私のお薦め図書(米原万里『不実な美女か 貞淑な醜女か』) |
宮城学院女子大学日本文学科 澤邉 裕子 |
「不実な美女」「貞淑な醜女」―どきまぎしてしまいそうなタイトルですが、これ何の例えだと思いますか。
ヒントはこの著者の職業―「通訳」です。 実は、いい訳とはどんな訳かを考えた時、「美しく整っているが、原文に忠実でない訳」を「不実な美女」、 「原文に忠実だが、整っておらず、ぎこちない訳」を「貞淑な醜女」と比喩したものなのです。 多くの通訳者は時と場合に応じて不実な美女」になったり「貞淑な醜女」になったりする必要があると、 数々の通訳現場でのエピソードを交えて、通訳論が展開していきます。 その一つを紹介しましょう。 「百年カセイを俟つようなものだ」という日本人の発言、ご存じのように、「カセイ」とは「河清」と書く。 通訳という職業はまさに日本語と外国語、日本文化と外国文化がぶつかり合う場で格闘する仕事。 外国語と外国文化を知らずして日本語や外国語は語れない、そう実感させられます。 異文化コミュニケーションに興味のある方なら米原万里著『魔女の1ダース』(新潮文庫)もお薦めです。 他にも戸田奈津子著『字幕の中に人生』(白水社)、太田直子著『字幕屋は銀幕の片隅で日本語が変だと叫ぶ』(光文社新書)など、 |