宮城学院女子大学 心理行動科学科

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今月の心理行動科学科
活動の記録


コラムの執筆は教員が担当し、毎月10日前後に更新します。各教員の詳細については大学のページでご覧下さい(教員紹介ゼミ紹介)。

2月の心理学コラム(担当:高田利武)

「甘え」と別れ

日本人の心のあり方を解き明かす鍵概念の1つである「甘え」(土居, 1971)は、母親と共生する乳児の感情に由来するもので、他者と情緒的に一体化しようとする心理です。人間は本来、一人一人が個別の存在であることを考えるなら、「甘え」は自他の分離の事実それ自体を心理的に否定しようとするものです。
 個々人が独自の存在である以上、それぞれが別の道を歩むことによる「別れ」は、仮令どんなに親密な間柄であろうとも必然だと言えます。これは私の偏見に過ぎませんが、「甘え」の心理が濃厚である日本人にとって、「別れと言えば昔よりこの人の世の常なるを…」という具合に、「別れ」はとりわけ情緒をくすぐるのかも知れません。
さて、例によって鉄道ですが、私は写真のような2つの線路が分かれる情景に心惹かれます。分岐駅から一緒に走ってきた列車が、ここでそれぞれ別の目的地に向かう様子が、人生での別れにも通じるように思えるからです。1960年代、秋田駅を午前8時10分に同時発車した2本の特急が、分岐点で互いに別れを惜しむように警笛を鳴らし、一方(つばさ)は奥羽本線を上野へ、もう一方(白鳥)は羽越本線で大阪へ向かう様子は、鉄道ファンの間で有名でした。
ところで私こと、心理行動科学科の発足以来5年間、皆さんとともに走ってきましたが、この3月でお別れです。皆さんは右側の本線を未来に向かって驀進して下さい。私は左の支線で山奥へ向かいます。では皆さんさようなら。随分ご機嫌よう。




1月の心理学コラム(担当:佐々木隆之)

夢の中の音楽(その1)

とても不思議で面白い経験をした.
1ヵ月ほど前,音楽を聴いていたところ,いい気持ちになり,起きているのか寝ているのかわからない状態になった.まどろみのさなか,「なんだこれは」と思うようなとても面白い音楽が聞こえた(ような気がした).これまで聞いたことがない発想の音楽で,そのような曲を作る作曲家の卓越した創造性に感心した.どのような旋律だったかは徐々に記憶が薄れてきているが,どのように素晴らしかったかははっきりと覚えている.旋律の途中にポーズを入れるのであるが,その入れ方が聴いたこともないようなやり方だったのである.旋律の途切れ方は絶妙で,まったく新しい手法に聞こえた.聞いていてワクワクする感じは,中学生のときにワーグナーの大作を聴いたときの感じに近いものであった.
少し経って意識がはっきりし,その音楽を確認しようとして,その日に聴いていた曲を聴きなおしたのであるが,プレイリストに入れていたどの曲を聴いてもそのような部分がないのである.何度も聴きなおしたが,未だ発見できていない.ワクワクした感じと不思議な感じだけがはっきり残っている.
聴いたと思ったものが見つからない以上,何らかの心理的な働きによって起こった現象であると考えざるを得ない.これには,いくつかの解釈が可能である.解釈について書こうと思ったが,大分長くなったので,続きは近いうちに挙げることにしましょう.
(その2に続く)


写真:久しぶりに,30年以上前に買ったワーグナーの楽劇のフルスコアをながめてみました.


12月の心理学コラム(担当:木野和代)

震災救援活動と自衛隊員の心

引き続き「ココロサイコロ2011」の話。発表を無事終えてひと段落したところで,少しふり返ってみたいと思います。
私のゼミでは救援・支援する人の心理がテーマでした。夏休み直前まで議論を重ねた結果,自衛隊と大学生ボランティアに焦点を当てることになりました。どちらも力作ですが,今回は自衛隊調査から学んだことについて。

自ら被災しながらも,任務優先で過酷な環境の中での救援・支援にあたった自衛隊員。訓練を積み強靭な心身をもつとはいえ,そのストレスは量り知れません。自衛隊への聞き取り調査から,自衛隊では隊員をPTSDにさせないための対策として,「現場での対応」を充実させていたことがわかりました。また,隊員の心についても具体的なお話をたくさんお聞きし,その状況の過酷さを知ることができました。

しかし,隊員の心を想像はしてもしきれぬものがあったように思います。
当初の研究計画には,個々の隊員へのアンケートもありましたが,衛生科の方の助言で中止しました。その理由は,任務終了後3カ月で,これからPTSDの発症が懸念される時期であり,隊員を刺激する可能性があるためでした。人を傷つけないよう配慮した「つもり」でしたが,まだまだ不十分だったと改めて考えさせられました。

1年生の皆さんにとっても大きな学びであったことを確信しています。


写真:発表直前の集合写真
 


11月の心理学コラム(担当:友野隆成)

