学びの芽

学びの芽

学びの芽|vol.01

森の動物に会ってみたい! 〜フィールドサインを探そう〜

1 | うんち発見!

遊歩道を歩いていくと、自生する「りゅうのひげ」の上にうんちを発見。子ども達は、すぐにしゃがみこみ、枝でつつきながら「誰のうんち?」なのと推測を始める。また、近くにも“うんち”があるのではないかと探し始める。
クラスで、この発見を共有し、誰のうんちなのかを改めて推測すると、「イヌ」「ネコ」と自分たちの身近な生き物からあげる。続いて、「ハクビシン」「ウサギ」「リス」の里山の小動物から「ゾウ」「ライオン」「パンダ」「シマウマ」等と大型動物の名前を挙げ始めた。
子どもたちが挙げた動物は、否定することなく受け止めるようにし、翌日、保育者が検索したそれぞれの動物の糞についてiPadを使用して映像で見せた。子ども達が推測した動物の糞を見せ、比較させることで違いに気付かせるように働きかけた。

2 | りゅうのひげはトイレなの

糞の発見以降、連日「うんち探し」を楽しむ子ども達の姿が見られた。「りゅうのひげはトイレなのかもしれない」という推測と結びついているようだ。翌日もまた、近くにうんちを発見し、子ども達は大興奮している。りゅうのひげを探していると、りゅうのひげには青くて綺麗な実がついているということに気付いた。「わかった!この実を食べてから、りゅうのひげの上でうんちしたんじゃない」「でも、大好きな食べ物の上にうんちするかな?」と、新たな疑問が生まれてきた。子ども達は図鑑を戸外に持ち出して友達と眺め、動物や糞のページ探しに夢中になって取り組んでいた。なかなか求めるページにはたどりつかないが、友達と頭をつき合わせ、自分たちで調べていく楽しさや喜びを感じているようだ。

3 | この穴はなんだろう?

遊歩道を歩いていた時、保育者が木の根元に穴があいていることに気付き、子ども達に伝えると「ほんとだ!」としゃがみこみ、「もしかしてリスのおうち?」「ヘビのおうちかも?」と推測しながら枝を見つけてつつき始めた。すると、中からムカデが跳び出してきて、子どもたちは驚きの声をあげると後ずさりをした。そして「ここは、ムカデのおうちだったんだ」と確認し合った。反対側の木の根元には、さらに大きな穴があり「もしかして、つながってるのかも?」と言いながら、枝を差し込んで奥行きを図っている。以前に見つけた糞と結びつき、これは動物の家なのか、動物の家だとすればどんな動物なのかと、子ども達の知りたい意欲は高まっているようだ。

4 | 森の中は洞がいっぱい

降園前に遊びの振り返りをした。木に開いた穴は「洞(ウロ)」呼ぶことや動物の中には冬の間、洞の中で冬眠する動物もいるということを伝えた。ウロという言葉を覚えた子ども達は、翌日から「ここにもある」「あそこにもある」と雑木林の中にたくさんの洞を見つけることが楽しくなり、自分たちから奥へ奥へと進むようになり、木の根元周辺だけではなく、朽ちた丸太や木の上の方にも見つけるようになり、ひとつひとつの発見を喜んだ。太い幹には10個程の洞があるものもあり、子ども達は「洞のマンション」と呼んだ。洞の入り口の落ち葉をかきだしていると、きれいな黄緑色の芽を見つけた。「雪の中でも頑張ってるんだね」という子どもの言葉がきこえた。

5 | 雪の上に「あしあと」を発見!

冬休み明け、雪が降り積もった遊歩道へ子ども達を誘った。保育者の期待通り、あしあとを発見。「見て、これなんだろう?」と子ども達に問いかけると「あしあとだ!!」と大興奮。「ずっと向こうまで続いてるよ。行ってみよう」と好奇心いっぱい誘ってくる。「なんの動物なんだろう?」「あしあとを踏まないように気をつけて」と保育者とやりとりをしながら進んでいくと、立ち入り禁止のテープが張られた階段へと続いていた。また、雪上に他のあしあとも発見した。それは崖下へと続いていた。子ども達は、自分たちのすぐそばに動物が住んでいることを再認識するきっかけとなった。「すごい!大発見だよ」と声をかけると、最初にあしあとを見つけた子ども達は、友達や他の保育者に一刻も早く伝えたいという勢いで園舎へと駆け出した。しばらくすると「こっち、こっち」「ほら、見て!」と声を弾ませて、仲間を連れて戻り、少し興奮気味に紹介していた。
また、ある日は保育者が先導し、あえて遊歩道から外れた場所を選んで歩いてみると、新たなあしあとに出会うこともあった。そのあしあとに沿って歩く子どもも保育者も探検気分を高めて歩いた。
遊歩道を歩きながら、雪をかぶった切り株の端が薄い黄色になっていることにも気付いた。「もしかして、おしっこのあとかも?」と、また動物の存在を身近に感じるきっかけとなった。

