教育実習の感想は、人それぞれ違うでしょう。私の感想が後輩たちの役に立つか分からないけれど、参考程度に読んでもらえればありがたいです。
私は母校である高校で、三週間お世話になりました。他に実習生は五人いましたが、私だけHR担当と教科担当の指導教員が異なっていました。
また机のある場所も、一人だけ図書室という変わった配属でした。そのためはじめは大変な思いもしましたが、今となってはそれもまた良き思い出となっています。
私の実習で最も恵まれたのは、教科担当の先生です。本当に素晴らしい先生でした。
気さくで大らかで、知識豊富なのにそれをひけらかさず、何でもわかりやすく教えてくれました。
他の実習生や生徒からは「おじいちゃんと孫のよう」と言われるぐらい一日のほとんどを一緒に過ごし、放課後は国語科以外の様々な話もしました。その中でのエピソードをここで紹介します。
私の教科担当の先生は、指導書をほとんど見ないそうです。古典は専ら大系を使用します。
したがって指導書の模範解答と、大系で導き出した答えが異なる場合があり、両方をじっくり見極める作業が必要となります。
私もそれに倣って、先生から借りた大系と教科書を開きながら授業の展開を考案し、その後で先生のアドバイスを受けました。その作業を繰り返す中で、指導書も教科書も疑いながら読んでいかなければならないことを学びました。特に古典の場合、訳者によって表現方法が変わるので、教える側の判断で適当な語句を選択しなければなりません。
教科書が絶対ではない。寧ろ教える側の判断が大事。だから教員自身も絶えず学び、対処できるような知識を常に蓄えている必要があるのだと、実際に体験してみて分かりました。
ただ試験で使える知識を暗記させるだけではダメなのだ。プロとして教材のおもしろさを生徒に分かりやすく伝える仕事、それが教師の役割なのだと、先生は私に教えてくれました。
教育実習を通して得たもの。それは、教師は学ぶ楽しさを教える職人であるということです。
リアルなプロ意識に触れることが出来た三週間でした。 (遠)