食育

文部科学省が毎年実施している学校保健統計調査では、宮城県は肥満傾向児の出現率が男女とも全国平均を上回っており、肥満児が多いことが指摘されています。特に沿岸部では震災後の居住環境の変化から、子どもの遊び場の喪失等による運動量の減少に加えて、食環境の変化による肥満児の増加が問題視されています。

我々が行った仙台市内の保育所に通う4歳児約2000名を対象とした調査(2017)では、経済状況にゆとりがない家庭の幼児では肥満リスクが高く、とくに時間のゆとりがない家庭の幼児で顕著であることが明らかとなりました。また他の調査では、魚、肉、野菜、果物などいわゆる生鮮食品は経済的ゆとりのない家庭ほど摂取頻度が低く、インスタント麺の摂取頻度が高まる傾向が指摘されています。これらのことから、大災害後においては、子どもの食環境の改善に向けて、経済状況を含めた家庭環境に配慮した食支援の検討が必要であることがわかります。

そこで、本事業では家庭の経済状況によらない食環境を整備することを目的として、食育プログラムについて検討します。そして食の学び・交流・共有の場となるプールボーキッチン(本学創始者Ms. E. R. Poorbaughに由来)の開設を目指します。あわせて、子どもが自らの感覚や体験を通して、自然の恵みとしての食への意識、感謝の気持ちが育つように、屋内に留まらず、アウトドア教育を活用した食育を展開します。

丹野久美子 生活科学部食品栄養学科・准教授 (栄養教育論)

「小学生が考案した富谷のブルーベリーを使ったスイーツ(2019.7)」

「小学生が考案した富谷のブルーベリーを使ったスイーツ(2019.7)」