File No12  R.T.さん

  年齢  50代
  在学中の専攻  ピアノ

子供の頃、バレエに興味を持っておりましたが、体が弱くピアノを習っておりました。バレエを始めましたのは結婚後のことです。

かれこれ10年ほど前になりますが、サンクトペテルブルグのワガノワ家を訪れる機会に恵まれました。ワガノワ女史(1879〜1951 ロシアのバレエ教師。ロシアバレエの伝統を土台に独自の教授法を確立し、世界的なダンサーを多く育てた)に殊のほかかわいがられたというお孫さんのご一家がお住まいでいらっしゃいました。お孫さんといってもおばあちゃまです。ご一家の皆様は温かさに満ちていて、本当に素晴らしい方々でした。かつてワガノワ女史が生活をなさっていらした居間に一台のピアノがありましたので、「グリーンスリーブス」を私なりに編曲して弾いてさしあげました。弾き終わった時、今までピアノを勉強してきたのはこの瞬間のためだったのだ、と自分の中で納得でき、胸がいっぱいになりました。忘れられない思い出です。


さて、私は3年前に思いもかけないことで怪我をして、バレエを休まなければなりませんでした。体を動かしていないと、だんだん不安になってきてバレエを開始するのをためらっておりました。そんなある日、一通のエアメールが届きました。私にはもったいないような友人で、日本とモスクワを行き来している素敵なバレリーナ、斎藤 友佳理さん(東京バレエ団プリマバレリーナ。2005年度芸術選奨文部大臣賞受賞)です。11年前に舞台で大怪我をして、再起不能の宣告を受け、リハビリ中に訪ねたことがありました。あの精神力は神様から特別に与えられたものだと思ったものでした。そんな彼女からの「お元気ですか?」のハガキが私の背中をポンと前に押し出してくれました。

高速バスでレッスンに通う旅がまた始まりました。ヨーロッパでは愛を運ぶと伝えられている、やどり木や木々にかけられた鳥の巣など、慣れ親しんだバスの窓からの眺め・・・


この地球上にはたくさんの人々がいる中で、バレエを通して素敵な人々と巡り会うことができますことに、心から感謝して、これからも旅を紡がせていただきます。


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