森のこども研究室

私たちの森

恵まれた自然環境を生かして

恵まれた自然環境を生かして、子ども一人ひとりの感性を豊かにする保育を行ってきた「土壌」の上に、木のぬくもりにつつまれた園舎が新たに建てられました。生きた森の木々と森の命が吹き込まれた木材に囲まれて、子どもたちの学びの「芽」が育つことでしょう。芽が伸びるには、子どもの心の眼が「根」として培われる必要があります。北欧の保育への広い視野と、日々かかわる子ども一人ひとりへの細やかな目を備えた、保育者が、子どもたちの「根」を確かなものとし、「芽」を伸ばすことでしょう。やがて時を経て、子ども一人ひとりがしっかりとした「樹」となり、それぞれに個性を出し合う「森」となるよう、願っています。

宮城教育大学教職大学院教授
日本生活科・総合的学習教育学会東北支部会長
吉村 敏之


「森のこども園」におけるアウトドア教育の実践とその効果

「北欧スウェーデン発 森の教室」の著者であるシェパンスキー先生による園内研修
(2016年3月26日撮影)

北欧スウェーデンで開発されたアウトドア教育では、アウトドアで子どもたちの体力向上だけでなく、算数や言葉を教えるなど普段の生活の中で教育することが重視されています。このようなアウトドア教育は、ヨーロッパ圏だけでなく、アジア圏の中国やシンガポールでも注目され、インドア環境を補完する新しい教育方法として教員研修にも取り入れられています。

現行学習指導要領は、1996年7月の答申「21世紀を展望した我が国の教育の在り方について」を踏まえて、「生きる力」の理念を次のように示しています。(1)主体的判断・行動による課題解決、(2)他者との協調性、(3)健康と体力。私たちは、これらがアウトドア環境でこそ統合的に育成されるという教育コンセプトともいえる研究仮説を立てて、北欧からアウトドア教育の研究者を招き、公開講演会やワークショップを積み重ねています。

このような状況の中、宮城学院女子大学附属幼稚園では、キャンパス内に広がる森に囲まれた附属幼稚園の発展形として、2016年11月、新しい幼保連携型認定こども園「森のこども園」に移行しました。

では、この「森のこども園」は、どのような教育理念をもって臨むのがふさわしいのでしょうか。自然豊かな環境を活かし、子どもの五感に働きかける学習機会は、宮城学院のキャンパス周辺の森を活用することでこそ実現できる特色の一つと考えます。

また、乳幼児期の保育は、「食べる」「寝る」「遊ぶ」といった子どもの生活を通して、「生きる力」の基礎を育成するように配慮されている点も大きな特色です。

「森のこども園」では、リンショーピング大学シェパンスキー先生の著書「北欧スウェーデン発 森の教室:生きる知恵と喜びを生み出すアウトドア教育(北大路書房)」を参考にしたアウトドア教育が実践されています。

[書籍名] 「北欧スウェーデン発 森の教室:生きる知恵と喜びを生み出すアウトドア教育」
[編集者] A. シェパンスキー, L. O. ダールグレン, S. ショーランデル
[翻訳] 西浦和樹, 足立智昭
[出版社] 北大路書房, 26

研究会報告・学会

「アメリカ心理学会ACTすこやか子育て講座」に本園の保育教諭が参加しました

アメリカ心理学会が開発した、心理の知恵を活かした子育て支援プログラムのファシリテーター養成講座(http://www.csppjapan.com/act/act_home.htm)に、本園の子育て支援室の保育教諭が参加しました。

この講座は、5月27日、28日の二日間にわたって開催されたもので、子どもの発達や怒りの感情、保護者のしつけや養育の在り方などについて、体験を通して学びました。今後、このプログラムを保護者向けに実施できればと考えております。

ご関心のある方は、本園子育て支援室までご連絡ください(教育学部教授・森のこども園園長補佐 足立智昭) 。

2016年度文部科学省委託事業

「地域と教育機関の連携による女性の学びを支援する保育環境の在り方の検討」

研究代表者 足立智昭(教育学部教授・森のこども園園長補佐)

「森のこども園」がモデル園となり、女性研究者に対するサポーティブな保育サービスの整備に関する調査・研究を行いました。女性研究者の皆さんで、研究と育児の両立でお困りの方は、本園の子育て支援センターまでご連絡ください。本学の育児支援専門の教員がご相談を受け付けます。

宮城学院女子大学附属認定こども園 森のこども園開園記念公開シンポジウム

「生きる喜び」から「生きる力」を育む

−「森のこども園」を通して考える幼児教育・児童教育−

< 趣旨 >
あなたが土に触れたのはいつ以来ですか?
あなたは薪を焚き、火を起こすことができますか?