持続可能な被災地支援

先月の大橋先生のコラムにもありましたが、今月23日に「ココロサイコロ2011」におきまして、本学科1年生が研究発表を行います。私が担当する班では、「持続可能な被災地支援」をスローガンに掲げ、「どうすれば、無理をせずに長く続けられる支援ができるか?」を議論してきました。その結果、何か特別な技能が必要なものではなく、誰でも気持ち一つで手軽に支援ができる「募金」について心理学的な考察を行ってみよう、ということに決まりました。

その一環として、班のメンバーを3グループに分けて、10月の大学祭において実際に義援金募集活動を行いました。その際、ただ普通に義援金を募集するだけではなく、グループごとに趣向を凝らした仕掛けを用意して、募金行動を実験的に検討してみました。また、募金して下さった方々にアンケートへの回答をお願いして、募金をする心理を探りました。これらのデータから見えてくることは…(!?)。

現在、メンバーは23日の発表に向けて、それぞれグループごとに一生懸命準備をすすめております。当日には、上記の分析結果が発表されますので、皆様お誘いあわせの上、仙台駅前AER2階のアトリウムへ是非是非お越しください!

10月の心理学コラム(担当:大橋智樹)

ココロサイコロ2011

心理行動科学科のモットーは「心理学は机の上だけでは学べない」。この言葉は、机に座って話を聞いたり本を読んだりするだけでなく、街に出かけたり、身体を動かしたりする実践的な経験を通して、心理学を学ぼうという学科の姿勢の現れです。大学での学びを単に大学の中だけに留めるのではなく、広く社会との接点を見いだしていきたいという想いも込められています。

この思想を実現する一つの授業が1年次必修科目の「心理行動実践セミナー」です。今年は、「東日本大震災からの復興」を共通テーマに、3つのグループが実践的な研究を展開しています。サブテーマは、募金する人の心理、支援する人の心理、情報を伝える心理の3つ。どのグループもまだ形が見えていない不安の中にいますが、これからの1ヶ月で研究としてきちんと発表できるようにまとめていきます。

発表は11月23日勤労感謝の日。「ココロサイコロ2011」と称して、仙台駅前AER2階のアトリウムで。ポスター形式の発表ですので、いつでも、どなたでも自由にご覧いただけます。震災当時、まだ高校生だった彼女たちが、大学生として取り組んだ初めての成果をどうぞご覧ください。心理学に対するイメージが変わるかもしれませんよ!

 KJ法と呼ばれる手法で考えをまとめる議論の様子

 昨年度の発表の様子



9月の心理学コラム(担当:佐々木隆之)

Summer College in MG

 去る8月10日,宮城学院女子大学キャンパスで「Summer College in Miyagi Gakuin」が催されました.この企画は,被災地の小学生と近隣の小学生を招いて,大学教員の指導の下にさまざまな学習を体験してもらおうというものです.私も心理学に関わる企画を考え,小学生に楽しんでもらおうと参加しました.

小学生にも無理なくできて,しかも面白いと思ってもらえるものを考えるのは思いのほか難しく,ゼミの学生たちの協力を仰いで試行錯誤を繰り返し,ようやくこれはというものを決めました.作ってもらったのは,写真1のような貼り絵で,じっと見ていると錯覚が生じます(ちなみに,写真は学生による試作品です).


ここには2種類の錯覚が含まれています.一つは,フレーザー・ウィルコックスの錯視で,まるい花火が,ゆっくりと回転して見えます.もう一つは,ハーマン格子と呼ばれる錯覚で,絵の下の方にあるビルの窓を見ていると,枠の交差点に黒い点が見えるというものです.両方とも周辺視で生じる錯視なので,気が付かない人もいるのですが,何を見ればよいかがわかると「なるほど」ということになります.
準備には多くの学生たちが協力してくれました.深く感謝します.


写真は,高学年のグループの工作風景ですが,皆行儀よく取り組んでくれました.作品は大変上手にでき,喜んでもらえました.将来,また出会うことがあればいいな,と思ったことです.


8月の心理学コラム(担当:高田利武)

地震の夢

 私は毎晩いろいろな夢を見ます。夢の内容に影響する要因は何でしょうか? フロイトの説は面白いですが、それが全てとは到底思われません。脳科学によって明らかにされる日が待たれるような、同時に怖いような気がしますが、自分が体験した事実が夢の内容に関係していることは確かでしょう。
 さて、またまた鉄道の話です。子どもの頃から高嶺の花だった寝台車に乗るのが、私は大好きです。その寝台車で過ごす夜に、地震の夢を見ることが多いのです。列車がガタガタと揺れている現実が、夢の内容に影響しているに相違ありません。
 大変だと思って目が覚めたとたん、「地震じゃない、寝台車に乗っていたのだ」と分かったときの幸せな感じ、何とも言えません。寝台車のベッドで過ごす時間は私にとって至福の時です。ところが悲しいことに、3月11日以降、地震だと思って目が覚めたら、本当に地震だったという経験が多くなりました。
 でも、もっと悲しいのは、寝台車自体が絶滅しようとしていることです。私が多く利用した「富士」「さくら」「あかつき」「銀河」「北陸」… 皆この数年間に消滅し、観光目的ではない列車で寝台車が連結されているのは「あけぼの」「日本海」「はまなす」だけになってしまいました。これらももはや風前の灯火です。列車が廃止になるときは、私の生き甲斐も無くなるとき… と予感しています。