6 | 自分で調べてみたい

足跡に興味をもったA子が、図書館であしあとに関する絵本を借りてきた。「こども園の森の中であしあとを見つけたので、あしあとの本を貸してください」と自分で尋ねたようだ。クラスだより等でも遊びの様子を紹介してきたが、子ども自らが調べたいと訴え、家族を巻き込んだ遊びへと展開していることに驚いた。また、B子も「あしあと」の本を持参してきた。園内のあしあとのヒントになる箇所には、いくつも印がつけられていて、保護者と共にページを開いている様子が伺えた。また、C子は友達が見つけた“白い実”(りゅうのひげの青い実が白くなっていたことから)を調べるために、図書館を活用したとの報告を受けた。「これまで自ら図鑑を開くことはなかったが、最近頻繁に眺めている」という報告も保護者から聞かれるようになった。
子ども達の自発的な行動に驚く一方で、知りたいという意欲がこうした行動へ移されていく過程が興味深かった。また家庭の理解と協力によって、子ども達の知る喜びが満たされていく様子を見ることができた。

7 | 覚えた!!“フィールドサイン”

連日の様々な発見を保育者自身もインターネットや本を活用して調べている。動物たちのあしあとや食べ跡、糞などは“フィールドサイン”と呼ばれ、色々な動物が生活している痕跡の総称として使われていることを知り、早速子ども達に紹介した。一見すると誰もいない静かな森に見えるが、すぐそばで動物たちが暮らしていることの証拠であることを改めて実感することとなった。子どもたちにとっての遊びの場が、動物にとっては生活の場であり、互いの存在を意識しながら共存していくことのおもしろさを、もっともっと子どもたちと見つけていきたいと感じた。

8 | 誰が食べたんだろう

新たに見つけた洞の中から“ドングリ”と“クルミの殻”を見つけた。クルミの殻は左右対称に穴が開けられた特徴的な姿となっていたが、保育者をはじめ全員が初めて目にした。小動物が餌として集め、食べた可能性が高く「きっとここは、リスのお家だよ」と子ども達は痕跡を喜んだ。改めて、洞は動物たちのお家であることが確認でき“フィールドサイン”であることを子ども達と実感することができた
調べてみると、クルミの特徴的な食べ方は《アカネズミ》であることが判明し、翌日、iPadで写真を見せながら子ども達に伝えた。同時に、同じクルミを餌とするリスは二つに割って中身を食べることもわかった。食べ方から動物を調べる方法があることを知り、洞に関心をもっている子どもたちにタイムリーな絵本として「もりのなかのあなのなか(かがくのとも)」を提供することにした。挿絵の中にアカネズミを見つけると「ほんとだ、洞の中にクルミがある」「食べ方もおなじだ」「洞の近くにもクルミがあるよ」と詳細な描写に気付いていった。森の中で新たな着目点になることが予想された。

9 | 足跡でわかるんだよ

好きな遊びの時間になると、フィールドサインの本を自由に手にとって眺めていた子ども達の中には、掲載されている写真や解説図から特徴を覚え始めている子ども達もいた。「トン、トン、ピョン(片足、片足、両足)はウサギでしょ」「まっすぐ歩く跡(直線状を歩くあしあと)は、キツネだよ」と覚えたことを得意そうに伝えてくる。
4度目のあしあと発見となったこの日は、うさぎのあしあとらしきものを発見。また、洞から出てきたあしあとも見つけた。洞が家であることを目の前で見ることができたことによって、さらに洞探しが盛り上がっていった。

10 | 私達も“洞”に住んでるのかも?

昼食の片付けの場面で洞の話題となった。
T 「みんなのひろばの天井は何でできてる?」
D子 「木だね」
T 「床も?」
D子 「木だね」
T 「壁も」
D子 「木だ!」
と答える。この辺りの会話から自分が木に囲まれて生活していること気付き始めたようだ。
すると自分から机を触り、
D子 「机も」
T 「木だね!」
D子 「椅子も?」
「木。全部、木だ!!」と周囲にいた子ども達が声を揃えて言った。そしてD子は「もしかして、子ども園は“うろ”なんだ!」という大発見につながった。天井が円形にカーブし特有のフォルムであることから、【みんなのひろばは、大きい洞】と、自分たちの生活を動物の生態に重ねて考える発想ができたことに驚かされた。「じゃあ、僕たちが食べたのはエサ?」と会話が続き、笑いが起きた。「でも、人にはエサを食べるとか、エサをあげるとは使わないね。動物に使う言葉だね」ということを確認した。
森という遊びの場と園舎という生活の場がつながり、園舎移転によって新しくなった環境に、親しみを覚えるきっかけとなったと感じた。

