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 > 第3章 - 1. ボランティア活動

 3 - 1 . ボランティア活動

 (1) 大学

災害ボランティア活動の核となったのは宮城学院女子大学リエゾン・アクション・センター(略称:MG-LAC)である。この組織は、2010年12月に設置され、学科を超えた学生同士、学生と教職員、大学と地域社会が繋がり、学生たちが自由に会合や相談が出来る「場」として運営されてきた。「災害ボランティアセンター」を立ち上げることも考えられたが、敢えて創立後間もないMG-LACを災害復興ボランティアのセンターとした理由は、被災地に位置する女子大として、(1)多様なニーズに応えること(「見えにくい」被害にも目を向ける)、(2)継続的・長期的な支援を行うこと、(3)本学の知的・人的リソースを最大限に生かすこと、以上3点に留意したからである。

災害ボランティアに参加する学生たちを対象にMG-LACが説明会を開催したのは、未だキャンパスへの立ち入りが制限されていた4月11日であった。説明会の第一部は、MG-LACを介したボランティア活動の解説及びボランティア希望者の登録や、大学によるボランティア学生支援の説明、第二部は、個別の派遣先や活動内容の紹介という構成で行われ、(1)避難所や被災者のニーズに応じた大学生ボランティアを、復興支援活動を行っている様々な現場・団体に紹介していること、(2)ボランティア活動に際しては、きちんとした準備と心構えを持って現場へ行ってほしい、という趣旨の説明が行われた。告知の時間が短く、通知方法もホームページのみであり、また交通手段などに難を抱える学生が多い中、用意した会議室に入りきれないほど多くの学生が参加した。そのため、第2回の説明会を5月18日にも開催し、参加者数は2日間で200名を超えた。

MG-LACにより、被災地支援要請とボランティア活動を希望する本学の学生・教職員が結び付けられ、「食のほっとタイム」、「小学校子ども支援」、「復興支援コンサート」、「公文書転記」、「亘理町聞き取り調査」、「サマーカレッジ」など多数のプロジェクトが生まれた。また、「サマーカレッジ」や「『君の歌』プロジェクト」など、被災者支援から始まった活動が、被災者支援を超えて展開する例も出て来ている。2012年度は、住友商事による「東日本再生ユースチャレンジ・プログラム2012」活動・研究助成をいただき、本学卒業生のネットワークがある県内沿岸部の被災校に、活動を広げている。詳しくは、P.45ページ参照。 ただし、災害復興に関する宮城学院女子大学の活動がすべてMG-LACに包摂されている訳ではない。教職員や学生個々人が、個人として、あるいは他組織のメンバーとして行っている活動も少なくない。

例えば、心理行動科学科では、「机の上だけでは心理学は学べない」というモットーの下、1年生の「心理行動実践セミナー」における共同研究の展示発表会を、仙台市中心部の会場で行った(アエル2Fアトリウム、11月23日)。これは高校生や一般市民を対象としたもので、「情報を伝える、受け取る心理」、「救護・支援する心理」、「義援金を寄付する心理」の3つの側面から、東日本大震災に迫るものであった。

発達臨床学科の教員、学生は心のケア、幼児のサポート活動などで震災直後から動いた。さらに、学内組織の発達科学研究所を基礎に、国際基督教大学高等臨床心理研究所とのジョイント・プロジェクトとして「災害復興 心理・教育臨床センター」を立ち上げた。これは、臨床発達心理士などの専門家が、被害者への個別相談(震災後の心の不調に関する心理・教育・精神看護支援)、被害者支援に携わる者への相談(被災者対応に関する相談、支援者自身のストレスケアなど)を広く開放するものである(月2回、土曜日実施)。 また国際文化学科では、教員と有志学生が今回の災害の経験から、自分の身の周りの防災のために何が出来るかを検証して、それを英語で発信している(Surviving Earthquakes and Tsunami)。また、このプロジェクトを母体に、県内の自治体で被災者の体験に関する聴き取り調査を実施するとともに、「宮城に暮らす外国人県民による初のパネルディスカッション」(学内、12月17日)を主催した。

人間文化学科では、阪神大震災を経験した神戸の学生と協同で、学生の意思調査、被災地や仮設住宅の人々との交流、シンポジウムの開催(学内、12月24日)などを行った。学生からの報告の中でも、福島原発に近い地域で放射能汚染の危険を知らざれずに雨の中で農作業を手伝った学生からの「わたしは子どもを産み育てるのを楽しみにしていたが、放射能の害が子供や孫にまで及ぶのを知り、出産をあきらめた」という報告は、衝撃的だった。人間文化学科では、石巻の牡蠣養殖業者のリーダーを招いて、講演会を開催した(学内、12月5日)。生産手段を津波ですべて失った中から仲間と共に立ち直る過程についての体験談は、聴く人を勇気づけるとともに、多くの聴講者を得て、講演者自身も人々の支援を実感したのではなかろうか。

学内の5学科によって運営される学芸員課程では、仙台都市圏の博物館等の震災被害と対応について調査をし、学内及び学外(仙台市博物館)で、博物館学芸員の協力も得て、調査報告会を行った(11月20日)。さらに、石巻の仮設住宅居住者を仙台市博物館や宮城県美術館に招待して、「学芸員の卵」である学生とともに展示を楽しむことを通して、心の支援をしようとしている(2012年2月15日)。

学内組織の人文社会科学研究所では、公開シンポジウム「3.11そのとき、それから―世界と日本と東北と―」を開催した(仙台市青年文化センター、10月29日)。歴史学者、経済学者などから分析と意見が提示され、それを踏まえた討論が行われた。

