2007 調査結果
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・新聞データからみる落書きの変化 朝日新聞を対象に行った分析では、1988年から1990年にかけて記事数が著しく増加しています。その後、1991年、1995年に減少しましたが、2007年時点では記事数は増加傾向にあることがわかります。 記事の内容分析においては、事件、社会問題に関する記事が全体の約3割を占めています。消すことに関する記事数と比較して防止や対策に関する記事は少なくなっているといえます。 記事数が多かった朝日新聞のみ本調査に関わる「事件」「社会問題」「法律等」「消す」「防止・対策」「その他」の6種類の項目別に記事数推移の分析を行いました。推移のグラフを見ると、事件に関する記事の推移の変化が大きいことがわかります。 また2年ごとの減少、増加の差も大きいです。 2001年から2003年にかけての記事数は増加しています。2005年に減少しましたが2007年にかけて再び増加傾向となりました。社会問題に関する記事は、1997年から2005年にかけて減少傾向にありましたたが2007年にかけては増加しています。法律と防止・対策の記事数の変化は10年を通して小さいですが、消すことに関する記事は増加しています。 河北新報を対象に行った分析では、1998年から2000年にかけて記事数の変化が大きいことがわかります。 2000年に増加してから、2004年、2005年を除いて記事数は増加傾向にあります。記事の内容分析においては、事件、社会問題、消すことに関する記事数が多くなっています。 一方で芸術の割合も多く落書きがさまざまな視点から捉えられてきていると考えられます。 ・新聞の内容からみる世論 マスコミの取り上げ方の変化 1997年から2001年にかけて、落書きに関する事件や修復活動の記事はありますが、全体的に記事数が少なっています。マスコミが落書きを取り上げていないことが実際に落書きが少なかったからかどうかは分かりませんが、世間の関心は低かったと考えられます。 市民が苦情を出したとしても、警察が「決め手に欠ける」として捜査が行われなかったなど、落書きという行為をどのように処理するのか規定が定まっていませんでした。落書きに対する対策として監視カメラの使用も考えられましたが実現が難しいとされていました。 2003年からは、「落書き」を含む記事数が一気に増加しています。 落書きを否定的なものとして捉える考え方が一般的だった中、「グラフティ」、「アート」という文化として芸術的な評価を与え、肯定的な見方が出てきたのもこのころです。 記事数が増加したことは、世間の関心が高まったことによるものだと考えられますが、犯罪行為としての「落書き」、芸術としての「落書き」など人々の視点の多様化が見られます。 2005年から2007年、現在にかけて落書きを消す活動がボランティア活動やキャンペーンのひとつとして、全国に広まり始め、マスコミにも頻繁に取り上げられるようになってきています。 特に2007年からは落書きに対する条例に加えて、罰金などの具体的な罰則が定められ、落書きを事件とした裁判が行われ始めていることがわかります。「落書き」をなくすことで街の景観を良くしようという動きも見られるようになりました。 現在は、落書きを消すことと同時に防止する意味も含めて、ボランティアや児童、学生による壁画制作が各地で行われています。 しかし、その壁画の上に落書きされてしまうなど、書かれては消すの繰り返しの作業になってしまっているのが現状です。