私のお薦め図書(井上ひさし『父と暮せば』) |
宮城学院女子大学日本文学科 深澤 昌夫 |
井上ひさしという作家がいます。皆さんもよくご存知でしょう。
山形生まれで仙台育ち(仙台一高出身)、『ひょっこりひょうたん島』の作者にして、仙台文学館の初代館長、日本を代表する劇作家・小説家です。 井上さんの作品は私も好きで、初期作品の『ブンとフン』(1970)は中学生の頃くりかえしくりかえし読みました。 この作品の初演は1994年9月、東京は新宿の紀伊国屋書店4階にある紀伊国屋ホールです。 「初演」というからには芝居です。戯曲です。戯曲といっても読みにくいことは一つもありません。 文庫本でもとりわけ短い=薄い作品で、あっという間に読めてしまいます。 しかも、登場人物はたったの二人。学生時代に国文学を学び、今は図書館司書をしている23歳の若い女性とその父のお話です。 ちなみに主人公は女学校時代“昔話研究会”というサークルに所属しており、敬愛する作家は宮沢賢治(この人も岩手ケンジん)。 で、今は図書館のカウンターに座り、子どもたちを相手に読み聞かせなどもしているという設定。 ―どうです? 皆さんと、どことなく通じるところがあるような気がしませんか? この登場人物も少ない小さな作品は、だからといって「小品」というわけではありません。本が薄いといったって、「薄っぺらな作品」ではありません。 |