大内 典

担当科目
 基礎演習
 音楽文化基礎講義
 音楽文化学講義 Ⅰ/Ⅱ
 音楽文化セミナー Ⅰ/Ⅱ
 日本音楽史概論
 音楽文化専攻セミナー Ⅰ/Ⅱ
 音楽学特講 A
 卒業研究セミナー

  


 (2015.4)
 学歴

宮城学院女子大学音楽科卒業(ピアノ専攻) 国立音楽大学大学院音楽研究科修了(音楽学専攻)
PhD 学術博士 (ロンドン大学 School of Oriental and African Studies)

研究領域
民族音楽学、音楽文化学、日本の音文化

主要論文
「『声』と『音』がつくる儀礼--修験道儀礼の音空間--」美学会編『美学』第160号(北村皆雄、島津弘海編『千年の修験』新宿書房、2005年に再録)
「声と成仏---柴燈護摩における声の機能」庄野進・高野紀子編『音楽のテアトロン』勁草書房(1994)
「あらがう音--羽黒修験の法華懺法--」『群馬県立女子大学紀要』第16号
「神道行法における声の技法---『出羽三山神社錬成修行道場』の場合--」『群馬県立女子大学紀要』第17号
「『ことば』と『ふし』の政治学--出羽三山の神仏分離と唱えごと」『群馬県立女子大学紀要』第19号
「声明の美的表現力と権能—法華懺法の受容から」L.ドルチェ・松本郁代編『儀礼の力』法蔵館(2010)
※“Buddhist Liturgical Chanting in Japan: Vocalisation and the Concept of Attaining Buddhahood”, in Ritual Dynamics and the Science of Ritual. Vol. I Grammar and Morphologies of Ritual Practices in Asia, Harrassowitz Publishing House (In Press).


最近の活動
長年携わった修験道の音文化の研究から、日本中世の宗教文化が育てた音の技へ研究を広げています。その方法論を探るため、2004年4月より1年間、特別研修休暇を利用して、ロンドン大学SOAS(School of Oriental and African Studies)で研修。外国人研究者がもつオリジナルな視点を取り込みながら、”The somatic nature of enlightenment: Vocal arts in the Japanese Tendai tradition” (悟りの身体性:日本天台の声の技芸)のテーマによドクター論文をスタートさせました。その研究成果の一部は、2006年9月、同センターと立命館大学共催のシンポジウム「儀礼の力(The Power of Ritual 
Interdisciplinary Perspectives on Medieval Religious Practices)」において発表し、L.ドルチェ・松本郁代編『儀礼の力』(法蔵館、2010)に「声明の美的表現力と権能—法華懺法の受容から」として収録されました。



また、2008年9月、ドイツ、ハイデルベルク大学で開催された国際会議Ritual Dynamics and the Science of Ritual(発表に基づく論文“Buddhist Liturgical Chanting in Japan: Vocalisation and the Concept of Attaining Buddhahood”は、国際会議の報告書に収録されて、現在印刷中)、2009年6月、上智大学でのAsian Studies Conference Japanでも、それぞれドクター論文の一部を発表しています。

2008年4月、ニューヨーク、コロンビア大学における『修験道シンポジウム』に招待発表者として参加し、中世の音芸の展開を踏まえながら修験道文化の特質を論じました。その発表に基づいた論文“Popularisation through the Vocal Arts: The Lotus Repentance Liturgy of Haguro Shugen”も、近刊予定です。

プラス&情報
幼い頃からピアノを習い、大学でもピアノを専攻。卒業後中学校の音楽教諭をするうちに、「“音楽”って何?」という疑問がむくむく。進学を思い立ち、大学院では民族音楽学の道へ。修士論文で扱った「法印神楽」という芸能が修験者(山伏)とゆかりの深いものだったのが縁で、修験道の音の文化を追いかけることになりました。自ら山伏になっての参与調査がいつのまにか十数年。修験道をより深く理解するために、密教僧の修行にも首をつっこみました。音、とくに声という人間の身体と最も密に結びついた表現媒体は、それぞれの文化の根源に深く関わるものだと思え、興味がつきません。(山伏姿に興味がおありの方は、大学HPのリレーエッセイ をどうぞ)

その修験道の研究をきっかけに知り合った研究者との縁が縁をよび、気づいたら40過ぎた身でロンドン留学。自分の息子、娘のような年齢の学生と一緒に英語コースで絞られ、このトシになって、試験でこんな冷や汗かくとは思わなかった・・・状態で、英語能力試験(EILS)も受けました。そんなこんなの末に、私より若い、おそろしく有能でパワフルな女性教官Dr. LuciaDolceの学生として、ドクター論文をスタート。全くの一学生に戻って、それまで積み重ねた(ような気になっていた)ものをゼロにし、脳みそを鍛え直した日々の苦しさと妙な心地よさ、すがすがしさは、一生の宝物です。修験道儀礼の根本は「死と再生」。人間、何度でもリセットしてやり直すことができるし、何度でもそれを繰り返すべき。その姿勢が、よくよく性に合っているのかもしれません。

そういえば、ロンドンではよく歩きました。地下鉄はすぐ止まるし、一番確実なのは自分の足。大学へも、借りていたフラット(アパートのこと)からリージェンツ・パークを突っ切って大学まで45分。リュックサック背負ってトコトコと。おかげで、美しいリージェンツ・パークの四季を堪能することができました。通学だけでなく、歩いて片道一時間の範囲なら、どこでも歩いて行きました。ロンドンの街中で友達と待ち合わせると、決まって「フミ、今日はどうやって来たの?」と聞かれました。答えはいつも「歩いて」。よく歩くイギリス人にさえ、あきれられました。これも、山伏修行のたまもの、あるいは根っからの性分でしょうか。

このアブナイ人間を支えてくれる家族と2匹の愛猫、そして、まっすぐでパワフルな学生たちの勢いにエネルギーをもらって、まだまだ走り続けます。

メッセージ

大学で音楽を学ぼうと考えているみなさん。「音楽」の世界は、みなさんがイメージしているより、はるかにはるかに広く、奥深いものです。また、「音楽」との関わり方、つきあい方も、多種多様です。私自身、大学に入るまでは、「音楽」の道は「演奏」だとばかり思っていました。ところが、大学で学ぶうち、音楽にアプローチするには、「研究」という方法もあることを知り、そこから、思わぬ方向へ道が開けていったのです。心を開き、一歩踏み出せば、道は無限。一緒に探って行きましょう!


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