
卒業生紹介
作家 渡辺 優さん
- 2010年度 宮城学院女子大学
- 学芸学部国際文化学科 卒業
学び舎で育まれた
豊かな感性が物語を紡ぐ力に
今でこそ作家として物語を執筆している私ですが、宮城学院女子大学に通っていた当時は、熱意を持って勉学に励むでもなく、バイトやサークル活動に打ち込むわけでもなく、正直に言えば、あまり模範的な学生ではありませんでした。
大学卒業後、私は「毎日会社に通勤する規則的な生活に、自分が耐えられるか不安」だという不純な動機から、在宅でも仕事ができる翻訳家を目指すことに決め、一般企業で働くかたわら、約3年間、翻訳学校に通っていました。
しかしなかなか成果が出ず、翻訳家としてやっていく自信を失っていく一方で、翻訳した日本語の文章だけは褒められることが多く、「もしかしたら、自分で文章を書く仕事の方が向いているのではないか」と思うようになったんです。作家を目指すことが狭き門であることは理解していましたが、それまで小説を書いた経験がなかったため、「直木賞などを受賞して、もしかしたらすぐ作家としてデビューできるかもしれない!」という、素人ゆえの根拠のない自信もありましたね。
現実はもちろん甘くはなく、最初に応募した作品は選考にも残りませんでした。そこでようやく現実の厳しさを知り、また、自分の作品を読んでもらうことや、客観的な評価をもらう重要性に気づいたんです。
気持ちを新たに執筆に取り組み、作品を書いては応募を重ねました。そして「これでダメなら諦めよう」と覚悟を決めて臨んだ3作目が、デビュー作「ラメルノエリキサ」です。デビューした当時は、夢が叶った喜びと共に、当時はお金に困っていたので「賞金が入るから、来年も住民税などを払える」という、生活面での安心感も大きかったですね(笑)。

私は大人になってから小説を書き始めたため、学生時代から創作活動をしていれば、当時の感性でしか書けない話があったのではないかと、今でも少し後悔する部分があります。
それでも作家になってから強く感じるのは、宮城学院女子大学に通うことができて本当に良かったということです。自然豊かな空間、音楽に触れられる環境、海外実習などを通して得られる様々な学びの機会、私のように肩の力を抜いている学生にも温かい学友と学び舎…。また、幼少期から本に親しみ「言葉の持つ力」に触れてきたこと、SNSで日記を書いていたこと、様々なアルバイトを経験したこと――これら全てが、今の私の大きな財産になっています。
学生の皆さんも、どうか「楽しい!」と思える時間を大切にしてください。学生生活の中でしか得られない経験が、後々、人生を支える力につながるはずです。苦手なことを無理に頑張らず、好きなことを全力で楽しむことが、将来の自分を形づくる上で大切な糧になります。皆さんが楽しく健やかな学生生活を送れることを、心から願っています。
渡辺 優さん
- 2010年度 宮城学院女子大学
学芸学部国際文化学科 卒業 - 2015年 作家デビュー
宮城県仙台市出身。大学卒業後、翻訳家を目指し、働きながら翻訳学校に通う。翻訳を学んでいく中で、自らの文章力に可能性を見出し、作家を志す道へ転向。2015年に著書『ラメルノエリキサ』が第28回小説すばる新人賞を受賞し、念願の作家デビューを果たす。以降、青春小説や推理小説を中心に、10冊以上の著作を発表。学生時代に培った多彩な経験と感性を生かし、「言葉の持つ力」を大切にした作品を生み出している。
※本記事は「MG talk Relation vol.19」より転載