11 | エサをあげよう

雪がなくなり、動物のあしあとが見られなくなってしまったが、遊歩道を歩きながら木の幹に爪をといだような跡を見つけた。新たなフィールドサインとの出会いである。そのとき、子ども達が、遊歩道のぬかるんだ泥地の周辺に落ちていた朴の葉に泥が付いていることに気付いた。保育者は、「動物は泥で体を洗い、近くの木に体をすりつけて泥を取ることがある」ということを伝えた。子どもたちは動物がいるという気配を引き続き感じている。そこで「今度はどうやって探そうか?」と尋ねてみた。すると「エサを用意しようよ」というアイディアが提案された。図鑑を見ながら保育者からの「リスは、まつぼっくりやくるみ、梅の種、ひまわりの種を食べるみたいだよ」という紹介に続き、子ども達からは「アカネズミは、クルミでしょ」と覚えたことを発言してきた。また「キツネは、ウサギとかネズミも、野菜でも何でも食べるから“雑食”って言うんだよ」と紹介すると「え~っ!!」と驚きの声が上がった。

12 | レストランの準備

A男は、キツネが雑食であることがとても気になるようで、登園後から「給食の先生に、キツネの餌を聞いてもらってくるよ」とはりきっている。栄養士の先生を食のスペシャリストとして子ども達は絶大な信頼をおいている。A男はB男と一緒に給食室を訪ね「キツネのエサを二人分ください」と言ってバナナをもらってきた。以前、遊びで集めた種の中から、梅とひまわりの種を用意し、バナナやまつぼっくりなどと合わせて4枚の皿に分けることにした。それぞれが同じ分量となるように子ども達が盛り付け、盛り付けが終わると慎重に洞の前に運んだ。「小さいクラスの友達が間違って食べないようにしないと」という配慮の必要性まで考えていた。皿には「もりのれすとらん①」と番号と説明文を表示し、アカネズミの洞や、あしあとがあった洞、マンションの洞、一番初めに子ども達が見つけた洞の4か所に置いた。子ども達は、どんな変化が見られるのかを期待して降園した。

13 | どうして気付いてもらえなかったのかな?

翌日、4か所の洞をはりきって覗いてみるが、まつぼっくりやひまわりの種、梅の種、バナナに噛み跡などは見られない。4皿とも変化のない状況に子ども達はとてもがっかりしてしまった。「エサに気づかなかったのかな?」とつぶやく子どもがいた。すると「わかった。洞の中に入れてあげればよかったんじゃない」という意見が友達から返ってきた。「食べてるところを見られるのが、はずかしかったんだよ」という小動物の気持ちを推測した言葉も聞かれた。他には、レストランの場所がわからなかったのかもしれないから「看板を作ってあげたらいいと思う」という意見も聞かれた。

14 | 今度は洞の中に置いてみよう!

「もう一度、エサの準備をしたい」という気持ちを受けて、今度は、まつぼっくりや種の個数を控えて、洞の中に置くことを提案した。「わかった」と言うとすぐに友達と頭を寄せ合って数え始めた。
ひまわりの種の数え方に少し苦戦している子ども達がいた。並べた種を端から順番に数えるが、途中でどこまで数えたかがわからなくなってしまっている。隣の子ども達は、声を出して数えながら種を一列に並べていたので、数え方のヒントになればと友達の様子を紹介した。早速、真似て数え始め、納得できた様子だった。「今度は食べてね」とつぶやきながら、洞の中に置いていた。

15 | 食べにきたんだ~!!

週末をはさみ、さらに月曜日は雪であったため、火曜日にエサの確認に向かった。洞の中に置いたが、雪が吹き込んだこともあり、皿は水でいっぱいになっていた。保育者は「お水も種もこぼれないように、そっと取り出してね」と声をかけた。4つの皿の全てに水が溜まっていた様子を見て「まさか、これ、おしっこじゃないよね」という声も聞こえてきた。中には、梅干の種の着色料が落ち、薄いピンク色に染まっていた水もあり、「何で?ピンクになってるの?」と驚きの声もあった。保育室に持ち帰った皿の中身を順番に数え始めると、保育者と一緒に子ども達も声を出して数えた。
事前に控えた数字と今回の数字をホワイトボードに書いていくと、簡単な引き算には答えることができていた。まつぼっくりが1つ、ひまわりの種が10粒なくなっていることがわかった。「ということは…」の保育者の言葉に子ども達が「食べにきたんだ~!!」と声を弾ませて答えた。しかし、子ども達が保育室へ運ぶ際に、手元が揺れてしまい落とした可能性はあったが、そこには触れずに動物が食べたということで進めている。

2017.04.14