写真の解説文
「あけぼの」の寝台券。この他に乗車券が必要です。経済的にも時間的にも、もはや寝台特急が実用的な交通手段ではないことは、残念ながら明白です。


7月の心理学コラム(担当:友野隆成)

研究室と観葉植物と大震災と私

今から約7ヶ月前、研究室で育て始めた観葉植物のことを当コラムで御紹介させていただきました。今回は、その続き話を…
‐‐‐‐‐

この書き出しで、私は3月上旬に当コラムの原稿を書いておりました。観葉植物が更に成長したが、ほとんど変わらない葉とどんどん成長する葉の2パターンがある、というお話でした。原稿を書き上げ、あとは更新されるのを待つだけとなりましたが、3.11の
大震災によってせっかく書き上げたコラムは更新されずお蔵入りになってしまいました。

震災発生時は、私は研究室にいたのですが、携帯の緊急地震速報のけたたましい音に胸騒ぎを感じ、比較的大きな机の下に潜りました。程なくして、過去に経験したことのない激しい揺れが襲ってきて、あり得ない勢いで本棚が倒れてきました。地震がおさま
るまでの長い長い数分間、私は生きた心地がしませんでした。机の下にいたので幸い私は無傷で済みましたが、観葉植物は下敷きになって駄目だろうと半ば諦めていました。しかし、観葉植物は私同様奇跡的に無傷でした!しかも、震災後落ち込んでいる私を
尻目に、何事もなかったかのようにまた新たな葉を生やし、成長を続けています。


パーソナリティには、困難な状況に陥ってもそれを乗り越えて精神的健康を維持することができる“レジリエンス”という概念があります。私の研究室の観葉植物には、相当なレジリエンスがあるのかもわかりません。私もそれにあやかりたいと思った、震災
後の日々でした。

6月の心理学コラム(担当:木野和代)

相互作用

 しばらく中断していたコラム。先月から再開し,新しい原稿がアップされています。
しかし,全ての投稿が掲載されたわけではありません。実は震災直前に昨年度最後の原稿が担当学生から届いていました。
一年間のふり返りと新学期への期待を綴った,意欲あふれる内容です。遅くなりましたが,以下にご紹介します。
こうした学生の意欲は教員を動かす原動力でもあるのですよ。
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こんにちは!3月のエッセイを担当します、1年の小笠原早希です。
長いと思っていた春休みも残り少なくなり、なんだかあっという間だったなと感じます。

あっという間といえば、入学してから1年が経ってしまうことです!!
1年をふり返ると、一人暮らしやサークル活動、大学祭やココロサイコロ…と、はじめての経験ばかりでとても充実したものでした(*^ω^*)!

さまざまな経験の中で最も印象に残っていることは、実践ゼミでの活動です。私はこの1年間、木野先生の実践ゼミで『コミュニケーション能力を鍛える』という体験学習をしてきました。集団での話し合いや相手への説明など、コミュニケーションをとる際の難しさや気をつけることなどに気付くことができました。普段は意識していないことを、改めて意識することで自分の考え方や発言の仕方が変わりました。そして、その体験学習で学んだことをココロサイコロでの『初対面の人とのコミュニケーション』にも繋げることができました!緊張したけど良い経験になったと思っています(^ω^)

来月からは2年生!より楽しく、より充実した1年にしたいです^0^!
はやく学校でみんなに会いたいですね♪

5月の心理学コラム(担当:大橋智樹)

大震災を経験して

 あの日、私は福島県の浜通りにいました。原子力発電所の保修作業をおこなう会社の安全大会で講演をするためです。14:20に常磐線富岡駅で降り、迎えの車で会場に移動して控室に入ったところでした。講演は14:50から開始する予定でした。
 そろそろ講演会場に移動しようかと思った時、震度6強の揺れが襲ってきました。長くて、激しくて、そしてひたすら長い、そんな揺れでした。富岡駅は私が降りた1時間後に津波にのまれ、次の列車は少し手前の駅でぐにゃりと折れ曲がりました。まさに九死に一生を得る、そういうタイミングでの被災でした。

 その後、今日までずっと、いろんな事を考えさせられてきました。中でも、研究者として築き上げてきた考え方や生き方を、根こそぎさらわれたかのような喪失感との戦いはなかなか壮絶でした。もちろん、3ヶ月が経とうとしている今でも、それらを取り戻すには至っていません。まだまだ戦いは続きそうです。
 しかし、研究者にとって最も大切なことは、物事をどれだけ多面的にとらえられるか、だ。私はそう考えていますから、つちかったものを失うつらさよりも、これを機に新たに何かが自分の中に芽生えることに期待しています。

 東北の地が、いつの日にか、新たな芽吹きとともに震災からの復興を遂げますことを。大学も、学科も、そして私たち教員も、被災地域の一員としての責務を果たしていきます。

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