘訣はユニフォームにあり!?

 

2月の心理学コラム:映画の話『すずめの戸締まり』(担当:大橋智樹)

2023/2/6 >> 役に立つ!!心理学コラム

新海誠監督の『すずめの戸締まり』を観ました。私にとって新海監督の映画は、『君の名は』(2016)、『天気の子』(2019)に続いて3作目の鑑賞となりますが、最高の作品だと感じました。
映画を観る前に知っていた情報は「東日本大震災について扱っている」ということだけでした。すずめが人の名前だということはもちろん、戸締まりが何を意味するかは物語の進行とともに分かってきました。
私にとって衝撃だったのは、「地震」を“みみず”として描いたことです。たくさんの命と財産が奪われる地震という自然現象を“みみず”というファンタジーで描く。その発想力に驚嘆しました。

心理学の技法に「投影法」があります。ロールシャッハ法と呼ばれる「インクの染みが何に見えるか答えてもらう」がその代表例といえます。偶然にできたインクの染みですから何に見えてもいいのです。何に見えなきゃいけないことも、何かに見えちゃいけないこともない。自由な発想で答えた内容に、その人の内面が“投影”されると考える、心を測るための技法のひとつです。東日本大震災という「起こったこと」を題材に、それを描くこともある種の投影法だと言えます。その意味で、映画には作り手の心理が色濃く反映されると言えるでしょう。

映画の中に出てくる「本当に大事な仕事は、人には見えない方がいい」という言葉が印象的でした。映画を通して、私たちがこの言葉を、表面的にしか理解していないことが突きつけられます。あとは本編を観てください。心に刺さる作品になると思います。

1月の心理学コラム:コロナ後にマスクを外すのか?(担当:木野和代)

2023/1/11 >> 役に立つ!!心理学コラム

2022年の新語・流行語大賞にもノミネートされた「顔パンツ」。3年に及ぶコロナ禍のマスク生活で、マスクを外すことに恥ずかしさを感じる心情を表現した言葉とのこと。

今年の木野ゼミの卒業研究には、まさにこのことに向き合おうとしたものがあります。最初は、マスクで顔を隠すことの安心感にだけ着目していましたが、文献調査などを経て、コロナ後もマスクを着け続ける人がどれくらいいるのか、その背景は何かを、状況要因と個人の特性要因から明らかにすることにしました。

ここでは、状況要因の結果についてのみ、少しご紹介します。

調査では、感染力の強さ、そして、周りの行動(何割がマスクを着けているか;記述的規範)など様々な条件によって、コロナ後にマスクをつけるのかどうかが異なるのかを尋ねました。同調圧力が強いと考えられる場面(就職面接)での回答を集計した結果が以下のグラフです。周りの9割の人々が着用していれば、9割以上の回答者が着用すると回答したのに対し、周りの着用が1割の場合は3~5割の人が着用すると回答しました。ここから、周りのマスク着用率が高いと、マスクを着ける傾向が高く、同調効果が起こっていることがわかります。しかし、周りに着用者が少なくても、着け続ける人がそれなりにいることがわかります。どういうことでしょうか? 研究に取り組んだ学生たちが、この結果をどのように考察するのか、完成した論文を読むのが楽しみです。

 

 

このほか、個人の特性要因との関連や実際の人々の行動観察など、結果の詳細は3月末に発刊予定の「心理行動科学科研究報告vol.13」(東北地区の図書館等に寄贈)でご報告します。ぜひご覧ください。