コンクリートジャングルで暮らし、電化製品、スマホに囲まれて育った今の子どもたちは本当の自然を知らない。火を焚き、暖をとって身を守る術も、自然のなかにある危険を予知・察知して身を守る能力も失われていった。非物質化生活が進む一方のいまこそ、教育に託された大切な使命の一つは、子どもたちに物質化生活を取り戻すための場を提供することではないだろうか。本学の幼児教育、児童教育の目標の一つは人間の生きる力を身につけることであり、森のこども園はこの教育理念を具現化した場である。
森のこども園では、森のそばで生きる喜びを感じ、のびのびと育ち、生きる力を育んでいくのである。アウトドア教育を通して、日々の生活の中で自然の豊かさと自然の怖さを知ることで「生きる力」、「学びの芽」を育むことを教育理念としています。
本シンポジウムのねらいは建築、教育の両側面から、森のこども園の開園を機に今の時代に必要とされる保育、教育理念をあらためて考え、そして共有し、それを実現するための建築・空間の力を再認識することである。

< 開催概要 >
2017年1月22日、新園舎の建築を監修した伊東豊雄氏、フィンランドのアウトドア教育の実践家で小学校校長のユッカ・サルピラ氏、北海道で自然を活かした特色ある教育を実践している教育者、宮武大和氏(札幌トモエ幼稚園主任教諭)を迎えて公開シンポジウムを開催した。
最終的なクロストークから、2020年を前にした教育の転換のキーコンテンツとして、科学的な裏づけのあるアウトドア教育の実践に向けた意見がまとめられた。

●多様な学習環境の提供(教室からアウトドアへ)
●多様な学習スタイルの提供(教科書ベースから発見・体験型の学習へ)
●持続的循環型社会に関する学習機会の提供(経済重視から環境・人重視へ)

以上をまとめると、2020年度の学習指導要領から実施予定のアクティブ・ラーニングに関連する「アウトドア教育」プログラムの事例紹介を通して、「子どもと教師の健康促進」「子どものストレス軽減」「子どもの集中力の向上」「仲間との協働の機会の提供」がアウトドア教育の成果として期待されている。そのことが保障されれば、「生きる力」の源泉となる「生きる喜び(モチベーション教育)」の保育実践が可能になることが確認された。

メディア掲載情報

北欧スウェーデン発
科学する心を育てるアウトドア活動事例集
五感を通して創造性を伸ばす

科学する心を育てるアウトドア活動事例集

C・ブレイジ著
西浦和樹(編訳)
宮武大和(札幌トモエ幼稚園)・柴田卓(郡山女子大学)・柴田千賀子(仙台大学)・池田和浩(尚絅学院大学)・足立智昭(宮城学院女子大学)・齋藤彰子(宮城学院森のこども園)
写真提供:安藤のぞ美(宮城学院森のこども園)

「科学する心」を育てるには、自然の中で五感を通して豊かな体験活動が必要です。
本書は、北欧スウェーデンで開発されてきた野外でも行えるテクノロジー教育の実践事例集です。
世界最高水準の国際競争力を誇るスウェーデン。その秘策の一つは, 国が重視しているアウトドア教育です。本書はその特色的な実践マニュアルと事例を紹介しています。
体験的にテクノロジーを学び続けることが,子どものモチベーションを高め,より深い学びにつながります。また、課題解決能力・起業マインド・チームプレイの育成にも有効な方法です。
子どもに関わる皆さんが、アイデアやデザインの力で課題解決することの楽しさを味わい、実践力の向上に本書を活用してください。

なお、本書の解説では、教育学でよく知られた「子ども自身の持つ発見する心」「為すことによって学ぶ(Learning by doing)」のアウトドア教育の実践事例として、宮城学院森のこども園が紹介されています。
(掲載ページ p145~152「考える力を育む森のこども園のアウトドア保育(齋藤彰子先生)」)

教育学科幼児教育専攻 教授 西浦和樹




「深い学び」が動き出す!
食育の場をどうデザインするか
食育こそアクティブラーニング! 20の実践と理論

食育の場をどうデザインするか

平本福子(宮城学院女子大学食品栄養学科教授) 著
女子栄養大学出版部

〝人は自ら学ぼうとしたときに育つ〟
子ども主体の食育を長年研究、実践してきた著者が、新しい食育のかたちを提案 !