さらに、本学の教員や学生が宮城学院女子大学のメンバーとして企画・運営している活動としては、被災地の栄養支援・栄養相談や宮城歴史資料ネットによる史料レスキューやみやぎ・わらすっこプロジェクト(本学児童教育学科の教授が中心になって立ち上げたもので被災地域の保育の再生を目ざして、必要なところに必要な手と物を届けようというプロジェクトである)などが行われた。

- 活動別ボランティア実数 -





 <LAC災害ボランティア 2012年度の展開>

宮城学院女子大生による子ども支援プロジェクト
プロジェクト概要 宮城学院女子大学では、東日本大震災を契機として、学生たちが各学科での学びを生かす形で協働し、総合的な子ども支援活動を展開しています。 震災直後には我慢強い「よい子」でいた宮城の子どもたちが、時間の経過に伴って、内在化させていた深刻なストレスを表出し始めています。不安や悲しみ、心的外傷を抱えながらも、多くの子どもたちはそれを言語化できず、SOSを出すのは氷山の一角にすぎません。また津波被災地では、発災から一年以上が経った今でも、教員たちは多忙を極め、保護者も生活の再建に追われて、時間をかけた丁寧な子どものケアができているとは言い難い状況にあります。本活動は、そのような事態の打開を目指す、宮城学院女子大学の学生による継続的な子ども支援の試みです。単発的な学習補助や遊び機会の提供にとどまらず、「学び」「遊び」「食」を総合したアプローチにより、被災児童が「3.11」移行に失った「日常」を再生する一助となるべく、尽力したいと考えています。

2011年度は個別に展開していた、学校常駐型の学習補助、炊き出し活動、音楽による慰問、遊び支援などを総合して、各部門が連携した総合的な子どもケアの昇華します。2012年度は、住友商事による「東日本再生ユースチャレンジ・プログラム2012」活動・研究助成をいただき、本学卒業生のネットワークがある県内沿岸部の被災校に、活動を広げていきます。 取り組み内容 本活動がめざすところは、以下の三点に集約されます。

①総合性:異常事態への対応よりむしろ、発達の保障を前提とした心地よい「日常」の再生という視点から、子どもの生活に多面性に関与する。具体的には、学び(学習支援や英語活動)、遊び(音楽や表現など)、食(上質な食事の提供)のジャンルで連携してボランティアを展開し、子どもたちとの個別対話を通じて、各自異なる発達課題に応じた生活リズムを作り上げる手助けをする。

②継続性:不安や心的外傷を抱える子どもたちに必要な、上下関係が確立した相手である教員以外の、共感的な「安心できる他者」を確保する。単発的な慰問活動ではなく、メンバーがシフトを組んで学校に常駐する。小さなつぶやきにも耳を傾け、モヤモヤした気持ちを言語化するプロセスに寄り添う「年上の友達(仲間)」として、子どもの生活に溶け込む。

③重層性:激務と責任の重さに疲弊する教員をも併せてサポートする(特に新任や経験の浅い教員の負担を一部分け持つ)。とりわけ、学校も家族も十分なケアがしづらい、身体的ハンディ・発達上の問題・近親者の喪失などにより心理的な脆弱性を抱えた子どもたちへの、授業内外の時間をできるだけ長く共有する個別対応を、多忙な教員・保護者に代わって行う。

本活動は、「被災者支援」という枠組みに囚われず、被災時から平時へとまたがる長期的な活動ネットワークを確立することで、子どもたちの「日常」を再生し、生活の質を高めていきます。その取り組みを通じて、専門性が高くない学生主体のプロジェクトとして実効性を持ちうる、地元学生だからこそ可能な(単発の慰問ではない)、総合的・継続的・重層的なサポートのノウハウを蓄積し、ゆくゆくは災害後の子ども支援一般に応用可能なプログラムへと整理して、被災各地に提供したいと考えています。

小学生のためのSummerCollege
仙台市内の小学生たちを桜ヶ丘キャンパスに招き、大学ならではの学びと遊びを体験してもらう総合型のイベント「小学生のためのSummerCollege」を、夏の恒例行事として開催します。サマーカレッジの目的は、宮城学院女子大学ならではの専門性を生かした、遊びと学びを融合させた総合的なカリキュラム実践を通じて、子どもたちが精一杯楽しみ、心地よいと感じられる特別な1日を準備し、その中で子どもたちが本来の創造性を発揮し伸ばしていくサポートをすることです。 サマーカレッジでは、被災児童のケアという観点に囚われず、むしろ被災以前の水準を超える高度な知的・感性的な冒険の機会を強いられた様々な苦しみや我慢から子どもたちを開放し、本来の意味で子どもらしく過ごせる「日常」の回復につながると、我々は考えます。サマーカレッジは、単なる「復旧」を超えた、より積極的で発展的、未来志向的な子ども支援の取り組みです。従来的な目的達成方の教育から離れて、子どもたちが主体的に遊びと学びを作り上げ、自らの可能性を広げていける時間と場を、本学学生・子どもたち・本学教員の対話的実践を通じて、創出していきます。


 (2)  中学校高等学校

ア . 中学校図書委員会の取り組み
児童本等の図書を集め、東日本大震災により図書を失ってしまった被災地の学校に贈った。

イ . 生徒の自主的な取り組み
YWCAの生徒が中心となって、日本基督教教区センター「エマオ」を通じて、津浪による被害を受けた荒浜地区において被災家屋の泥掻き作業を行った。 また、宮城学院女子大学主催の災害復興ボランティア「小学生のためのサマーカレッジ」において学習ボランティア補助として参加した。



 被災状況一覧