にちぶん 東方落語寄席 | |
十一月十一日に大学講堂で日本文学科主催の特別企画として、「にちぶん東方落語寄席」が開催されました。 東方落語とは、塩釜市出身で、かつてのフリーアナウンサー、現衆議院議員の今野東さんが主催する「東北弁で落語を語る」団体です。東北弁をこよなく愛し、東北弁の暖かさとユーモアを身上とされています。レパートリーには、古典落語を東北弁に脚色したものや、民話をベースとした創作落語などがあります。 今回は東方落語真打、川野目亭(かわのめてい)南天(なんてん)さんと今野屋(こんや)もう世(ぜ)さんを迎えて行われました。 川野目亭南天さんは、岩手県遠野市出身で本学日本文学科を卒業し、現在はフリーアナウンサーとして仙台を中心にテレビ・ラジオで活躍中です。平成九年、今野東さんを家元とする「東方落語」旗揚げに参加後、平成一七年には真打に昇格されました。近年では女優として舞台にも立たれています。
今野もう世さんは、宮城県小野田町出身で本業は不動産業をしていらっしゃいます。平成九年に東方落語へ入門し、平成一七年に二つ目に昇進されました。
初めに今野屋もう世さんの落語が始まりました。大半の学生は落語を見たことがないため、どんなものなのかと少し身構えていましたが、今野屋もう世さんのお話が進むにつれ、次第に笑い声が大きくなっていきました。
知ったかぶりをするという話から、落語が始まりました。ある日、亀吉という人が旦那さんに頼まれ事をされます。それは、カステラを預けるから、これから来る庄屋さんにそのカステラをお出ししてほしいというものでした。亀吉は誘惑に耐えられず、預けられたカステラを食べてしまいます。カステラを食べるしぐさや咀嚼(そしゃく)音はまるで本当に食べているようでした。困った亀吉は、庄屋さんに腐った豆腐を出すことにしました。庄屋さんはカステラを見たことも食べたこともありませんでしたが、知ったかぶりをして自分がグルメだといい、その腐った豆腐を全部食べました。その庄屋さんの姿にどっと笑い声が起こりました。喋っているのは一人のはずなのに、顔の表情や声、動きにより三人いるように思ってしまいました。
次に川野目亭南天さんの落語です。落語や出身の遠野市の河童伝説について話され、東北の落語は悲しいものが多いけれど、それを丁寧に口承してきたというところから話が始まりました。
やすたろうという子は、いじめられていたので友達が居ませんでした。そこで、祖母はやすたろうに裏山のお堂に行って、「わだわだあけろじゃがか」と言ってみろと教えました。やすたろうが言われた通りやってみると、お堂の戸が開き、中にはたくさんの子どもがいました。その後、お堂の子の助言により、やすたろうはいじめた子と、友達になることが出来ました。数日後、やすたろうはお堂を訪ね、戸を開けるため呪文を言いますが、二度と戸は開くことはありませんでした。その訳とは……。
落語が進むにつれ、切ない空気へと会場は包まれました。やすたろうが「わだわだあけろじゃがか」と何度も叫ぶ声が悲しく響き渡りました。
この落語の後、東北弁の発音やおばあちゃん達がコミュニケーションの達人であるというお話をされました。
先ほどまでのしんみりといた雰囲気はどこへ行ったのか、大変盛り上がりました。特におばあちゃん達のお茶っこのみの話では、皆さんあるあると笑いながら頷いていました。失敗しても、それがいつか話のネタになるということを何度も仰っており、心に残りました。
この公演を通じて、落語の面白さが分かりました。また、改めて方言の素晴らしさ、良さを実感できました。(梨) |