「食育」の主人公はあくまで子どもたちなのに、支援する大人たちの考えが中心になってしまっていることはありませんか?
子どもたちがいきいきと学ぶ場を設けさえすれば、子どもはおのずと育っていくものです。
また、食育の活動には、子どもだけでなく、若者や高齢者も参加します。
本書は、いずれの世代にも活用できる「学習者が主体となる場のデザインづくり」と「生産から食卓まで」の幅広い視野の実践例が満載です。
いま話題のアクティブラーニングのヒントとしても、大いにご活用ください。

本書の1章「実践編」で森のこども園の実践が紹介されています。
(掲載ページp64~69 「森の自然が子どもの感性を育てるー自然環境を活用したこども園の実践」)




森のこども園の事例が「School Amenity 2018.12月号」に紹介されました。

School Amenity 2018.12月号

本誌「―事例で見る― 幼児教育・保育施設の環境について No.6」(33~42頁)に本園の事例として園長インタビューと施設紹介が掲載されました。
 本園の森での遊びの様子が本誌の表紙にもなっています。

以下「School Amenity 2018.12 編集後記」より転載

森、木々を抜ける木漏れ日、土、草花、昆虫、小動物など、そして水の森公園の丸田沢へ続く、自然豊かな環境の中で育つ子ども達は、豊かでやさしい感性が育ち、磨かれると感じた学校法人宮城学院宮城学院女子大学附属認定こども園「森のこども園」の取材であった。園舎についても、同園の姿を主張する深い森、自然とほどよく調和する佇まいを見せる。四方を森に囲まれる園庭を元気よく走り、散策したり、森に入り緑を肌で感じるなど自由に自然と対話、触れあう姿は、まさに幼児施設の代表例と言っても間違いないであろう。
園舎は、一枚の起伏のある屋根に覆われて、大小のむくりをつくり出している下の部屋には、年齢ごとの保育室、ホールなどがある平屋建てで、子ども達の居場所など生活の場を包み込む。内部についても、木の質感や、香りがする園舎である。
また、園内の幼児家具も、無垢の木の素材が使われて、大人も座れる強度、保育室、ホールが広く使える移動性と収納性のあるオリジナルのものが用意されている。さらに、子ども達の安全性を確保するため、角部にはアールをつけている。
いずれにしても、特に子ども達むが、自然が豊かな環境の中で、日々の生活を送ることは、生態系の一部である人間が本来もっている感受性や五感の劣化が進み、多様な意味での本来の人間性を失ってしまう子ども達も増加しているとも言われる。まさに、現代の子ども達の自然体験が不足しているからではないだろうか。そうした点では森のこども園は、一石を投じているように思う。


学夢



宮城学院女子大学附属の認定こども園「森のこども園」の実践・研究が自然を活用した保育のガイドブックの先進事例として紹介されました。

自然を活用した保育・幼児教育ガイドブック(風鳴舎)

全国的に、自然を活用した子育てや保育が注目されています。
では、なぜ子どもたちが森で遊ぶことで、どのように成長・発達すると考えられるのでしょうか。
そのような子育ては、「自己効力感や自己肯定感、コミュニケーション能力が育つ」として、長年現場で実践されてきました。
今回、「自然を活用した保育・幼児教育ガイドブック(風鳴舎)」では、宮城学院の森のこども園が保育の先進事例として紹介されています。本園での森を活用した保育が「?(不思議に思う心)」、「!(感動の心)」、「♥(思いやりの心)」の3つの心を育てます。

『自然を活用した保育・幼児教育ガイドブック(風鳴舎)』 180頁
教育学科幼児教育専攻 教授 西浦和樹



宮城学院女子大学附属の認定こども園「森のこども園」の実践・研究が日本文教出版(小学校の教科書会社)の機関誌に掲載されました。

2017年3月31日付で、小・中学校の新学習指導要領と新幼稚園教育要領が告示され、国の新しい教育方針が示されましたが、宮学の認定こども園「森のこども園」の保育・教育方針や実践が、新しい教育の方向性を先取りした実践研究であることが評価されたのです。

「森のこども園」のカリキュラムでは、「?(不思議に思う心)」、「!(感動の心)」、「♥(思いやりの心)」の3つを育むことを大切にしています。
これは、新指導要領・新教育要領が目指す「学びに向かう力や人間性」を育てるために重要な柱となっています。

掲載記事は、こちら(PDF)をご覧ください。

『生活&総合 navi vol.73 MARCH 2017』 8頁~9頁
教育学科児童教育専攻 教授 生野桂子