森のレストランから

森のレストランから

森のレストランから|vol.17

粘土パン(ファンタジー)から食べられるパン(リアル)に

パン2 (1)

9月のある日、2歳児クラスで、子どもたちが小麦粉粘土を使ってパンを作りました。すると、夢中になって作っていたAくんは、この粘土でつくったパンがどうしても食べたくなってしまいました。「せんせい、これたべてもいい?」とうれしそうな顔で聞くAくんに、担任が「これは粘土だからたべられないの。じゃあ、栄養士の先生と相談して、今度は食べられるパンを作ってみる?」と提案し、後日、本物のパンをつくることになりました。

 

いよいよ、パン作りの当日。調理室であらかじめこねて発酵させたパン生地を、子どもたちは自分の好きな形に。Aくんは小さく丸めた生地をいっぱいつなげたり、Bくんは新幹線をイメージしてつくるなど、形も大きさも違ったいろいろなものができました。そして、焼き上がったパンを見た子どもたちから「わーぁ!」と歓声が上がり、うれしそうにパンをほおばっていました。

 

それから1週間がたち、栄養士が昼食時に2歳児クラスを訪れた時のことです。Aくんが「ねえ、せんせい。むかし、パンつくったよね。」とにこにこしながら、パン作りを思い出しているかのようにしみじみと話してくれました。栄養士が「そうだよね、たのしかったよね。」と言うと、今度はBくんが「こーんなにおおきくなったんだよね。」と体をめいいっぱい広げて焼き上がったパンが膨らんだことを教えてくれました。すると、次はCちゃんが「いちごぱんをつくったんだよ」など、次々と子どもたちが作ったパンの思い出を語り始めました。そして、それをみていたDちゃんが「またつくりたいね」と微笑みながら話しました。

 

こどもたちの会話から、このパン作りが楽しく、思い出に残る「食の体験」になったことが伝わってきます。小麦粘土のパンを「たべたい!」と言ったAくんの思いを、担任と栄養士が連携して形にし、実現したこの活動は、Aくんの願いのこもった特別なパン作りの思い出になったようです。そして、Aくんだけでなく、子どもたちが仲間同士で気持ちを共有したくなる食の活動へと広がっていきました。

2020.10.12