私のお薦め図書
宮城学院女子大学日本文学科

星山 健
 伊狩先生と同じく雑事に忙殺され、個人的な読書等ままならない日々を送っています。
 よって、気の利いたことも書けないため、以下の雑文にてご容赦下さい。

 先日家族でとある郊外の家具店に入ったところ、そこで働く女性から声をかけられました。
 そういえばこちらもどこかでお会いした気が、という思いで尋ねてみると、私が大学院生時代にアルバイトをしていた塾の教え子でした。
 その方は私の名前も覚えていてくださり、自分は国語は苦手だったのだが、私に『ノルウェーの森』を勧められて読み、それから本が好きになったと話してくれました。
 その方の中学生だった頃の姿、一緒に働いていた仲間のこと、就職が内定しながら複雑な気持ちだったこと等、様々な思い出がフラッシュバックするなかで、そうかあの頃の自分はそんなものを読み、又他人に勧めていたんだなと、懐かしくも気恥ずかしい思いがしました。

 伊狩先生のように「自分の世代の青春を代表する書」というものを持てないのが、私の世代なのかもしれません。
『されどわれらが日々』『僕って何』を読みながら、では自分の世代はと省みれば、『なんとなくクリスタル』には同化出来ず、「自分」を模索していた頃。
 まさにその自分探しの書という意味において、この『ノルウェーの森』は私の青春時代を代弁するものといえるかもしれません。

 今では女房子供持ち 思へば遠く来たもんだ

(中原中也「頑是ない歌」より)



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