巨大災害と向き合う
311日でわかった日本の防災常識を世界に発信する

 

宮城学院女子大学国際文化学科

J.F.モリス

 

本学科では、大学の2011年度の教育研究推進費を使い、学生の自主的参加で表題の研究プロジェクトを立ち上げました。このプロジェクトの一部成果を以下の通り、公表いたします。

 

研究成果

 

国際NGOプラン災害対策統括責任ウニ・クリシュナン医師 講演 2011527日開催

Lecture by Dr Unni Krishnan, Plan International 27th May, 2011 (Japanese)

 

被災地における「外国人」によるシンポジウム 「311私たちも共に震災を乗り越えた 『外国人』県民の視点から

震災後の宮城と日本の多文化共生を問う」 20111217日開催

 

地震・津波を生き抜くための提言 (英文) Surviving Earthquakes and Tsunami

 

参加した学生の感想文

 

趣旨と経過

 

本学学生のほとんどが東北6県、なかんずく宮城、福島、岩手県の出身者であり、すなわちその多くが、2011311日の東日本大震災を経験し、中には、大きな被害を受けた者もいます。震災後、通常の勉学ができる生活を取り戻すために、学生によっては、自分の震災経験を整理し、その中のさまざまな葛藤を克服することになると予想されました。あわせて、本年度の教育研究推進プロジェクトの運営を任されたモリスは、自身の被災経験だけでなく、被災地に駆けつけた国際的人道支援の専門家とともに被災地の一部を視察する経験を通して、その専門家をも震撼させた今回の被災が桁外れの大きさであることを再度認識すると同時に、そのような被災の中で功を奏した/奏し続けている日本の防災体制のすばらしさをも再認識することになりました。日本で「当たり前」に行われていることの中には、世界中、とりわけ開発途上国で実施すれば多くの人命を簡単に災害から護ったり助けたりすることができる可能性をもっているものが多々あります。そこで、国際文化学科の学生が海外実習という正規の授業や個人旅行を機会に、その多くが海外に出かけることになるであろうということを考え合わせると、今回の大災害が世界中の人々の記憶から消えない内は、学生は東北人としてその災害について何か話すこと、説明することを求められる場面に遭遇することが予想されます。

 

このようにして、国際文化学科の学生は、単に災害と向き合って、一刻も早く自分の日常を取り戻しその上で精神の安定・安寧を取り戻す必要があっただけではなく、自分たちの経験を整理することによって、その作業から得た知見を世界に発信すれば、それが別の場所で人命の救済に役立つ可能性があるということを理解し、その発信者になり得るのだという立場にあるのが本学科の学生の特徴だといえる。とりわけ、自身が辛い被災体験をした学生にとっては、渡航先で慣れない言葉で被災経験を思い起こさせられることがあったら、本人にとって大変な重荷になる危険性があることを危惧していた。「哀れな被災者」と眼差しを浴びせられる危険性を跳ね除けて、世界が救える貴重な提言を携えた主体者となれる道具立てを学生に用意することが火急の課題であろうと考えた。さらに、海外に行かない学生にとっても、このプロジェクトに参加することが、自分の精神の安定を取り戻すために大きな効果があるのではないかと期待して、あえて、このようなプロジェクトを実行した。

 

このような趣旨で大学の授業が開始した5月、本プロジェクトへの参加希望者を募り、8名集まりました。週に一度、自分の被災体験の中で役に立つ可能性のあるものを皆で持ち寄って、検討しました。さらに、世界中の災害からみて日本の被災状況を理解するために、国際的人道支援の専門家である国際NGO Plan Internationalの災害対策統括責任 Dr Unni Krishnan (ウニ・クリシュナン医師)氏を招いて、上掲の講演をいただきました。クリシュナン医師の講演を通して、学生は、自分が「当たり前」だと思っていたものの中には、世界では知られていない・行なわれていないものがあるということを認識できるようになりました。その上で、最終的に地震・津波を生き抜くための提言を集約して英訳し、上掲のSurviving Earthquakes and Tsunami A4用紙1枚の資料としてまとめてみました。この提言を利用して、学生は、2011年度実施の本学科タイ語学実習およびヨーロッパ実習(フランス)中に今回の地震・津波について発表をしました。学生にとっては、発表することが自分の被災経験の意味を人のために役立つものに読み替えていくというプロセスになり、学生にとって大きな意味があったように見えます。

 

また、今回のプロジェクトから発生して、他学科からの学生ボランティアを交えて宮城県亘理町からの依頼で、町内の被災者から被災当時の状況を聞き取って記録するというプロジェクトも引き受けることになりました。国際文化学科の学生を含め、亘理町のこの「亘理町大震災テストモニープロジェクト」で50名以上の被災者の体験を聞き取ることになりましたが、聞き取りする学生の中には、自分自身もいろいろな体験をもっている者もいましたが、亘理町の被災者の記録をとるとこが学生にとって大きな励みとなりました。この機会を与えてくださった亘理町企画課に心から感謝を申し上げます。

 

震災研究に関する最後の活動として、20111217日に、宮城県国際交流協会県のご協力を得て、県内の在留外国人4人およびその支援にかかわった協会の関係者2人で、被災地における「外国人」たちの経験および「外国人支援」について、当事者中心となって語るというシンポジウムを開催しました。図らずして、司会を務めたモリス以外の登壇者全員が女性であるという顔ぶれにはなりましたが、被災地において外国人が何を経験したか、宮城県における多文化共生・社会統合がどうなっていたかを、当事者の経験と声を通して検証しようとするものです。